3/16 3:39 「きらきら、きら」
今回のコメント
あれ?
あんまり話が進んでいない気がする。
結構書いた気がするんだけどなぁ……
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ちょうど皆が頼んだメニューが揃ったので食べ始めた。私は横目で長峰さんを盗み見る。普段はなかなか隙がなくてのだけれど、たこ焼きを食べると青海苔が唇についてたりして、私としてはポイントが高い。このままずっと眺めていたい気分に浸っていた。
そうしてしばらく雑談が続いていたのだけれど、社長が手を叩いて皆の注目を集めた。
「えーっと、突然だけど来月、ライブを開催する」
ヒミコさんと紗江子の動きが一瞬止まったけど、私は構わずに質問していた。
「へー、誰のライブですか?」
「『鈴なりディアーV』の」
「そりゃ大変だ」
「お前意味分かってんのか?」
私は顔をたこ焼きを食べていた手を止めて顔を上げた。皆真剣な表情をしている。さすがに私も自体が飲み込めた、と同時にたこ焼きが私の爪楊枝から落ちた。
四月から九月までの半年限定のローカルアイドルとはいえ、一月から三月までは週二回ぐらいのペースでボイスとダンスのレッスンは受けていた。受けてはいるが、人前で披露できるような代物じゃない。(私だけの話ね)
弁天山のステージは一曲だけだし、私は後ろで鹿ママと戯れていればいいだけだった。だけどライブとなれば話は別だ。……多分。
私が青ざめた頃、紗江子は立ち上がって、胸の前で小さくガッツポーズを決めた。
「深山社長、色物じゃなくて、ちゃんと私たちのことを考えていてくれたんですね!」
「紗江ちゃん、なんとなく酷い事言ってるよ~」
「許す! 色物っていう自覚があったところがさらに良い!」
「ありがとうございます!」
紗江子は元々このメンバーの顔合わせで、「このグループは私にとって踏み台です」と宣言したぐらいの上昇志向の持ち主で、被り物の私がいること自体が不満だった。それだけにライブができるって聞いて嬉しかったんだろう。
「あの~、歌う曲が、ないんだけど~」
「ヒミコ、心配するな。曲はすでに頼んである。三曲ぐらいオリジナルで、あとはカバー曲でやりくりすれば何とかなる」
「オリジナルがあるんですか? すごい! 誰が作るんですか?」
紗江子こと小娘、テンション上がりまくりだな。こっちは下がりまくりっていうのに。
「それは長峰のコネクションでだな……」
すると長峰さんは眼鏡を指で押し上げ、目を伏せた。
ハッキリとは聞いたことないのだけれど、長峰さんはヒミコさんと同じように、東京でマネージャーをしていたらしい。社長が自らスカウトして引き抜いたという話だ。
次回更新は1~2時間後。
後1回だけほんの少し更新予定。