3/16 1:39 「きらきら、きら」
今回のコメント
世界を繋げるのって結構好きです。
だからと言って積極的にお話に絡んでくるわけではないですよ。
あくまでも一部って事で。
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私が怒鳴ったところでヒミコさんが、のんきな声で合いの手を入れた。
「二人とも仲良いわね~」
「馬鹿同士の会話にしか見えませんけど」
続いて紗江子も口をだす。この小娘もいつかぎゃふんって言わせてやる!
二人の会話に社長は鼻で笑って答えた。
「いや、コイツに合わせてるだけだから」
「はっ? 三十過ぎの大人が何言ってんだか」
いつもいつもこの社長は何かと私に突っかかってくる。最初は社長だし、下手にでてたんだけど、我慢できなくなって、つい言い返してしまったのが運のつき。今では子供じみたケンカばかりしているような気がする。
「とにかくお前は鹿ママに謝れ」
「なんで鹿ママに謝らなくちゃいけないの。私、顔をかじられたんだから!」
「かじられろ、そしたら新しい頭つけてやるよ」
「この鹿バカ! 私の顔は食べ物じゃない!」
「知ってるよ。俺があの顔作ってるんだから。いわば俺がパパなんだから。いやダンボールおじさんなんだから」
「正直キモいです」
「でたよ。はい、またでました、思考停止ワード『キモい』。それ以外言う言葉無いの? 語彙力ってのはないの?」
「ないよ、ダンボールじじい」
「開き直るな! そして三十過ぎを馬鹿にするな!」
私と社長が睨み合っていると、小さな声が聞こえてきた。
「あの~、そろそろ食べ物置かせてくれるかな……」
後ろを振り向くと、店員が注文した食べ物を出せずに困っていた。
「ゴメンね。千尋」
たこ焼きを持ってきてくれたのは、米澤千尋というクラスメイトだ。
私が両手を合わせて謝ると、彼女は肩をすくめた。
「いや、陽と深山さんの話って入り込む隙がないから、困るよ」
と言って微笑む千尋のさらに背後から長身の男性が突っ込みを入れた。
「いやいや、お前もハッキリと言えよ。いつもはずけずけと言うくせに」
「誰が? ずけずけ? 私は真以外の人には節度ある会話を心がけていますけどね」
千尋に真と言われたのは、このたこ焼きや「たこぼうず」を切り盛りする奥戸三兄弟の次男、奥戸真さんだ。長峰さんに負けない長身が千尋を見下ろす。
「おい、千尋……俺にも節度を保てよ」
「はぁ? なんで? ねぇ、なんで? 女の子に対してそんな態度の人間に、な・ん・で、節度を保たなければいけないのかな?」
二人は睨み合いながら店舗であるコンテナハウスに戻っていった。千尋、アンタ達の間にも入り込む隙が無いから。
とにかく、毎週番組収録が終わると、「たこぼうず」で打ち上げするのが恒例となっていた。
次回更新は1~2時間後。




