3/14 6:52 「きらきら、きら」
今回のコメント
やっぱり掛け合い書くのって楽しいね!
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わ、私、肩を触れられてる! どんどん心音が大きくなって私の耳に鳴り響く。思った以上に硬い感じの指なんだ……強張った私の表情を見たからかな? 長峰さんは少し顔を上げて、にっこりと微笑んでくれた。
「皆、本当によくやってるよ。きっとこれからもっとよくなる」
「は、はい……」間抜けな返事しかできない。
長峰さんの顔が上がったせいで少し筋張った首元が見える。なんだか見てはいけないものを見たような気がした。柔らかい笑顔と対照的なので、私はつい視線をそらしてしまう。
「さぁ、食べよ~」
「ですね。まだ全部は揃ってないですけど、お腹すきましたから」
「そうだよ~、紗江子ちゃんきっとお腹すいてたから、イライラしてたんだよ~」
「そ、そうですね……」
長峰さんの一言から、ピリピリしたムードがすぐに和んでしまった。やっぱりこの人がいてくれて良かったと思う。私は暖かい気持ちになって、微笑もうとした。
「つーか、長峰甘すぎ」
今までの流れをぶった切る、中性的な声がした。私は身震いする。やっぱり来たのかコイツ。
「陽。今度はステージの後ろを爆破するから、お前そこに飛び込め」
「できるわけ無いでしょ! 突拍子も無いことを言わないでください!」
長峰さんとは対照的にTシャツにスカジャンにジーンズを履いた、茶髪のちゃらちゃらした男が私と長峰さんの間から顔を出す。
この人が私が所属する事務所の社長、深山大吾だ。二十代後半で事務所を立ち上げ、三年目。ローカルアイドルの突拍子もない設定もすべてこの人の仕業だ。
「しかし、鹿ママを危険な目にあわせるのはいただけない」
ちなみに鹿ママはこの人が世話をしている。ゆえに鹿ラブな姿勢は崩さない。
「あれは鹿ママが逃げたせいで……」
「お前がヒモを持つ仕事ぐらいできないのが問題だろ」
社長の言葉に紗江子が何度も頷く。くそう、今日は我慢しようと思ったのに。思ったのに……私はの限界は簡単に訪れた。
「はぁ~? 何言ってるの?」
言ってしまった。長峰さんの前では、もう怒るまいと思ったのに!
「私に被り物をつけたのはどこのどいつでしたっけね!」
「ココのコイツだよ。なんか文句あるか」
自信満々に自分を指差す社長に私は頬を引きつらせた。この無意味な自信過剰ムカつく!
「文句有り過ぎて私の頭の中で交通渋滞起こしてるわ」
「お前の頭の中が一方通行の一本道だからだろうが! この単細胞! バイパス作れ! 公共事業増やせ! 道路工事しろ!」
「はぁ~~~~? 私の国会では公共事業なんてありませ~ん。天下り禁止~」
「お前、公務員が何でもかんでも天下りしていると思うなよ。大半の公務員がなぁ……公務員はなぁ……」
「公務員がなによ」
「なんで、オレが公務員の味方してるんだよ!」
「しらないよ!」
私が怒鳴ったところでヒミコさんが、のんきな声で合いの手を入れた。
「二人とも仲良いわね~」
「馬鹿同士の会話にしか見えませんけど」
続いて紗江子も口をだす。この小娘もいつかぎゃふんって言わせてやる!
次回更新はまた夜にでも。