3/14 6:01 「きらきら、きら」
今回のコメント
(正確には)昨日の晩御飯!
焼きそば。(目玉焼きのせ)
以上。
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「お疲れ~」
私たちは出番を終え、帰り道のお店で打ち上げを行っていた。とはいえ、未成年なのでジュースなんだけど。微炭酸が程よく喉を通り抜ける。やっぱり仕事の後のライフガード最高。
地元ケーブルテレビ設立20周年企画として結成された半年限定のローカルアイドルグループ、それが私たちの「鈴なりディアーV」。
設定としては「鈴なり一家」として、長女が比巫女さん。次女が私、ベルル。末っ子が紗江子。そしてお母さんとして鹿ママが控えている。
正直この設定いるのか? という疑問もあるけど、気にしないことにした。これは事務所の社長案らしい。
今日はケーブルテレビの番組収録だったのだ。ショッピングセンターのイベントも兼ねているので溜め撮りはせず、毎週行っている。すでに三回目を迎えていた。
「今日も楽しかったね~」
ふんわりと丸みを帯びたマッシュボブが小さく揺れる。ヒミコさんが瞳を細めて私に笑いかけてくれた。それだけできらきら光が零れるからこの人はすごい。さすが一年前まで東京で活動していたアイドルだけはある。
普段はちょっとのんびりして、語尾が延びる所が特徴で、私は年上にもかかわらず、かわいさを感じずにはいられなかった。
「ヒミコさん、良いわけないです。最後は”またしても”ベルルこと若葉さんによってグダグダになったんですから」
生意気な口をきいたのは私より二つ年下の紗枝子だった。切りそろえられ、まっすぐ伸びた長い黒髪が印象的で、いつも私に偉そうなことを言ってくる。確かに私より実力があって向上心もあるので、文句言えない。
しかも、怒りながらも、きらきらしてる。ヒミコさんには劣るけどこの子も素質はあると思う。
でも、ムカつくよね。だからついつい口からでちゃう。
「黙れ、小娘が」
「黙りません。同じ間違いを繰り返す向上心のない態度を改めてください」
「私だって一生懸命やってるって!」
「だったら結果を出してください。ハプニングを売りにするなんてずるいじゃないですか」
腕を組んで私に対抗する気満々だよ。しかも悔しいかな言い返せない!
「まぁまぁ、二人とも~。楽しかったから良いじゃない~」
「ヒミコさん……もう、分かりました」
「紗江子、ヒミコさんだったら良いわけ? 向上心無いよ今の発言は」
すると、紗江子は眉間に皺をよせて睨みつける。光が弾けた。紗江子はヒミコさんを尊敬していているので、彼女に言われると何もいえなくなる。っていうか私、年下に睨まれた?
私が席から立ち上がると、そっと手が肩に触れた。
「若葉、その辺りにしよう。高見も一生懸命にやっている人間に追い討ちをかけない」
置かれた手の重さを一心に受けて私の顔が一気に熱くなっていくのがわかる。ゆっくり横目で伺うと、眼鏡越しのやさしい笑みが私に向けられていた。長峰マネージャーだった。
更新は1~2時間後(70%)