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2/26 8:39 『永遠なるもの』  完結

今回のコメント。


きゃっほー! これで終わりです。

最後のほう意識朦朧と書いているので。誤字脱字酷いかも。

あの……申し訳ないけど、もう休みます。

終了してとっても嬉しいんだけどね。


今まで『永遠なるもの』を読んでいただいてありがとうございました!



***********************************



 そして私はあらためて、木崎へ向けて微笑んだ。無理なく、気持ちを込めて。

 彼女は少しムッとしながら私の顔をじっと睨む。自分の感覚では相当長い時間だった。だけど、彼女に伝わるのであれば短い時間だと思う。


「くだらない」


 木崎は一言呟いた。彼女は手櫛で頭を整えると、大きくため息をついた。


「何争ったんだろう。もうデブリも使い物にならないし……馬鹿みたい」


 私から視線を外して横を向くと、舌打ち交じりに言った。


「……もういい。今年は」


 木崎は後ろを振り返ると、赤石と顔を合わせる。赤石は彼女の顔を見て、頬を引きつらせていた。


「赤石君。私はこの計画が間違っているとは思ってないから」

「木崎、顔ぐらい拭きなさいよ。赤石が怖がってる」


 私に言われた木崎は、慌ててしゃがみ込む。私は横を向いて、まだオロオロしているサンタへ声をかけた。


「デブリ、ハンカチぐらい持ってるでしょ。点数稼ぎのチャンスだぞ」

「――はっ。わ、わかったよ」


 ちぇっ、本当に持ってたのかよ。という私の気持を無視して、デブリは木崎の元へ走っていく。ハンカチを取り出し木崎の顔を拭こうとすると、手で振り払われてた。それでも諦めずに何度も木崎に近づくデブリ。やがて何度目かのチャレンジで木崎は諦めたようだ。デブリが献身的に顔を拭っている。


 私は若干の寂しさをもって二人の姿を見ていた。ふと視線をあげると二人の向こう側にいる赤石と目が合う。やっぱり私の顔を見てギョッとした表情を見せる赤石。私が手を差し出すと、彼は肩をすくめた。ハンカチも持ってないのかよ。しょうがないので私は自分の服の袖で顔を拭った。まぁ、自分も持っていないんですけどね。



 どれぐらいの時間が経ったのかわからない。木崎の顔がアザを除いて綺麗になった頃に私たちが入ってきた入り口から光が差し込んだ。私は眩しくて手をかざす。光はこちらに向きを変え、向ってきた。どうやらコンテナトラックが数台進入してきたようだ。


「着いたみたいね」


 木崎が眩しそうに、トラックを見つめる。私には眩しそうと言うよりは、懐かしそうに見えてしまったのは気のせいだろうか。


 いつのまにか私の隣にいたデブリが呟いた。


「もしかしてあのコンテナの中身って……」


 それを聞いた木崎が鼻を鳴らす。


「ふん。残念ね、私達の計画を邪魔できなくて」


 彼女の反応を考えればきっとあのコンテナの中には子供達の願いを叶えた怪物達ということになる。正直、この計画については是非は私には分からない。阻止すべきものだったのかもしれないけど……


 私の視線に気づいたのか、デブリは補足を始めた。


「あの人達は自らの望んであの姿になった人たちなんだ。木崎さんとずっと平和に暮らすためにね」

「あの人たちはどこへいくの?」

「おそらくこの施設の奥に行くんじゃないかな」


 確かに私達が入ってきた方向と反対側にはまた金網で出来た門が設置されていた。じゃあここが木崎達が暮す永遠の住処だって事?


 これから外からの干渉を受けずに暮らせる場所。つらい過去を背負った木崎が選んだ終の棲家。


 そして私はデブリの横顔を伺う。何となく間抜けな顔をしている。あぁ、こんな顔なのになんで……


 そろそろ幕引きをしなければいけない。私は極めておどけた調子で答えた。


「デブリ、何言ってるの? アンタもその一人なんでしょ」


「あっ……」


 少しだけ沈黙が流れる。だけど私はこの間を許さない。


「お別れだね」


 私は精一杯笑いかけたつもりだったけど、上手くはいかなかった。自然と涙が溢れてくる。数週間前まで、私はこんなに泣いてしまうなんて思っていただろうか。泣かないで笑っていた私。感情を上手く表現できなかった私。今ではこんなに感情が溢れてくるようになったよ。だから過去の私に大丈夫だよと言いたい。笑える日も必ず来るから。未来の私が保証する。


 デブリは私を見て動揺したけど、指で涙を拭って無理やり誤魔化した。


「デブリ、行くよ」


 木崎がデブリを緑川でなくあだ名で呼んだ。それは彼女なりの譲歩なのかもしれない。デブリは目を細めて彼女を見て、気の抜けた返事をしている。なんだかムカついた私は彼の頭をチョップした。


「痛いっ! 何するの?」


「挨拶よ。嫉妬の籠もったね。早く行ったら」

「うん……大木さん、あの……」


 デブリは手を差し出した。握手を求めているのだろう。私は手を服で拭いてゆっくり差し出す。もうこれで会えるのは最後かもしれない。だからしっかりと手を握ろう。


「大木さん。短い間だったけどありがとう。僕の数少ない自慢できる友人で……」


 一瞬、握手された手に力が込められた。私は少し驚いてデブリの瞳を見つめた。


「僕の誇りです。これからもお元気で」


 いいよね。握手しているからいいよね。涙を拭わなくても。瞳から溢れて止められないよ。

「馬鹿……ホント、アンタは馬鹿だ……」


 なんでこんな事しか言えないんだろう。素直になったはずなのに。感情表現が出来るようになったのに。馬鹿は私だ。


「もういいでしょ。手を離してよ」

「あっ、ごめん」


 デブリが慌てて手を離そうとする。私は一瞬手を掴もうとして、止めた。


 すぐ横では木崎が赤石と向かい合っていた。赤石はなんのことか分らないのか、呆然としているように思える。


「さようなら、好きだった人。私は永遠を誓った人たちと暮らします」


 きっと事情をしらない赤石にはピンとこないだろう。それは彼を騙し続けた彼女の罪のような気がする。子供の頃から結局、彼には真実が伝わらなかった。


「それじゃあ。お元気で」


 木崎は私達に手を上げて背を向けて、歩きだした。続いてデブリも歩いていく。

 事情が飲み込めない赤石と私を残して。


 私達の背後からは、入り口からぞくぞくと入ってくるトラック。

 数が揃ってくると奇妙なことに気づいた。

 コンテナの中からなにやら声が聞こえるようなのだ。

 それはあの倉庫で聞いたような枯れた悲鳴に似た声。

 まとまった数になったことで外に聞こえてきたのだろうか。


 背を向けた木崎と枯れた悲鳴。

 それはまるで……


『木崎が泣いてる』


 赤石がそう呟いた。



 しばらくして私達の元へここまで案内してくれた迷彩服の人が迎えに来てくれた。

 元に戻る道すがら、私と赤石は二人並んで歩く。


 今なら言えそうな気がした。

 私の人生における根本原因を克服する。


「赤石、お願いがあるの」

「なんだよ。今回の事情と引きかえならいいぜ」


 教えてあげても良い。だけど教えたらもしかして「俺も連れて行って欲しかった」なんて言われそうな気がする。私は引きつった笑いで答えた。


 赤石は私の顔をみて、首を捻る。


「で? なんだよ。願いって」


 大丈夫。もう一回言えるはず。もう昔のような事なんてないから。

 私は小さく息を吸って、答えた。


「私とキャッチボールしてくれるかな?」

「え?」


 まるで「そんな程度の事」と言わんばかりの赤石。私は思わず彼の足を踏んづけてしまった。痛いと飛び上がる。私はいい気味だと思った。


「小学生の時、私を無視したでしょ?」

「……よく覚えているな、そんなこと」

「だって、あれが出発点で、やり直したいところだから」

「し、しつこいな……」

「知らなかった? 私は諦めないのよ」


 そう、私は今日からもう一度挑戦する事にした。

 永遠なるものへ。



『永遠なるもの』完





おきたら後書きを書くかも……

とりあえずここまで。

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