2/20 4:39 『永遠なるもの』
今回のコメント。
未だにこのくだりは納得がいかない。
なるべく相手の気持ちと同じ目線で考えたい。
でもそれがすごく偽善臭く感じる時がある。
突き抜けて考えられればいいけど、僕には出来ない。
自分がどんどん嫌になる時がある。
もう一方で同じ目線で考えて、同じように迷ってはいけない気もする。
そんな時は視点を一個上げて、離れて見ないといけない気持になる。
すると申し訳なさを感じる。
分かり合えないかもしれないけど、なるべく近くに寄り添ってあげたい。
相手が迷った時は、同情じゃなくて、本当に相手の役に立てる選択を提示したい。
だから近くにいても、頭一つぶんだけ高くありたいと思う。
という言い訳が今回です。
(愚痴ってばっかりでごめんなさい……)
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近づいてきた真実ちゃんの視線にあわせるために私はしゃがみ込む。
「真実ちゃん。今日は三田が来れなくなったんだよ」
「え……」
真実ちゃんの顔が一瞬曇る。だけどすぐに笑顔に戻って私達を迎えた。
「サンタさんも忙しいよね。私のおかあさんもね。今日忙しいって言っ――」
私は言い終わらないうちに真実ちゃんを抱きしめた。真実ちゃんは突然だからだろうか、体を固くした。なんでこんなにもこの子が我慢しなきゃいけないんだよ。大人に気を遣うんだよ。
……分ってる。それぞれの家庭には事情があるのは知っている。だから、せめて、私といる時ぐらいはちゃんと言って欲しい。そりゃ、血も繋がってないし、付き合いが短いかもしれないけど、放っておけないよ。過去の私も含めて。
「真実ちゃん。もういいから」
「……なにが?」
相変らず真実ちゃんは突っ立ったまま動かない。私はきつく抱きしめた。
「お姉ちゃん、苦しいよ」
今はわからないかも知れないけど、自分を置いて進んでいく人生は空洞を生むの。埋められない空洞を。どうしてか分る? 空洞の中にある透明な自分に気づかないから。
「笑ってばかりだとね、本当の気持ちが分らなくなるよ。昨日までの私みたいに」
「お姉ちゃん?」
今は良くても楽をしたツケは必ず回ってくる。本当の自分を見失っちゃう。
あぁ、私は誰に言っているんだろう。よくわからない。
「真実ちゃん、嫌な時は嫌って言っていいんだよ」
「真実、別に嫌じゃないよ」
「だったらどうして、『笑顔でいたい』なんてお願いするの?」
私はずるい質問をした。明らかに真実ちゃんが困った顔をしていた。大丈夫、本当に笑いグセがついていれば、この場面でもきっと笑うはずだから。
「だって、おかあさんが……」
「もう、頑張らなくいいよ」
「頑張ってないもん……」
同じ目線で悲しみを分かち合う事もできる。だけど、私は大人だから。大人の汚さで真実ちゃんを助ける。それが大人だからできることだと思う。
「教えて。本当は皆の事をどう思っているの?」
「わからないよ。もうわらないよ……」
言い訳がましいかもしれないけど、私は彼女をさらにきつく抱きしめた。彼女に触れていないと、離れていきそうな気がしたから。
「じゃあさ……」
私は精一杯優しい口調で話しかける。子供に安心感を与えるためだ。ずるいのは十分わかってる。感情の殺し方はこの子よりも知っているつもりだ。
「真実ちゃんの願い事をお姉ちゃんに任せてくれないかな?」
「え?」
「だって、わからないんでしょ?」
真実ちゃんは少し体を離して、私の顔を至近距離で見つめる。つぶらな瞳が私を真っ直ぐに見つめた。黒の中に光彩を放つ瞳が私を責め立てる。視線を逸らしたら、信じてもらえなくなるに違いない。
……だけど。
「ごめんね」
私は負けてしまい、真実ちゃんから視線を外すために、また抱きしめた。簡単に彼女の体は棒立ちのまま私へと引き寄せられる。
「ごめんね、本当にごめんね。私……」
「お姉ちゃん……」
立ち尽くしてた真実ちゃんの手が動く。私の体に彼女の腕が触れる。背中まで手は届かないけど、確かに私は彼女に抱きしめられた。真実ちゃんの手の力がぎゅっと伝わる。
「いいよ。お姉ちゃんに任せる。どうせサンタさん来ないんだし」