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2/17 6:00 『永遠なるもの』(録筆)

今回のコメント。


恒例のやつ忘れてた。


今日のごはん!


チンジャオロースー

餃子


ごはん


以上!



***********************************



 由実は「ちゃんと聞いて」と前置きして、力を込めた声で言った。


「これだけは言える。いつだってアンタは一生懸命だった」


 私は少し居心地の悪さを感じる。違うの。私は違うの。

 由実は私に構わずに今度は少し優しい声で語りかけた。


「そして今もね。一生懸命だから悩む。理想の幸せを追い求める。そして、何度懲りてもまた新しい事に挑戦していく。私の好きな美佳がそこにいるんだよ」


 そんなに素晴らしい人間じゃないんだよ、私は。そんな事言われたら……どう反応していいかわからない。困った時は笑顔に頼ってしまう。


 だけど、由実は目の前にいない。私の笑顔も伝わらない。そして由実の話は続く。


「私の友人であり、大好きな貴方を作り上げたのは、過去だよね。だから、どんな出来事もすべて今の貴方に集約されているの。空っぽなんかじゃない。いっぱいの思い出が美佳には詰まっているんだよ」


 今の私は過去の私の集積した姿。

「わかるけど……」私はいつの間にか言い返す準備をしていた。


「両親がいなくなって、男も去って、仕事も遠ざかっていったという過去が私には詰まっているんだよ。辛すぎるよ……そんなことってある?」


 由実は「それだけじゃないよ」とやんわり反論した。そして今までで一番優しい声で私へ語りかける。


「もちろん後悔はあって嫌になる時もあるだろうけど……いくつかの過ちだけを拡大して、それ以外の沢山の素敵な思い出をなかったことにしないで」


 素敵な思い出……? 私にあるって言うの?

 目を瞑ってゆっくりと思い出してみる。過去の自分をもう一度点検してみる。


 野球をしたから、練習することの大切さやスポーツの楽しさを知った。

 勉強したから、色んな考えの土台となる知識が手に入った。受験勉強という壁をのりきった。

 恋愛をたくさんしたから、相手を思いやる優しさを手に入れた。男性の見る目だって多少はついた。

 仕事に打ち込んだから、自分で創り上げていく喜びを知った。自己管理の難しさも知った


 そして、なによりこんなに大切な友達ができた。


 私が悔やんでいた出来事には、ちゃんと良かった事もあった。

 出来事とは裏と表が背中合わせ。一方的に悪いできごとなんて本当はない。ただ、見つめるのが怖くて背けている間は分からないのかもしれない。


「アナタは懸命に生きてきた。だから幸せになって欲しいの」


 こんな私にそんなこと言わないでよ。資格ないんだよ私には。

 そして、由実は受話器の向こうで、かなり大きな声で、言った。


「誰もアナタに言わないんだったら、私が言ってあげる」


 瞬間、私に瞳は一気に涙が溢れてくる。


「――貴方は私の誇りだ」


 私の周りが一気にぼやけてしまった。受話器からの音声だけが私の感覚になっていく。


「何度だって言ってやる。拙いかもしれないけど、私はアンタの友達だから」


 由実に知られまいと私は懸命に唇を噛み締めた。その代わり瞳から流れるものは止めなかった。


「美佳の過去を馬鹿にしたりする奴は私が許さない。その女は私が殴ってやる!」


 それから由実は私が話を出来る状態まで黙って受話器の向こう側で待っていてくれた。気持ちが落ち着いた後、私は改めて「ありがとう」と伝えた。


 すると由実も少し震えた声で話してくれた。


「あんたに負けたくなくて私は旅館を継ぐ事にしたんだよ。自分の生きる場所として」


 私は木崎が手に入れられなかったものを沢山持ってた。

 それは誰に恥じることもない、誰とも比べられない大切な私の宝物だった。




今日はここまで!

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