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2/17 1:56 『永遠なるもの』

今回のコメント


木崎の過去に関しては、もっと詳しく書いても良かった。

下手すれば、一章さいて書ける内容だった気もする。

だけど、これを書くには話が重過ぎるし、大木とのバランスが取れなくなる気がしました。


また、以前書いた、役割と作者の思いのバランスが取れなくなって、木崎のキャラが大きくなってしまう危険性があったので、これぐらいの記述にしました。

それと読んでるほうも陰鬱で嫌な気分になるだろうしね。

書いてるほうも雰囲気に呑まれる可能性があるし。


どこまで書くかというのはいつも考えることです。

例えばグロい表現。

詳しく書く事はできるけど、それを書きすぎて、お話が読めなくなるっていうのは本末転倒な気がするし。

一番良いのは書くだけ書いて後で削除する方法だろうけど……



**************************************



「小学生の時、本気で私を救おうとしてくれたのは赤石君だけだった。でも、あの時の私には……子供の私には胸に飛び込んでいく勇気なんてなかった。だって、彼も子供だよ? 迷惑かけられないでしょ? だから私は笑ってやり過ごした。あの継父に黙って連れて行かれた。どれだけ心で泣いてたか、アナタにわかる? 心の中でどれだけ助けを呼んだかわかる?」


 さっきまでの自分の半生を振り返っていたような激しさはなく、どこか私に同意を求めているようにも思えた。気のせいか瞳が潤んでいるようにも見える。木崎は少しだけ声を震わせながら、話を続けた。


「そして私は大人になった。自分で色々なものを手にすることができるようになった。でもね。あの時のような純粋な気持ちって言うのは手に入るものじゃないの。どの人も私を利用したいだけのクソばかりだった。今唯一信じられるのは、小学生の時、私と一緒に過ごしてくれた三人の男の子だけ。『木崎由貴を泣かす会』のメンバー」


 彼女の中には常にあの三人の姿があったっていうの? ……私はあまり思い出したことがなかった気がする。私はますます何も言えなくなった。


 木崎は顔を少し上げて、見下すように私を見た。


「だけど貴方は『泣かす会』の邪魔者だった。いつも思ってた。なんでコイツがいるんだよってね。だからね、今回のことも口を挟まないで欲しいの。アナタは私たちの輪の中にはいないから」


 あの時、木崎が孤独だった様に思えたけど、今となっては、のけ者は私で、孤独だったのだ。完全に四人が作り出す円の外にいたわけだ。


「どう? 何か反論は?」


 何も言えなかった。最初から私は蚊帳の外。過去においても現在においても頼まれてもいないのに無意味に首を突っ込んでいただけ。


「貴方は私に勝てない。絶対にね」


 木崎の勝利宣言に思えた。俯いたままの私が何も反応しないので、木崎は私に向って歩き出した。


「もういい、ありがとう。私の心残りが晴れたわ。貴方をねじ伏せるっていう心残りがね」


 そして私の横を通り過ぎる。すれ違う瞬間も私を見てはいなかった。もう私は障害でもなんでもないかのように……


「今から緑川のところへ行って、話をつけてくるから。ご苦労様、緑川の首輪さん。お陰で簡単に消息がつかめたわ。倉庫の一件以来、会社の携帯電話を捨てたみたいだから正直焦ったの」


 足音が背後から聞こえなくなるまで、私はその場を動けなかった。

 木崎には敵わない。赤石君は止められない。緑川は救えない。

 なにより自分の望むことさえわからない。

 壮絶な過去を背負い、迷いのない木崎に何も言えないのは当然の結果だ。


 ……なんだか疲れてしまった。もういいや、このままで。

 私はふらつきながらもなんとか自室に転がり込んだ。



更新は1~2時間後(80%)

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