2/5 14:51 『永遠なるもの』
今回のコメント。
急にシュレーディンガーの猫の話が出てきますが気にしないでください。
勢いで書いているだけなので。しかも、シュレーディンガー直接関係ないし。
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「分かってくれたなら、僕の気持ち分かるでしょ?」
「本当に卑屈な男、上なんか見たってキリがないでしょ」
緑川は立ち上がりながら口を尖らせた。
「でも、僕が頑張ったって勝てない相手はいるよ……」
「アンタ何になりたいの? 男の頂点にでも立たないと自信が持てないわけ? んな考えだから、木崎にも相手にされないのよ」
一重の目を大きく開けて動きを止めた。最後の言葉が相当堪えたらしい。私は軽く頬をたたきながら話を続けた。
「ごめん言い過ぎた。だけど、今言ったのは本気だよ。男の頂点になりたいの? 好きな人の頂点になりたいの?」
「僕は……」
「うん」
根性を見せろ、好きな人の頂点と言え! と私は心の中で叫んだ。
緑川は腕組みをして上を向いた。考えることか!
「僕は……どっちもいいや」
「はぁ~~?」
どっちも選ばないってどういうこと? 馬鹿なの?
腕組みを未だにしながら緑川が言葉を継ぐ。
「好きな人に笑っていて欲しいんだ。僕が一番じゃなくても」
心底ため息が出てきた。私がため息をついた途端、「え~っ」とか言う緑川の声がした。
「アンタ、きっと利用されるだけ利用されて捨てられるわ。いや、相手には捨てるという意識すらないかも」
嫌味を言ったつもりだった。でも、緑川は笑ってた。どちらかと言えば苦笑いだけど。
「良いんだよ。彼女が幸せだったら」
「馬鹿じゃないの? 馬鹿じゃないの? 馬鹿じゃないの?」
「ええ~? 三回言った?」
本当に間抜けな返答。
子供に相手にされなくて、主役になれないと僻み、木崎に対しては主役じゃなくても良いと言う。この矛盾わかってるのかな、コイツ。
いつも気持ちが揺れて一定にならない存在。自分か好きな人が覗くまで定まらない。とんだシュレーディンガーの猫ね。……まぁ、それが人間か。
「わかった。今はそれでも良いから。じゃあせめて真実ちゃんを幸せにしなさいよ」
「どういこと?」
「木崎の事は置いておいて、まずは真実ちゃんと仲良くしなさい。その努力をしなさい。願いを叶えるから彼女が幸せにできるなんてありえないから」
「でも、それは大木さんが……」
「黙れ。仲良くしないと私だって彼女に願いを聞いてあげない」
「そんな~」
すがるように見つめてくる緑川に構わず、私は腰に手を当て胸を張った。
「別に私が聞かなくてもあんたが仲良くすれば済むことでしょうが」
「だけど……」
本当に踏ん切りがつかない男。まるで少し前の自分を見てるよう。
「わかったら、明日からさっそくチャレンジよ!」
力いっぱい緑川の背中を叩いた。自分を励ますように。
息を詰まらせながら痛みに耐える姿を見て、私は笑った。
大丈夫だ。嫌な事思い出してもまだ笑えるや。今はできる事をやろうじゃないの。
更新は1~2時間後(70%)
まぁまぁの数字