1/29 14:09 『永遠なるもの』
今回のコメント。
うとってた!(うとうとしてたの略)
再開します。
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しかし、彼の方が先に腰を上げて、私に言った。
「あの。僕は出かけるんで。アナタは部屋にいていいよ」
「えっ? でも……」
「だって服もまだ乾いていないし」
言いたいことはよく分かるけど、私には理解できなかった。
「他人を置いてよく部屋をでていけるよね?」
すると彼は背筋を伸ばした。神妙になったつもりらしい。
「……あっ、そうか。僕は三田って言います。アナタは?」
「私は……大木です」
私はとっさに前の苗字を答えていた。恥ずかしさもあったと思う。私が名前を名乗った後、彼はニッコリと笑いかけた。
「じゃあ、これで知り合いだ。それじゃあ、よろしく。すぐに戻ってくるから。二時間ぐらいで」
半ば呆れてぽかんとする私を置いて三田は「いってきます」とか言って部屋を出て行った。私も反射的に「いってらっしゃい……」と気のない返答をした。ドアが閉まる音がして、一人取り残される私。馬鹿じゃないの! 私が泥棒だったら今頃盗み放題だよ! ……泥棒じゃないけど。
昨日、知り合った人の部屋で今日は一人留守番をしている。私、なにやってんだろう。由実が聞いたら怒るかな? それとも喜ぶかな? ……喜ぶ? なんで? 「美佳から男の話が出るなんて久しぶりじゃない」とか言うんだろうな。実際、久しぶりだし。「いってらっしゃい」なんて仕事以外で口にしたのいつ以来だろ。
仕事に打ち込む前、私は恋愛に生きていた。恋愛しない女子は本能から逆らっている、なんて豪語していたような……。大学時代から社会人初期まで数人の男と付き合ってすぐに同棲し始めてを繰り返した。
皆、ろくでもない男で、何股もかけてた男、嫉妬深くて暴力を振るう男、借金ばかりする男、夢ばかり語って何もしないヒモ生活がしたかっただけの男、皆始めは良い人そうに見えるけど、一緒に暮らし始めれば、すぐに正体がばれる。喧嘩したり、束縛から逃れて由実の家に行くと、顔を引きつらせながらも「お帰り、生きる駄目男の博覧会会場はアナタですか?」なんて言って迎えてくれたことを思い出した。
そういえば、同棲してたときもたまにパチンコに行った彼を部屋で待ってた事があったなぁ。私はああいうゴミゴミしたところが嫌いだったら、一緒に行かなかった。彼が帰ってきてから何しようかなとか考えて、ニコニコして。実際はパチンコに負けて彼の財布が空だから何もできないんだけど。
でも、笑顔で迎えてあげよう……って。私、気づけばこの頃から笑ってた。暴力振るわれた時も笑ってた気がする。何股もかけられてたときも、笑ってた……だいぶ引きつってはいたけど。なんだ、仕事で身につけたものじゃなかったんだ。男と暮らすようになって笑うようになったのか……
結局、最後の男がさっき挙げたような条件を全て兼ね備えた男で、借金を作って逃げられた。代わりに私が仕事頑張ってお金を返済した。最初は戻ってくる彼のためとか思っていたけど、仕事に打ち込むうちに、だんだん面白味がわかってきて、のめりこんだんだ。
なんか最近色々と昔のことを思い出すなぁ……私が歳とった証拠か。三十路だし。少し疲れたのでソファへ横になった。
留守番を始めて三十分ぐらいたったころ、部屋に備え付けの電話が鳴った。最初は無視していたけど、ずっとなり続けるので、私は電話に出ることにした。無言で受話器に耳を当てると彼の声が聞こえてきた。
次回の更新は1~2時間後(80%)
(最近、予報が全然あてにならない気がする)




