1/27 18:35 『永遠なるもの』
今回のコメント。
もうお分かりだと思いますが、3『もう一度クロスロード』と同じ時間軸を持っています。
3を書いてた段階で決めていたことなので、5の内容を意識しつつ、3を書く作業を行なっていたので、結構時間が掛かってしまったというのが真相ですね。
とはいえ、5も相当時間が掛かりそうですが。
(という言い訳←最近この言い回し多いね)
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手紙の返事を出し、由実が引っ越してから数週間経った十二月の中旬、私は同窓会に参加した。地元の料亭を貸しきって当時のクラスメイトがほぼ全員集まっていた。
料亭を前にして私は少し気後れした。 ここ数ヶ月、由実と木根君以外の人とまともに話をした事がないことに気づいたからだ。今なら帰る事ができる……でも、帰ったところで独りの部屋があるだけだ。私は行くことも帰ることもできず、固まってしまった。
ふいに由実の言葉を思い出した。『しがらみのない小学生時代の仲間なら、上手くできるかもしれない』と思い直し、足を踏み入れた。
だけど実際は『しがらみだらけ』のような気がする。名刺交換している男性、子供をつれてきている女性。皆がすでに確立した社会的立場を会場に持ち込んでいた。途端に私は居場所がない気がした。
それでも適当な席を見つけて座る。すると、隣には偶然当時仲の良かった女の子が座っていた。彼女は私を見た瞬間、ぱっと明るい表情を向けてくる。
「うわ~、大木さん。懐かしい~」
「え? 私ってわかるの?」
「そりゃわかるでしょ。髪が長くなったけど、面影は残ってるもの」
最初気後れはしたものの、取り越し苦労だったのかもしれない。私はホッとした。
小学生時代、私は女子の中心にいた。色々なグループの中でも可愛い子のグループではなく、男っぽくて、からかわれている女の子達の代わりに男子と腕っぷしで勝負するタイプの人のグループだった。私にみんなが慕ってくるので、面倒なことを一手に引き受けていた気がする。それは女子内のイジメにも関わっていた。あの子のに対するイジメだ。
「本当に懐かしいね~。今なにやってるの?」
「え? ……えっと」
答えづらい。小学生時代の私の立場から考えれば、分かりそうなものだった。だけど隠しても仕方ないので正直に話す。すると一瞬気まずそうな表情をするけど、相手は「そうなんだ。大変だね~」とか言って適当に流してくれた。私はホッとした。やっぱり小学生時代の友達だから、関係ないよね、なんて思った。
でも、時間が経つごとに私はどんどん周りと溝が生まれていることに気づいた。なんだか話が続かないのだ。だんだん、視点が定まらなくなり、周りの風景が揺れている気がした。実際は私が揺れていたんだけど。
あれ? なかなか調子がでない。というか小学生の時、私はどうやって話をしていたのだろうか? 完全に忘れてしまった。表情も戸惑いが多くて、相手も話している途中で首をかしげるのを何度か見てしまった。すると余計に焦る。私は俯いてしまった。
私は息を吸い込みながら、軽く目をつむり、ゆっくり吐き出す。
モードチェンジをしよう。仕事の時のように過ごそう。視点が定まり、気持ちを切り替えることに成功した。
それから私はスムーズに輪の中に入っていった。
だけど、『小学生時代を思い出す』という主旨は完全になくなってしまった。
更新は1~2時間後(75%)