12/30 0:52 『永遠なるもの』⑰
今回のコメント。
今日の夕食
焼肉っ!
以上。
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3『もう一度クロスロード』
「これで何件目だ?」
赤石史家は、独り言をいった。
ここは威武公園。ジョギングやウォーキングコースになるような比較的敷地面積の大きい公園だ。
入り口ではパトカーが数台止まっている。すでに報道管制がしかれていた。新聞記者でもなければ、テレビ関係者でもない赤石は、出遅れていたことを悔やみながら、せめて実物を見たいと思い、なんとか現場に潜入できないか機会をうかがっていた。
まずは入り口付近の人垣を掻き分け、警官が立っている目の前までたどり着く。やはり報道関係者が集まっていて、赤石が近づくとみんなの視線を一身に受けた。しかしすぐぐに各々、何事もなかったように、自分達の仕事に戻る。
「ったく、何しに来たんだよ」
聞こえる様に話す者もいる。それもそのはず、赤石は一介の雑誌記者に過ぎず、しかも、廃刊寸前のオカルト誌の記者だったからである。
何しに来たんだコイツという周りからの重圧に対して、彼は頭をかいて誤魔化す。さらに辺りを見渡し、ここには入れそうな空間がないことを悟ると早々に人垣の中へ戻っていった。
公園の周りを歩き回り、潜入できそうな場所を見つける。木々が生い茂って自然の壁が出来あがっていた場所だった。赤石は大きく息を吸って、口を閉じると、木々へと飛び込んだ。
枝が服に刺さりながらも、公園内に潜入した。赤石は身を隠しながら、現場を探す。わざわざ公園全体を警備する徹底ぶりが余計に彼の核心を深めていった。
数分後、警察関係者が集まる場所を見つけた。赤石は改めて身を隠す。ジャンバーのポケットからデジカメを取り出した。ゆっくりと身を乗り出し、現場に向けてズームする。
頼むぞ。今回こそ本物であってくれ。赤石は生唾を飲み込み、デジカメ越しに映る画面を凝視する。すると私服刑事の間から地面に横たわる何かを見つけた。
足のように見える。しかし、不自然に曲がっているようだ。色は褐色、やや黒に近い。やはり合致する。赤石は何度もシャッターをきった。
すると一人の警官が赤石に気づき、大声を上げる。赤石は急いで元の場所へ戻り、再び木々に飛び込んだ。今度は証拠写真を抑えたっ! 走りながら赤石は充実感に覆われていた。
赤石が帰った場所。それは雑居ビルの中にある、小さな出版社だった。ドアの入り口には「月刊ヌー」と書かれてある。赤石がドアを開けると2人の社員が仕事をしていた。そのうち、一人の男性社員に赤石は近づいた。
「おい、皿頭健之助。とうとう俺はやったぞ」
すると皿頭健之助と言われた男性社員は面倒くさそうに赤石に顔を向けた。
「それは仮名です。僕はちゃんと樅山孝司って名前がありますから」
「サラケン、それでな」
「略さないでください! 先輩のやったぞはアテになりませんからね。この前の記事最悪じゃないですか」
「いや、アレは……穴埋め記事だから」
嫌なことを思い出させるな。赤石は口元を歪ませながら答える。
『海岸に現れたUFO。ハリウッドスターと密会か?』
これは最近彼が記事にしたタイトルだ。適当に取った写真をPCで加工し、記事をでっち上げた。語るのはいつも関係者だし、憶測で文章を締めるお決まりのパターンだった。
「本命の事件が忙しかったんだよ!」
「確か『黒い悪魔』でしたっけ? 子供頃から追ってるって奴ですよね」
サラケンは手に持った容器を転がしながら、ため息身混じりに答える。
「俺は本当に見たんだ。今回は証拠もあるぞ」
「はいはい、どれどれ見せてください」
赤石からデジカメを受け取ったサラケンは画面を一瞬見て、すぐに返した。
「どうだ? すごいだろ!」
「いや、それ、ただの腐乱死体ですから。グロい写真を掲載して、また苦情殺到させたいんですか? 編集長がまたマジギレしますよ」
「そんなわけないだろ、これはまさしく――」
「ほら、これを見てください」
サラケンは赤石の言葉を遮って、円柱型の容器を机に置いた。
「なにこれ?」
「ふふふ……イケメンになる塗り薬です」
自信満々に答えるサラケンに赤石は中途半端に口を開けて「は?」と答えた。
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この確率、お察しください。
頑張れ、自分!