12/25 2:34 『永遠なるもの』④
今回のコメント。
ドライブから帰還。
気のせいか運転の荒いやつ等が多かった気がする。
それよりも。
明石家サンタが始まってるうぅぅっ!
クリスマスイブの夜はやっぱり明石家サンタの不幸話だね。
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「もう、なんで逃げるんだよ、赤石君!」
「うるせー、デブリ」
確かに僕は太ってる。だからあだ名はデブリだ。でも軽々しく呼ばれると傷つくなぁ。結局僕達は近くの公園まで逃げてきてしまう。今回も木崎を泣かせることは出来なかった。
眼鏡を指で押し上げながら、仲井戸が話し始めた。
「赤石君。やっぱり、僕達には無理なんだよ」
「うるせー、それでもやらなきゃいけないんだよ!」
赤石君が怒鳴ったので僕達は黙った。すると赤石君も少し小さい声で言う。
「アイツには貸しがあるんだ……」
そうなのだ。僕達「木崎由貴を泣かす会」は、それぞれ木崎に借りがあることで結ばれた会員なのだ。
僕の例を出せば、いつも太っていることで、皆に馬鹿にされてた。あの日も帰り道で散々デブ、ブタ呼ばわりされて、公園で泣いてた。ベンチで涙を拭いていると、木崎さんが通りかかった。
「どうしたの? 緑川くん」
木崎は黒くて長い髪が背中近くまで伸びていた。何より印象的なのが笑顔だった。小さなえくぼに目がいってしまう。
「ひっく……べ、別に……ひっ……なんにも……ひっく……ないよ……」
「はい、これ」
すると木崎はポケットからハンカチを出した。僕が顔を覗き込むように見ると、やはり笑顔のままだった。
「遠慮しないでどうぞ」
「木崎は僕のこと馬鹿にしたりしないの?」
「なんで?」
彼女が首をかしげると、肩にかかったら髪がさらりと落ちる。ジャンプーの良い匂いがした。僕は顔を赤くしながら無言で受け取り涙を拭いた。
「なんで木崎はさぁー、いつも笑ってるの?」
「私、ずっと笑えるようにしてもらったの」
「誰に?」
僕の質問に木崎は人差し指を口元に当てて、小さく言った。
「内緒」
それから僕はよくこの公園で木崎に会うようになった。木崎は公園に毎日のように来ているらしい。理由を聞いても教えてくれなかった。だけど、僕がからかわれて落ち込むごとに木崎はいつも笑顔で迎えてくれた。それだけでなんだか安心できた。
本当は毎日来たかったけど、さすがに女子と毎日会っているなんてバレたら僕はクラスで生きていられない……と思っていた。
生きられないと思った男子があと二人いたことに気づいたのは、僕が我慢できなくて他の日に公園へ言った時だ。こうして僕達三人が仲間意識を持つのも時間の問題だった。
赤石は野球のレギュラーになれなくて落ち込んでいたところを木崎の笑顔に癒された。
仲井戸は塾の成績が芳しくなくて落ち込んでいたところを救われた。
つまりは全員、木崎の笑顔に救われた同士なのだった。
僕達はお互いがクラスの人間にチクるのをけん制した。そして、公園に来る日付もお互い調整した。木崎が気になる同士、やはり一緒っていうのは嫌だったからだ。
でも、木崎が女子の中でイジメの対象になるにつれて、我慢ができなくなった。イジメの原因がいつもヘラヘラしているからっていうのが気に入らないということだ。実際、木崎は何をされてもニコニコしていた。
でも、彼女の笑顔で僕がどれだけ救われたか知らないんだ、女子達は。そう思ったのは僕だけでなかった。赤石と仲井戸も同じ気持ちだった。
そこで、僕達は「ヘラヘラだけしているわけじゃない」ことを証明するため「木崎由貴を泣かす会」を作ったのだった。
更新は1~2時間後(65%)
微妙になってきました!