12/17 22:42
今回のコメント
今日の夕飯。
すき焼き
うどん
ごはん
以上。
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高月先輩に笑ってもらうためにはどうしたら良いのか。懸命に考えた。だけど思い浮かぶのは手垢の付いた聞きなれた言葉だけだった。
「好きな人を忘れられないのは仕方ないですよ」
気休めにもならない事は分かっていた。だけど、このまま黙っていたって状況は変わらない。先輩の気持ちも変わらないし、気持ちも伝わらない。
僕の言葉に先輩は虚ろな表情のまま窓の外を眺め、ついでみたいな感じで呟いた。
「そう割り切れる気持ちが私にあれば良かったのにね……」
なにも届かないのだろうか。ただ悪戯に自分を責める先輩に何を伝えたら良いのだろうか。もう、なんて声かけて良いか分からない。きっとここで思考停止してしまう。いつもなら。
僕は自然とポケットへ入れた手紙をズボン越しに触れる。するとじわじわと湧き出るように暖かい気持ちが流れ込むような感覚になれた。もしかして美国の日記アイテムはこの手紙なのかもしれない、なんて思う。
美国が残してくれたこの手紙に書かれている「受け継がれる気持ち」は重く、だけど「心強い味方」になってくれていた。思いがけなく、誰かに背中を押された気持ちになった。
僕は僕のことしか語れない。格好をつけて飾った言葉で伝えても、それは僕の言葉じゃない。たとえ結果が使い古された言葉だったとしても構わない。僕はもう一度勇気を振り絞った。
「高月先輩。割り切る必要はないと思いますよ」
言葉が届いたのだろうか、先輩は一瞬だけ僕の顔へ視線を移した。そのまま言葉を繋ぐ。
「割り切れるんだったら、皆苦しんでません」
すると高月先輩は目を伏せて、答えた。
「だから皆不合格になった。この不幸が乗り越えられずに」
僕だって何回問い続けた問答だろう。「皆不幸になった」「だから私も不幸になる」っていう図式。消えていった皆の声は聞こえないから、自分で考えるしかない。自分で考えたからこそ、アリ地獄のように落ちていく自縛の念。僕は伝えないといけない。
「皆が不合格になったから、僕たちがあるんです」
アリ地獄から引き上げる手が必要なときもある。自分だけで解決できないこともある。事情も知らない、共感できない、助ける力もないかもしれない。でも、手を伸ばすんだ。
次の更新は1~2時間後!(95%)
あっ、ちょっと上がった。