12/4 7:58
今回のコメント
伊達に土曜日ごろごろとサボってたわけじゃないぜ!
こんな時間に更新だ~い。
この無計画っぷり、痺れる、あこがれるうぅぅっ!(憧れません)
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時間は過ぎ、辺りはすっかり暗くなってしまった。下校時間も過ぎ、本来なら選挙活動も終らなければならない時間だ。裏門にはもう人が全然いない。
僕はもう帰りたかった。とにかく自室でゆっくりと眠りたかった。今日は疲れているんだ。わかって欲しい。
辺りに生徒がいないか探している高月先輩に近づいた。
「先輩、もうほとんど人がいないですし、終りましょう」
暗くなってあまり表情が読めないが、ハッキリした口調で先輩は僕に答えた。
「まだだよ。一人でも多く声をかけなくちゃ!」
高月先輩の声が聞こえたからか、滝川先輩が遠くから声をかけてくる。
「よし、私はもっちょっとその辺り回ってチラシを配ってくる」
「お願い」
滝川先輩は駆け足で離れていった。僕と高月先輩の二人だけになってしまう。木枯らしが裏門を吹きぬける。高月先輩の髪が舞って大きく乱れた。
僕はもう我慢できなくなっていた。聞かないといけない。確認しないと、前に進めない。
「どうして、そんなに平気なんですか?」
疲れていたのかもしれない。心で留めておく言葉が口に出てしまった。先輩は振り向く。
また強い風が吹いた。先輩は首元に手を当てて髪の毛をさっと肩からはらう。太陽の角度が変わったからかもしれない。淡い西日が高月先輩を照らす。
視界が晴れると、僕をしっかりと見つめている先輩が目の前にいた。
「君がいるから平気なんだよ」
高月先輩は満面の笑みとは行かなかったが、精一杯の笑顔を僕に向けてくれた。明らかに力強さが欠けている。弱々しいながらも、優しさは変わらない。
思いやりが伝わる。きっと僕を励まそうとしているだろう。
――だけど。
だからこそ。僕の心に邪な気持ちが一滴落ちてくる。最初それは少しの暗闇だったのに徐々に広がった。脳内が痺れたように頭が働かなくなっていく。心の透明度がなくなっていき、底まで光が届かなくなる。あの平光先生の瞳のように、何も見えない暗闇。
呼吸が浅くなり。息苦しくなってきた。しかし暗くなったはずの心に確かに見えるものがあった。黒い光を放つ言葉。僕はその魅力に勝てそうになかった。
先輩を見つめる。なんだか笑みがこみ上げてきた。心の中へ侵食していく言葉。
『高月先輩、この言葉を聞いてそれでも綺麗事言えますか?』
僕が口を開くのは時間の問題と思った頃には言葉にしていた。
「先輩、『君がいるから平気』ですか?」
暗闇の中でかすかに赤い光が灯る。警告音が鳴り響く。言うな。言ってしまえば終わると告げていた。
高月先輩は少し眉間にシワを寄せ僕を見つめている。
「見え透いた嘘は言わないでくださいよ」
そしてハッキリと不機嫌な表情が高月先輩から伝わる。
つられて僕の黒い思いは止まらなくて、赤い光がどんどん黒い霧に覆われていく。警告音が徐々に聞こえなくなる。
その言葉は言うな……言う……言……
「先輩が平気なのは僕がいるからじゃなくて……」
頬が引きつって無様な顔かもしれない。だけどニヤつく顔が抑えられないんだよ。真剣に言わなきゃいけないのに、ハッキリ言わなきゃいけないのに。吐き捨てるように、乱暴に言葉を吐く。暗闇が僕を完全に覆ってしまった。
「『美国の代わりである僕がいるから平気』の間違いじゃないんでしょうか?」
「――っ!?」
瞬間的に高月先輩の瞳が大きく開く。目尻からは溜まった涙のようなものがにじみ出るのがハッキリ見えた。
――勝った!
心で僕は叫んだ。屈服してやった。僕の胸は少しだけ楽になった。
「違……」
高月先輩は言葉に詰まった様子で、それ以上言えずにいた。僕はほんの一時の満足感を得た。先輩の心を犠牲にして。
僕は今まで生きてきた中で一番言ってはいけない言葉をいったのかもしれない。
「日記の秘密はもう知ってるんですよ」
「……嘘?」
「本当です」
大変なことを言ってしまった。だけど僕は興奮を抑えられなかった。
更新は夜に続くと思うよ……多分。
それじゃおやすみなさ~い!