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今回のコメント
今日実は会社の課長が組んでいるバンドのライブがある。
行く予定なんだけれど、場所がイマイチ分からない。
自分が住んでいる市内なんだけど、地図だけみたのでは、感覚がつかめない。
だって行ったことないんだもん!
果たして間に合うのだろうか……
携帯のカーナビで京都までいったぐらいだから大丈夫だよね!
まさか地元の市内で迷うことなんて……
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「何だかよくわからないんだけど、朝気づいたらポケットに入っていたんだ。あんまり不思議だからとっておいたんだけど」
手に持った紙切れを僕に差し出す。受け取れというのだろうか。しかし、受け取るいわれはない。僕は紙と美国の顔を交互に見つめる。すると、美国は苦笑いをした。
「不思議がるのは無理ない。だけど、君に渡すように紙に書いてあったんだ。決して怪しい代物じゃないと思うよ。俺も気づいたら入っていたから気味が悪いんだけどね」
それでも僕が受け取らないと、美国は頭をかきながら言葉を続ける。
「だって、見覚えのない自分からの手紙が入ってるなんて思わないだろ? しかも、面識のない同級生に手紙を渡せなんて……こんな面白いこ行動しないわけには行かないだろ?」
「本当に僕宛なのか?」
「表を読めば分かるよ」
ずいっと差し出された手紙を僕は受け取った。A4の紙一枚を四つ折にした紙だった。折られた表面には文字が書かれてある。
『これを草弥甲斐斗という立候補者に渡して欲しい。そして受け取った草弥は自分の部屋に戻るまで開けずにいてくれ。はかり先生にばれないように。 美国進より』
僕が紙を見て、美国へ顔を上げる。「言ったとおりだろ?」と言わんばかりの得意満面な顔で僕を見つめていた。
僕は構わず紙を開けた。美国は驚いていたようだが、気にしない。開かれた紙にはびっしりと文字が書かれてあった。これではすぐには読めそうにも無い。少なくとも、元の世界に戻って滝川邸に帰らないと読めそうになかった。
「おーい、君達なにしてんの?」
僕が顔を上げると、美国進越しに平光先生が歩いてくるのが見えた。慌ててポケットへ紙をねじ込む。美国は「それじゃあ」と言って走り去っていった。入れ替わりに着物に眼鏡姿の平光先生が近づいてくる。
「草っち、どうしたの~? 美国君に全てばらしてた?」
「まさか。それにどうせすぐリセットするでしょ」
「わかってるじゃん♪」
袖を振りながら僕の前までくると、眼鏡越しの上目遣いでこちらを見た。
「ただ、同じ一年生候補だから頑張ろうって言われただけですよ。美国らしい、爽やかなやりとりですよ」
「ふ~ん……」
平光先生の瞳が僕を見つめる。高月先輩と対照的に光彩がまったくない瞳。だけど引きこまれそうになる。あまりにも黒い瞳。暗闇に取り込まれそうだ。
――怖い。と言葉が漏れそうなぐらいに感情が溢れてくる。やっぱりまともに相手ができない。僕が目を瞑りそうになった時、平光先生が軽い声で話を継ぐ。
「まっ、いいか。ところで、さっき君の先輩達が探してたよ~」
「そうですか。じゃあ戻ります」
僕はこれ幸いと旧校舎に向けて走り出した。
更新は1~2時間後?