11/22 0:53
今回のコメント
今日のご飯っ!
豚肉のソテー。
キャベツ。
ごはん。
以上!
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朝、いつの間にか寝てしまった割には、いつもより一時間早く目が覚めた。昨日と同じく、身支度を整え、先輩達が起こしに来るのを待つ。だけど、今日は誰も起こしに来なかった。
別に不思議ではなかった。当然の結果といえる。僕には昨日と今日ではまったく別世界に思えるからだ。昨日と違う結果だからって不思議じゃない。
結局、高月先輩に会ってもどうするかなんて、思いつきもしなかった。もう時間だ。出たとこ勝負と言うことになる。せめて平気な顔をしよう。僕は部屋を出た。朝食の用意をするために台所へむかう。
長い廊下を歩く。早朝なだけに床が冷たい。こんな感覚がるのに僕は他の人とは違うのだろうか?
「草弥君、おはよう」
いつの間にか俯いていた顔を上げると、真琴さんが待ち構えていた。今日も落ち着いた色彩の着物を着こなしている。僕は何も言わずに一礼をして横をすり抜けようとした。丁度、横に来た時に、真琴さんが僕に話しかける。いつも通りの優しい口調で。
「亜也さんには何も言ってないからね」
僕は立ち止まってしまう。確かに高月先輩と気まずくならなくて済むのでありがたかったが、それ以上に僕の気持ちを逆なでした。もしかすると、真琴さんを睨んでいたのかもしれない。僕が一瞥すると、真琴さんは一歩後ろへ下がった。
「ありがとうございます。お陰で気兼ねなく朝食の用意が出来ます」
「……辛いとは思うけど、これだけは伝えておこうと思って」
本当にありがたい。そして同時に腹が立つ。この苛立ちはなんなのだろう。僕は決してこの場でしてはいけない質問を口に出していた。
「あの……真琴さんと夕実さんは、人間なんですか?」
すると、真琴さんは俯いて、小声で答えた
「ごめんなさい」
「いいですよ。僕だって実感ないし。どうりでハードカバーにならないわけだ」
俯いていた真琴さんは顔を上げて、真っ直ぐに僕を見た。近づいたのが分からないほどの見事な所作で僕の前に立つ。
「平光の力で生かされているとはいえ、貴方達は確かに存在しているから。私達がいる限り確かに生きているんですよ」
「……そうですね」
僕が視線を反らすと、真琴さんは両手を袖から伸ばす。暖かい手が僕の冷たい頬を包む。無理やり視線がぶつかる。真琴さんの瞳は僅かに光り、揺れていた。
「貴方は美国進だけじゃない。諸先輩の生まれ変わりでもあるんだから」
真琴さんは僕を見ていないのだろう。きっと先輩の誰かを僕に見ているのだ。苛立ちの原因が、なんとなく分かった気がした。真琴さんは僕に微笑みながら、言い聞かせるように話しかけた。
「辛いとは思うけど、合格さえすれば、この世に存在できるんだから」
本人の歳とは似つかわしくない、無垢な笑顔に見えた。同時にその笑顔が僕にとっては重苦しい。
「実感無いって言ったじゃないですか」
「あっ……ごめんなさい」
「あんまり言われると余計に意識しますから、もう止めてください」
僕は手を振り払うと、台所へ歩いていった。真琴さんが追ってくることは無かった。
更新は1~2時間後……気力があればね!