表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/539

11/20 3:00

今回のコメント


ドライブ中さ。

やはり土曜日の夜はストレス発散タイム!

大声で歌ってます。

きっと外歩いている人には聞こえてます。

だけど田舎道だから誰もいない。いても声小さくするから。



***********************************



『だって美国先輩は君にそっくりなんだよ』


 ――そうか。思い至ってしまった。

 魂の落第、一年からやり直し、僕と高月先輩の魂だけが実体をもたない。

 つまりは……


「そう。貴方は美国進が落第して、ある意味、生まれ変わった魂なの」


 ちゃんと言って欲しくはなかった。


 初めて高月先輩と会った時、『君の事は知ってる……よく知ってるよ』と言った。

 なにより事あるごとに僕と美国は似ていると言う話を聞いた。


 嘘じゃなかったんだ。高月先輩は僕が美国先輩の生まれ変わり(のようなもの)だと知ってたんだ。


 そんな目で僕を見てたんだ。いつも僕を見る眼差しは、僕を見ていなかったんだ。

 考えてはいけない。そう告げていた。だけど、どんどん、黒くてどろりした思いの塊が侵食してくるんだ。


 初めから僕は高月先輩に『美国進の代わり』だと思われていたってことか?


「はい、おしまいっ!」


 甲高い音が室内に響く。僕は驚いて顔を上げた。正面には真琴さんの姿。手を叩いた後だった。手を合わせ拝むようにこちらを見ている姿があった。


「絶対、今良くないことを考えたでしょ」


 僕は反論できない。だけど、黒い気持ちに飲み込まれそうになった僕を引き戻してくれたのはありがたかった。


 真琴さんは合わせた手を机におき、僕に近づけた。眉を寄せて、心配そうな表情で優しく話しかけてくれる。


「ここも重要だからちゃんと聞いてね。さっき亜也さんが私に言ったこと覚えてる? 『私が美国先輩から同じ事を聞かされた時……やっぱりショックだったから』って言ったの」


 覚えてる。確かにそういった……僕はゆっくりと目を閉じる。ゆっくり深呼吸をした。

 僕は馬鹿だ。ようやく思い至る。またしても余裕がなくなって、自分の事しか考えられなくなっていた。高月先輩もまた誰かの……いや、御堂真理の生まれ変わりだったんだ。


『ごめんなさい。きっと建前だと思います。本当は拒否されるのが怖いんです』


 分かっていたんだ。僕が美国進の生まれ変わりだと知ったら、高月先輩を拒否するかもしれないって。どうせ代わりでしょ? っていう思いが、先輩を遠ざけるかもしれないって……


「気づいた?」


 真琴さんの言葉にやはり僕は黙って頷いた。


「お互いが、疑心暗鬼になって、心の奥では冷めた目線で見てしまう。その気持ちが日記帳に反映されるの。これが亜也さんの日記帳に起こっている現象」


 複雑な気持ちをすべて反映させて文章化する日記帳。隠している気持ちも表記される。黒い気持ちは『悲しかったこと』になってしまう。


「草弥君。日記世界で御堂真理に対する美国君の想いを感じたでしょ? そんな気持ちを抱えた美国君を亜也ちゃんがまっさらな気持ちで好きなれたと思う?」


 この言葉は確かに僕に突き刺さった。知ってしまった事実。あらわれた相手が好きだった人の生まれ変わり。でも別人。当の本人からすれば、知らない人の面影を背負わされている現状。好きな先輩がなにを言ったとしても『代わり』という気持ちが抜けない。


 正直、僕は明日高月先輩に会うのが怖い。


 たしか高月先輩は真琴さんの前で言った。


『美国先輩をあの時私が受け入れなかったから。気づくのが遅すぎたから。先輩なら合格する可能性があったのに』


 自分を責めてたんだ。美国が楽しい思いをしなかったのは、自分に取り去ることのできない心のしこりがあったからだって。





次の更新は1~2時間後(次の更新で今日は最後かな)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ