11/17 1:19
今回のコメント
ここ二日ぐらい寒い。
11月なんだから当たり前だけど。
皆さんも風邪引かないようにしてくださいね。
(こういうことを書く時はネタがない時)
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とはいえ、滝川先輩のお陰で室内の様子を観ることができた。
真琴さんと高月先輩は部屋の中央辺りで、向かい合って座っていた。和室なので二人とも正座から横へ足を崩して話をしている。
僕達から見ると高月先輩は背中しか見えない。とはいえ、解散するまでの背筋を伸ばした姿ではなく、少し肩を落とし、猫背気味に見えた。
「二人がいなかったら、平静でいられたかどうか……私、部長だから」
「亜也さんは一番年上だもんね」
真琴さんの優しい声に高月先輩は頷いた。やっぱり、無理してたんだ……という思いで僕は胸が少し苦しくなった。
「自分がしっかりなきゃって思えたんです。でも、勘違いして欲しくないのは、決して無理をしていたわけじゃないんです」
「分かるわ。二人が後押ししてくれたのよね」
背中越しでしか判断できないけど、先輩は手を胸に当てたようだ。
「はい。二人を励まそうと思ったら、力が沸いてきて、元気になれたんです」
迷惑をかけていた僕たちが力を? 信じられなかった。自分に余裕がなくて先輩を気遣う言葉だってかけてない。ただ、勇気付けられていただけなのに。
「二人に言っているようで、自分にも言い聞かせているところがありました、それ、きっと独りじゃできないことです」
正直、僕には分からない感覚だった。中学時代、先輩になった事はあるけど、帰宅部だったせいで、後輩ができたこともなかったし。誰かに言い聞かせることで、自分が落ち着くなんてことがあるのだろうか。
「それと……こんな空っぽの私なのに二人が私を頼ってくれて嬉しかった」
「そうね。草弥君と夕実は亜也さんを信頼してる。傍から見ても分かるから」
高月先輩は自分で言って恥ずかしかったのか、後ろ髪を何度か撫で付けて、誤魔化した。
先輩が自分の事を空っぽだと形容するとは思わなかった。美国の事になれば多少揺らぐことがあるけど、ほかの事に関しては自信満々に見えたから。
滝川先輩からは小さな舌打ちが何度も聞こえる。自分の不甲斐なさから自然に出ているのかもしれない。かくいう僕も自分を殴ってやりたい気分だった。
高月先輩の気持ちは分かった。きっと明日からはもっと上手く行く。僕達はどんどん一つになっていくはずだ。高月先輩を中心として。
しかし、高ぶる気持ちに冷や水を浴びせる一言が真琴さんから投げかけられた。
「でも、溜め込んでる思いはあるわよね?」
「えっ……」
高月先輩は言葉に詰まった。そしてすぐに俯いた。真琴さんは今以上に優しい声で先輩に尋ねた。
「だからここに来たんでしょ?」
「……はい」
先輩の返答に僕は緊張した。じんわりと手に汗をかいている。自然に歯を食いしばった。
今日はここまで。