11/11 2:55
今回のコメント
ここまでは今日中に書いておかないと、収まりが悪かったので、最後まで書きました。
輪転の誓いの秘密が少しずつ明らかになります。
***********************************
御堂真理側も美国が腕を引っ張っている。しかし、効き目はあまりない。逆に羽扇子を畳んで叩かれていた。
御堂真理はここまで必死になるほど追い詰められているのか?
そして美国は、ここまでされても止めたいのか……
彼の思いに関係なく、御堂真理は大声で叫んだ。
「言ってみなさい! どうせ、いつもの強がりでしょうけど!」
こんな挑発にあっさり乗ってしまい、滝川先輩はとうとう口にだしてしまった。
「私達だってな。『輪転の誓い』ぐらい使えるんだよっ!」
その瞬間、美国を振り払おうとして暴れていた御堂真理は動きを止めた。言葉に詰まりながらも呟く程度の小さな声でなんとか言葉を吐き出す。
「は……? 何言ってるの?」
滝川先輩は勝ち誇ったように、御堂真理を見つめ、口を歪ませた後、ゆっくと答えた。
「私達も日記部ってことだ」
「はぁ? そんなの嘘よ」
御堂真理は薄笑いを浮かべて、何とか強がっているようにも見えた。「ふん」と言いながら、御堂真理が腕を引っ張っていた美国の顔を見た。
「美国、この妄想馬鹿にはっきり言ってやって。日記部部員は私と貴方だけだって」
突然振られた美国は険しい顔して言葉に詰まったが、一つ咳払いすると、表情を元に戻した。
「その通りです。日記部部員は御堂先輩と僕――」
「嘘つかないで」
御堂真理は美国の襟首を掴んで少しねじり上げた。同時に羽扇子が地面に落ちる。
「じゃあ、なんでアイツ等が『輪転の誓い』を知ってるの? 説明しなさい!」
すると美国は黙り込んでしまった。それが十分な答えとなってしまい。御堂真理は襟を掴んでいた手を離した。離した手が僅かに震えている。
「じょ、冗談でしょ? じゃあ私達はもう……過去の人間なの?」
これもチョーカーの効き目だと思うのだが、言わなくてもいい一言を滝川先輩が付け加えてしまう。
「今頃気づいたか。お前等はただの日記の住人だ」
同時に御堂真理の瞳は大きく開かれ、両手で自分の肩を抱いた。足の力が抜けたのかしゃがみ込み、手を地面についた。目を瞑り、地面に向って声を上げる。
辺りは御堂真理の悲鳴に包まれた。一度だけではない。何度も何度も声を上げた。下手をすると気がふれたかのように思える。悲鳴か奇声なのか区別ができない。僕達に恐怖を与えるのには十分だった。
「真理さん、落ち着いて!」
美国はとっさに、しゃがんでいる御堂真理を抱きしめる。声を上げていた御堂真理が美国の肩口に顔をうずめ、しばらく声を上げていた。やがて声は収まってた。
涙声になりながら、顔を上げて、御堂真理と美国は見詰め合った。
「本当に私達はもう終わりなの?」
美国は答えずにそっと御堂真理の頭を撫でた。震える声で御堂真理は話を続けた。
「嫌だよ、嫌だよぉ……ねぇ、何が駄目だったの? わからないよ。ねえ、美国ぃ……」
「大丈夫だから、大丈夫だから」
御堂真理を美国が力強く抱きしめた。そのまま頭や背中をゆっくり撫で続けた。
僕達は異常な光景に動くことは出来ない。自分が日記の住人だと分かったことがそれほどまでにショックだというのか。僕には何もわかっていなかった。
美国は僕達へ顔を向けた。そして口を開く。
「真理さんは誰にも渡さない。たとえ日記の勝負に負けたとしても」
「美国、お前……」
「帰ってくれないか。今日は二人の時間をこれ以上汚されたくないんだ」
やはり返す言葉ない。僕は進むことも引くことも出来ない。
「帰るよ。草弥君」
こんな時でも手を引っ張ってくれるのは高月先輩だった。先輩の顔を一瞬覗き見したけど、感情が感じられない淡々とした表情だった。
今日はここまで!