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11/2 0:55

今回のコメント


第三号は19冊完成。

1冊は失敗したの……


あとは京都で売れた創刊号の増刷と無料で配るペーパーの印刷だ。


あれ?

気づいたら何だこれは?


紙に囲まれている……だと?



***********************************



 二人をするりと抜けて、美国が僕の前で立ち止まった。


「皆さん、お疲れさまです! 選挙活動大変ですねぇ~」

「簡単に話しかけてくるなよ」

「え~っ、お互い握手した中なのに」


 もう仲間気取りらしい。調子の良い奴だ。僕がため息混じりに応じると、後ろにいたか高月先輩がこちらへ耳打ちをした。


「じゃあ、私は夕実のところへ……」


 すると、美国は高月先輩へ視線を移し、声をかけた。


「あっ、高月さんでしたっけ? こんにちわ~」

「……ええ。こんにちは」


 一瞬間があったものの高月先輩は俯かず、それどころかニッコリ笑った。それはどこかさっきのチラシ配りの笑顔に似ていた。裏に一枚二枚ある表情だ。


「それにしても、改めて高月さんを見ると、お綺麗ですね」


 高月先輩は瞳を大きく開け、驚いた表情を見せる。美国、コイツどういうつもりだ。僕が睨みつけると、美国はこちらに目配せした。


「高月さんに推薦されてる草弥君は幸せ者ですね」


 美国の言葉に高月先輩はしばらく答えられずにいた。僕は心配になって二人の間に割って入ろうとしたけど、高月先輩は手で制した。先輩の表情を伺うと、笑顔になっていた。さっきの張り付いたような笑顔だ。


「ありがとう。美国君。だけど草弥君は私よりも優秀だから推薦したの。どういうつもりか知らないけど、揺さぶりは無用です」

「あっちゃ~。バレてたか~。さすが、高月さん。これから楽しみです」

「こちらも楽しみですよ。それじゃあ、私はあの二人を止めに行きますね」


 そう言い残すと、高月先輩は滝川先輩と御堂真理の仲裁に向った。


「ふむ……一筋縄ではいかないな」

「お前はどういうつもりだよ!」

「え? 二人が上手く行くように援護を――」

「しなくていい!」


 「お前にされると余計にややこしくなる!」と言いかけて僕は口を閉じた。なんだか負けたような気持ちになったからだ。


 滝川先輩と御堂真理は高月先輩が仲裁したことでなんとか納まったようだ。両陣営はそれぞれの方向へ進んでいく。



 僕は高月先輩が無理していないか、心配でしばらく見つめてしまう。視線に気づいた高月先輩が僕へ振り向いた。


「大丈夫。向こうも冗談でくるなら、対応できるから」といって僕に笑いかけた。


 やはり、綺麗だけど作り物のような表情だった。僕にもその表情を向けるんだな……

 高月先輩の態度を見て感じた違和感がだんだんハッキリとした。我ままかもしれないけど、やっぱり高月先輩には自然体でいて欲しい。僕は本当に笑いたい時に笑って欲しいんだ。


 さっき先輩は僕に笑いかけてくれた。でも僕は嬉しくなかった。心が段々整理されていく。

 僕は高月先輩に諦めて欲しくないんだ。諦めて、分かったようなフリをして欲しくないんだ。

 勝手だろ。あぁ、勝手だとも。

 だけど。高月先輩は先輩なんだ。僕の前を歩いていて欲しい。


『言わなくても分かるよ。俺と同じぐらいお前があの部長の事を大切に思ってるって。だって、俺たち同じ日記部の後輩だろ?』


 そうだな。美国の言うとおりだ。僕達は日記部の後輩なんだ。


 そのためにしなければいけない方法は一つしかなかった。僕は立ち止まる。すると先輩たちは振り向いた。


「すいません僕忘れ物したみたいなのでちょっと購買部に戻ります」


 先輩たちは呆れた表情を見せ、先に行くと歩いていった。僕は自分を鼓舞するように気合を入れて、渡り廊下を戻った。




製本するので今日はここまで!

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