10/28 7:44
今回のコメント
今日の一句
書き終えた
原稿の前で
一眠り
リープです。
元々後一回の予定でしたが、意識が完全シャットダウンしてしまいました。
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「だから言ったでしょ。高月先輩は悪魔だって」
「本当の悪魔は滝川先輩だぞ」
「はぁ、甲斐斗。本当の目を失ってしまったか」
「僕は元々心眼がない」
沙和とやり取りをしている間に、先輩達と百メートルぐらい離れてしまった。僕はちらりと道の先を横目で見る。それを沙和は見逃していたなかった。
「先輩達が気になる?」
「いや、別に……」
「本当に先輩達と関わるのは止めた方がいいって。昨日も言ったけど高月先輩と一緒にいたら甲斐斗が傷付くって」
「お前なぁ、まだそんな――」
僕が言いかけると、沙和は言葉を被せた。
「今日だってたんこぶ作ってるじゃん」
「これは滝川先輩が……」
「この前だって、ススだらけだったじゃん」
「あれは高月先輩は関係ない」
畳み掛けるようなやり取りに、だんだん僕の中でも頭で整理できないまま、言い返している。次第にヒートアップする自分を抑えられなかった。
それは沙和も同じようで、ついに大声を上げた。
「それだけじゃない! 小さい擦り傷とかいっぱいしてるでしょ、隠してたってわかるんだから! それ全部高月先輩が原因なんでしょ!」
「いい加減にしろ! 事情も知らないくせに!」
僕が言った瞬間、沙和は言葉を詰まらせたように黙り込む。急に周りの生活音が耳に入ってきた。少しだけ冷静になった僕は失言だったと後悔した。視線を逸らした沙和は俯いた。
「じゃあ、教えてよ」
今度は僕が黙る番だった。俯いた沙和の顔からは引きつった口もとが見え隠れする。
「どうせ教えてくれないんでしょ。心配させるような言動するくせに……そりゃ、勝手に心配してるって言われるかもしれないけどさ。大切な人が傷付いているのに黙ってるなんてできないよ」
「すまん」
「『事情も知らないくせに』なんて言われたら、もう話は終わりだよ。扉を閉めたのはそっちじゃん……なんで教えてくれないの? 私じゃあ頼りない?」
「そいう問題じゃあ……」
「私にはそういう問題なの」
僕だってこれが他愛のない、人間関係のもつれだとかなら、愚痴るさ。でも、違うんだ。ちゃんと説明したって、どうせ「ふざけないで」とか言われるのがオチだ。それに説明すれば、高月先輩の個人的な話にも言及しなければならなくなる。やっぱり無理だ。
僕はなるべく冷静を保つ事を心がけながら、沙和に伝えた。
「駄目だ。これは日記部の問題だから」
一瞬沙和の肩が揺れたような気がする。
「私は部外者だっていうの? もう、昔みたいに何でも話してくれないんだね」
「ごめん」
「謝るぐらいなら、『駄目だ』なんていわないでよ」
僕はそれ以上何もいえなかった。言ってしまえば、沙和を引き止めたことになる。沙和はゆらゆらと歩きはじめ、僕の前を通り過ぎていった。
んじゃあ夜にでも。