10/27 1:51
今回のコメント
ちょっとずつシリアスに振れていきます。
選挙編は結構これからどんどん決断を迫られる場面が多くなるかもしれません。(予想)
書いてて途中で変わるかもしれないですし。
こればっかりは勢いで書いているのでわかりませ~ん!
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「以前、君は合格基準を聞いたよね。唯一ある合格基準は……」
どんどん心音が大きくなってくる。しゃべってもないのに喉が渇いてきた。ゆっくりと唇を舌で拭う。その後、自然に歯を食いしばった。
「表裏どちらかの日記が半分超えた段階で終了っていうのが基準だね」
「つまりそれって……」
「『楽しかったこと』が半分のページを超えたら合格。そうでなければ不合格」
なんだか、頭がしびれたように思考できなくなる。日記にそんな秘密があったなんて。明確な判断基準があったんだ。しかもそれが、自分の心情を自動書記した日記の『楽しかったことが』過半数を超えた時点だなんて……
そして不意に訪れる一つの考え――じゃあ今の状況は、どうなんだ!
僕は日記をめくり始めた。表、つまり『楽しかったこと』のページからめくり始めた。しかし、焦って指が何度ももつれた。ページが上手くめくれない。くそっ、焦るな、焦るな。きっと先輩は楽しい生活を送っているさ。期待は膨らんだ。
でも……『楽しかったこと』は、たった数ページで日記は途切れていた。僕はゆっくりと顔を上げようとするけど、身体が動かない。今、高月先輩の顔を見る事はできなかった。一言で済ませるなら、情けない、だった。念のため裏。『悲しかったこと』の日記をめくる。すると『楽しかったこと』の倍以上のページ数が割かれてあった。
何が書いてあるか分からない。でも、記載の量を見れば明らかに高月先輩の高校生活は、悲しみに覆われていた。
「悲観することないよ」
高月先輩は淡々とした口調で答える。感情がまるでわからない。俯いた自分の顔を上げることもできない。先輩はこれを毎日見てきたんだ。試験が終わるごとに『悲しかったこと』のページが埋まる瞬間を。
僕は一体何をしてきたんだ。先輩に助けられてきただけじゃないか。足手まといになって、迷惑をかけて、偉そうな発言して……でも先輩の悲しみは晴れないままで。僕は握った拳にこれでもかと力を入れる。力いっぱい目を瞑り、悲しさに耐えようとする。本当に悲しいのは先輩のはずなのに。僕は一瞬肩の力が抜けた。
「顔を上げなさい、草弥甲斐斗!」
よく通る力強い声。今日も何度か助けられた優しくもある声。僕の肩に再び力が込められた。
「大切なのは今からでしょ。めそめそしない!」
なんで僕が慰められてるんだよ。先輩を守るって言ったじゃないか。しっかりしろっ! 僕は精一杯自分を鼓舞した。だけど心の動揺は抑えられなかった。
高月先輩はいつの間にか、こっちに身を乗り出して目の前にいた。僕の固く握られた拳にそっと先輩の手が重ねられる。
「確かに状況はよくないけど。君が来てくれてからの成績は……誇っても良いよ。『僕のお陰で挽回できたんでしょ』って」
僕が少し顔を上げると、数十センチに迫った高月先輩の顔があった。瞳がキラキラと輝いていて、力強さを感じた。先輩は全然諦めていない。外者の僕が当事者の先輩より悲観してどうするんだ。僕は拳をさらに強く握る。
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