10/15 6:26 コトダマ執筆編⑦
今回のコメント
・やばい、このシーンかいてて、二回ほど気絶してしまった。
幸い一分ぐらいしか過ぎてなかったけど。
せめてミッドポイントまで書きたかったけど……無念。
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次の日。真人は人生で初めての土下座をしていた。固い床の感触を脛に感じる。さらに震えながら頭を下げた。自分の鼻息が床に跳ね返ってくる。
「で? 『紙の料理』でそのレストランのミックスフライとハンバーグを作れと? あんなに俺を罵倒したのにか? 偽物だと断じた『紙の料理』にか?」
鼻をほじくりながら、真人の話を聞いていたのは小翼満男だった。さなえでも料理を味わえる方法として「紙の料理」を思い出したのだ。味は再現できて、紙は唾液で解けてしまう。温感や触感は目を瞑るとして、さなえにとっては限りなく本物に近い偽物だった。
「本島さん。アナタ、真剣に土下座したことないでしょう。おでこは床につけるものですよ」
真人は歯を食いしばった。目を固く瞑り、おでこを床につけた。冷たくて固い感触。頭の中では必死に妻の姿を思い出していた。今、真人の誇りを支えているのは妻の笑顔だった。
満男は片目を閉じながら、真人を見下ろす。頭の中ではどのような算段で真人を利用するかを考えていた。
「いいでしょう。奥さんのために作りましょう」
真人が顔を上げると、満男が鼻で笑い「ただし」と言って指を差した。
「条件があある。まず、あの料理番組で十週勝ち抜けで一千万円取らせもらう。後は各メディアから出演オファーが来た時はかならず『紙の料理』の宣伝をすること。これを破った時は、奥さん用の紙の料理は作らないし、すべて暴露する」
満男は顎をなでながら、無機質な視線を向け捕食動物のように舌なめずりをした。
ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……ね、寝る……