10/15 1:54 コトダマ執筆編③
今回のコメント
・このレストランにはモデルがあります。
老舗のレストランで、出前もやってました。
本社勤務だったとき、22時以降まで残業した場合は、このレストランの出前メニューを渡されて頼んだものでした。
量も多くて、味も会社で食べたせいなのか、美味しかったですね。
なんか非日常みたいで。
残業ばかりして、ここの出前ばかり食べて10キロ太ったなんて話を聞いたことがあります。
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本島真人は料理評論家ではない。本業はカメラマンである。
最初は料理番組にゲスト審査員で登場した時の毒舌が評判よく、そのままレギュラー審査員の座につき、番組を代表する人物にまで成長した。
彼が人気を博した理由は分かりやすさだった。『本物かどうか』それが彼の価値基準だった。カメラマンの仕事で常に自分が『本物』だと思う被写体だけを取り続け、二十年が経つ。長年の仕事が評価を受けた実績があったため、審美眼には定評があった。
今や本業をしのぐ量で料理関係の仕事を行っている。年内のスケジュールは埋まっていた。本島をテレビで見ない日はないと言われ、雑誌・新聞各メディアにも彼の記事が載っている。
本人も忙しいことによる充実感と『本物』という自分の考えが世間に受けたことに満足感を覚えている。人生の充実期と言えた。
そんな忙しいはずの彼がテレビ局を出てタクシーに乗り込み向かった場所は、とあるレストランだった。目的地に着くと、入り口付近で女性が立っていた。真人はタクシーを降りると女性に近づきハグした。
女性は彼の妻である本島さなえである。二人はレストランに入ると予約した席に座った。
決して一流店の雰囲気はない。広くはない店内。テーブル席が四つほど。少し古めの椅子。刺しゅうが入ったややくすんだ白いテーブルクロスの机。昔ながらの洋食店だった。
メニューを見ずに真人はハンバーグステーキセット、さなえはミックスフライセットを頼んだ。背広姿だった真人はネクタイを緩めて一息ついた。それをみてさなえは微笑んだ。
「お疲れ様。忙しい中、覚えていてくれて嬉しい」
真人はさなえの言葉を聞いて、胸の中がじんわりと暖かくなるような感覚を覚えた。
ぐぬぬぬぬぬぬ……1~2時間後更新