10/12 22:46
今回のコメント
今日という日の夕食
・ごはん
・豚バラと里芋の煮たもの
・ナスとベーコンの炒め物
・自分で買ってきた、ケーキ!
以上
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高月先輩は僕の前に立つと、御堂真理と対峙した。羽扇子を再び揺らめかすと、顎をやや上げ、高月先輩を見下ろすような目線で話を始めた。
「あら? アナタは昨日ずっと机で寝てた人じゃないの」
「その節はどうも。ウチの後輩がお世話になりました」
軽く頭を下げる高月先輩。御堂真理が羽扇子の動きを止めた、扇子越しの瞳は大きく開いている。なんだ拍子抜けしている様に見えた。
「別にお世話せいたわけじゃないけど……で? この二人に代わって、アナタ方陣営の方針を発表してくれるのかしら?」
「いえ。最終的な意見のすり合わせができていないので、ここでは発表できません」
高月先輩は「なに当たり前の事を聞いているの?」と言わんばかりの態度だ。見方によっては開き直りにも見える。しかし、御堂真理の低くて鋭い声が逃げる事を許さない。
「なに? 負けを認めるの?」
「勝ち負けではないでしょう。それとも公衆の面前で他の候補を貶めるのが貴方達のやり方ですか?」
御堂真理の反撃にも全くひるむ様子がない。昨日あれほど俯いていた人物とは思えないほどだ。
僕よりも少し小さいけど、頼りがいのある背中をみて、すっかり安心してしまう。御堂真理も扇子越しの瞳を鋭く細め、せわしなく羽扇子を動かす。
「――っ。そ、そっちが仕掛けてきたんでしょうが」
「それについては謝罪します」
また高月先輩は軽く頭を下げた。外見上は責める御堂、素直に謝る高月に見える。だけど、実際は高月先輩の言動って結構攻めてる気がする。御堂真理も分かっているのか、滝川先輩のように力押しできない。
「ちょ、ちょっと簡単に頭を下げないでよ。アナタにプライドはないの?」
「自分が間違っていても認めないというプライドですか?」
すると御堂真理は完全に黙り込んでしまった。羽扇子も動きを止め、じっと高月先輩を睨みつけている。数秒後、御堂真理はようやく言葉をかけた。
「あなた。名前は?」
「高月亜也と言います」
「……ふうん。まあ、他の立候補の推薦人でもあるし、名前ぐらいは覚えてあげる」
「結構ですよ。そのうち嫌でも覚えると思いますから」
高月先輩はここで初めて、冷笑とも言うべき、歪んだ笑みを浮かべた。それを見た御堂真理の眉間に力が入る。
「言ってくれるじゃない。それじゃあ――」
御堂真理が話を続けようとした瞬間、校舎から予鈴が鳴り響いた。
「時間切れね。まあ良いわ。選挙期間中は毎日顔をあわせるでしょうから。美国、いくわよ」
「了解です」
まず第一ラウンドは、なんとか引き分けに持ち込んだと思う。高月先輩のお陰で。
とりあえず今日はここまで!