10/8 4:01
今回のコメント
だいぶラブコメらしくなってきたなぁ。
別に能力ものでも良かったのだけれど、この形が一番しっくりくるなぁ。
ずっとだらだら続けたいぐらい。(駄目だろ)
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「空、綺麗だね」
高月先輩は独り言のように呟いた。
僕も独り言のように「綺麗ですね」と返事をした。
街の明かりで真っ黒とはいえないものの、深く青い空。月は細く、自らの存在を控えめにして、星に主役を譲ったようだ。数え切れないほどの星が各々の輝きを競っている。
それは楽しい時間を過ごそうと頑張っている人々のように見えた。僕はきっとほとんど明かりを発しない暗い星だろうけど。
「私、空なんか見上げないから、気づかなかった」
「先輩はいつも下を向いて日記ばかり見てるからですよ」
思わず口をついて出てしまった。今の状況では嫌味にしか聞こえないかもしれない。
案の定、高月先輩は黙ったまま答えない。僕は心の中で頭を抱えた。
「……そうかも。下向いてばかりだったね」
驚いて、空から高月先輩へ視線を移す。先輩は空を見上げたままだけど、少し笑っていた。僕は先輩へ訊かずにはいられなくなった。
「先輩」
「ん?」
「元気でしたか?」
数時間前まで一緒だったはず。でも、気分的には美国進の日記以来、会っていない様な気持ちだった。先輩は一瞬、横目で僕を見たけど、すぐに空を見上げた。
「ちょっと元気なかったかも。今も少しね……でも大丈夫。負けてられないから」
久しぶりに先輩とまともな会話をした気がする。それだけで嬉しくて、合宿を企画した滝川先輩に感謝した。
「それにしても、滝川先輩遅いですね」
「もうすぐ来るはずだけど……ほら、来たよ」
僕が携帯電話で時間を確認しようとした時、車のエンジン音が近づいてくるのが分かった。ライトが僕らを照らし、ゆっくりとスピードを落として横付けされる。黒塗りのリムジンが。
車の窓がゆっくりと開くと、滝川先輩が足を組んで座っていた。
「さぁ、乗れよ。とっとと行くぞ」
葉巻くわえてワイングラスを持ってても変じゃない雰囲気をかもし出していた。僕は小声で高月先輩に尋ねた。
「滝川先輩の家って金持ちなんですか?」
「ええ。油断しないでね」
高月先輩、意味が分かりません。
僕が突然の出来事に右往左往していると、車から燕尾服を着た初老の男性が降りてきて、車のドアを開いた。
「さぁ、どうぞ」
低音ボイスが心地良い。執事って本当にいるんですね。僕は男性にぺこぺこ頭を下げながら、車に乗り込んだ。
今日はここまで!