入隊試験2試合目
エリク様が腕を振り落した瞬間、王様がまるで鬼の様な形相で両手に浮かべている炎を私に向けて投げてきた。
その炎に命中するように氷の槍をすばやく投げる。すると、氷の槍と炎がぶつかり水蒸気が発生した。そして同時に消滅する。
一息つく間もなく今度は風の刃が普通では避け切れない量で襲いかかってくる。咄嗟に、身を屈めながら地面に手をついて壁を作る。
壁は私を隠すほどに高くなり、風の刃を全て受け切った。周りの地面が所々鋭利に切られている。
王様は本気で殺しに来てる。冷や汗が止まらない。だけど、合格するためにはできるだけやるしかない。
どうやって勝ちを取りに行こうか。考え出そうとした瞬間、後ろの壁が崩れた。
驚いて後ろを振り返れば目の前に拳があって、瞬間思いっきり顔面を殴られた。
「ぅっ!!」
もう何が何やら分からなくなった。壁があった場所から1mほど飛ばされただろうか。殴られた衝撃で頭の中がグラグラする。目の前に火花が散っている。
痛みで地面に両手をついて何度も咳き込んだ。周りに人が集まってきたが、その人達の声は全く聞こえない。
殴られてズキズキと痛む鼻先に触れてみると、ぬるっと生温かい感触がした。見れば無様にも鼻血が出ている。ポタポタと地面に垂れる血を見て、なんだか可笑しいと思った。笑えた。
まだふらつく体を無理やり立たせて自分で痛い箇所に回復魔法をかける。痛みも落ち着いてきてようやく周りに誰が居るのかが理解できた。声も聞こえる。
何度も私の名前を呼んで心配してくれるエリミアやシュラやクオ。心配そうに私を見る兵士さん達も何人かいた。
「アシュリード、大丈夫ですか!痛い所は他に無いですか!?」
「うわぁああああああん」「マスター、大丈夫なのか!?」
「平気平気。ちょっと油断しちゃっただけだから。まさか殴られるとは思わなくて…」
わざと明るい声で笑って見せれば数人は元の場所へと戻っていった。だけど、私が女だという事を知っている人達は何度も心配してくれた。大声で泣いているシュラは、後日お菓子をシュラの分だけ多めにしてあげると言ったら泣き止んだ。
クオは眉間に皺を寄せながら私の鼻血を拭ってくれた。
クオに苦笑いを浮かべながらお礼を言って、そういえば王様はどこに?と壁のあった場所を見れば、王様とエリク様が何か言い合っている。言い合っているといっても、エリク様が一方的に王様に意見を言っているだけのようだ。
とりあえず近づいてみよう。
「父上、試験に私怨を持ち込まないでくださいと言いましたよね」
「うっ」
「例え母上が傷を負ってもすぐに治療できるように、治癒の魔法が使える魔術師は控えさせていたのです。それに試験中、彼は母上を傷つけようとするそぶりは全くありませんでした。なのに何故殴ったのですか」
「えっと…その…」
「父上、試験の内容は魔法のみ使用可能という物でした。それは父上が僕に提案したのですよ?父上自身が決めた事を破ってしまってはどうしようもないではありませんか」
「……すまん」
「僕に言っても意味はありません。いい加減、仕事と私生活を区別してください。母上に嫌われても僕は知りませんからね?」
あっ、王様が撃沈した。地面にノの字描いてる。よほど王妃様に嫌われるのが嫌だと見えた。
ため息をつきながら腕を組んでいるエリク様は、私に気が付くとニコリと微笑んだ。
そしていきなり頭を下げた。周りの人々がどよめく。私もいきなりで思わず「えっ?」と声を出してしまった。
「父上が失礼いたしました。私怨を持ち込むなと試験の前に何度も言ったんですが……」
「そんなっ!私は別に気にしていませんから、頭を上げてください。いきなりで驚いただけですし、傷はもう治しましたから。ほら」
私がそう言うと頭を上げて顔をじっと見てくる。私は微笑んで何度も「大丈夫ですから」と言った。
今ここで納得させておかないと後々何か起こりそうな気がするんだ。
数分ほど無言で見つめあっていると、ようやくエリク様は理解してくれたのか呆れた様にため息をついた。
「貴方がそう言うなら…ですが、第二試験は中止にします」
「えっ!?」
「このまま続行しても、また父上は私怨を持ち込みます。なので第二試験は中止にし、合格という扱いします」
いや、合格にしてくれるのは嬉しいんですが何だか納得できない。周りからも結構ブーイングが起きている。
そのブーイングはいつの間にか後ろにいたミケルさんとリュナミスの一睨みで止んだけど。
私としてはこのまま第三試験に行ってもいいけど、中途半端で終わったからまだ王様とやりたい気分ではある。
それにこのまま次にいっても周りは納得しないと思う。
「私怨を持ち込んでもかまわないので、中止にはしないでください」
そう言うと、エリク様は一瞬呆けた表情になり王様も同じ様に呆けた表情のまま私を見る。
こう見てみるとやっぱり親子だからだろうか、顔立ちが似ている。特に目と口元。
エリク様はお父さん似でアリアちゃんはお母さん似なんだね、きっと。
「合格したも同然なんですよ?何故それを自ら放棄しようとするのですか」
「放棄する気はないです。ただ、このまま合格になっても納得いかないだけなんです。何だかズルした様な感じがして、嫌なんです」
「ですが……」
言葉を濁すエリク様に、私はニコリと微笑む。これはほぼ私の我が儘。
『やられたら二倍でも三倍にしてでもやり返せ』
それが親友から教わった事。さすがに元の世界の私では勇気がなくてそんな事出来なかったけど、今の私は女ではない。ネットゲームの中で私が使っていた男性の魔術師『アシュリード』なんだ。
『ズルなんてしない。自分の力で、皆と同じ場所に立つ』
それがアシュリードとしての私の信念だ。この世界はゲームではないけど、信念だけは突き通す。親友の教えは利用させてもらおう。
「このままだと私の信念に反するんです。なので続けさせてください。やられたままだという事も気に食わないんですよ」
最後に小さく「……男ならこの気持ちわかってくださいますよね」と言うと、エリク様は一瞬呆気にとられた表情を浮かべる。そして顔を背けて笑い出した。
まさか笑われるとは思わなくて、ポカンと口を大きく開いて驚いた。
十分笑ったのか目に涙を溜めながら私を見たエリク様は頷く。
「貴方の意見認めましょう。父上もそれでいいですね」
「うむ、かまわない。そなたとの試合は面白そうだしな、本気で楽しむことにしよう!」
そう言って豪快に笑う王様の頭を王妃様が平手で叩いた。思わず王妃様に向かって親指を立てて「グッジョブ」と言いたかったけど、そっと心の中で呟く。
ため息をついた呆れ顔の王妃様を見て王様は涙目だけど、さすがにフォローはしない。
エリク様にお礼を言って、試合の前に王妃様にお礼と謝罪をすると王妃様は優しく微笑んだ。
「私も精進が足りなかったのよ。こちらこそごめんなさいね、夫が馬鹿な事をしてしまって。いつも私が関わると暴走しがちなのよ」
それは試合が始まる前から何となく気づいてました。というか、あんなに黒いオーラを背景にすごい顔で睨まれたら誰でも気づきます。
気づかないのはものすごく鈍い人か、空気の読めない人ぐらいだろう。
「でも、それだけ王妃様の事を愛しているんですよ。異常すぎる気もしなくはないですが……」
「ふふふっそうね、他の人から見たら異常だと思うでしょう。嫌ではないのか、と臣下に聞かれたこともあるのよ」
「でもね……」と言いながら、エリク様と話をしている王様を見る王妃様の表情は、柔らかくとても愛しそうに微笑んでいる。
まるで子を見る親の目の様な、恋人を見るような、とても大切なものを見るその表情に、思わず見惚れる。
「私も同じくらいに夫の事を愛しているの。だから嫌いになんてなれないのよ」
断言するようにそう言って私に微笑んだ王妃様の顔は、幸せそのものだった。
私にはその幸せそうな顔が眩しく見えて、羨ましい。私は幸せにはなってはいけないから。
王様に言った通り、アシュリードとして女性と結婚する気もないし零香として男性と結婚する気もない。
でも、王妃様のその顔を見て思わず小さく「羨ましい」と呟いていた。
ハッとなってすぐに口を閉じる。王妃様は首を傾げているだけで、どうやら今さっきの言葉は聞いてはいなかったようだ。
その事実にホッと胸を撫で下ろす。何とか誤魔化せそうだ。
「何でもありません。でも、王様が羨ましいですね。こんな素敵な人を奥さんに貰うなんて、男として最高ではありませんか」
「あらあら、嬉しいことを言ってくれますわね」
そう言ってくすくすと笑う姿は、アリアちゃんとそっくりだった。うん、やっぱり親子だ。
親子揃って癒されるなぁと考えた瞬間、強い力で肩を掴まれる。驚いて後ろを振り返ると、試合が始まる前と同じ顔の王様が立っていた。
やばい、また地雷に足を突っ込んでしまったようだ。肩に指が食い込んで痛い。
「これから試合だ。最初の場所に行け、すぐ行け、さっさと行け」
「はいぃっ!」
慌てて最初私が立っていた場所まで走って戻ると、反対側に王様が立つ。その肩にフェレットの様な生き物が巻き付いている。
今さっきは居なかったはずだ。ペットかなと思っていると、エリク様がこちらに近づいてきた。
「今回は特別に契約した精霊を補助に付けてもいいそうです。貴方が精霊と契約していると話したら、父上が提案してきました」
「あっ、呼んでもいいんですね?じゃあ二人とも呼びます」
「それは待ってくださいっ。父上と契約しているのは上級精霊ですが始祖精霊には勝てませんから、せめて一人だけにしてください」
エリク様にそう言われて、私は少し悩んだ後シュラを呼んだ。エリミアを安心して任せるにはシュラ一人では役不足だと思ったのだ。クオなら大丈夫だろう。
シュラの名前を呼べば、すぐに走って飛んできた。抱き着いてきたシュラの頭を撫でて呼んだ理由を話すと、シュラの目が輝く。
嬉しそうに鼻歌まで歌いだしたシュラに、私は苦笑いしか浮かばなかった。
「おーい始めるぞ!…む、あの時の子供か?精霊は呼ばないのか」
「いえ、この子がその精霊です。ついでに言いますと、そこにいるのも私と契約した精霊です」
クオを指させば、王様は目を見開いて驚いた表情を浮かべた。クオの周りに立っていた人も驚いている。そこまで驚くことなのだろうか。
王様は何か考えているご様子。考えながらも何か小さく呟きながら掌に炎を纏わせている。肩に巻き付いていたフェレットがギラリとこちらを睨んでふわりと浮かび上がる。
「そうか、人型の精霊を二体…うむ、了解した。さぁ、始めようではないか!」
そう言い放った瞬間、フェレットの口と王様の手から炎の球が数十個飛んできた。
ちょっ不意打ちですか!?と思いながら、咄嗟に掌を前に出し叫ぶように唱える。
「アイスウォール!!」
炎が私達に当たる寸前に目の前に氷の分厚い壁が現れ、炎を遮る。表面が溶かされてはいるが、持ちこたえそうではある。だが、横からフェレットが炎を噴いてきた。
咄嗟にシュラを抱え後ろに下がるけど、炎がローブを掠り、徐々に下から燃え上がってくる。
慌ててローブを掴んでフェレットに投げつけた。焼け死ぬのは勘弁して欲しい。ただ、この姿を見た王様は驚いているようだ。
何故か女性の兵士達から歓声が上がっているのが不思議でならない。
「そなた……その髪の色も不思議だが、女なのか男なのか分からぬな。どちらなのだ?」
「男です。身長が他の人より低いし童顔なのでよく間違われますが」
結局こうなったかとため息をつきながら、フェレットに向けて水の球を放つ。
ローブに絡まって動きが止まっていたフェレットはすぐに対応できず、ピギャッという声と共にびしょ濡れになった。
シュラは隙を見逃さず、フェレットの尻尾を掴むと満面の笑みで力強く振り回して地面に叩き落とした。
地面にめり込んで気を失ったんだろう、パタッと倒れたフェレットに向かって合掌する。
後で回復してあげよう。
敵が一体減り、好機という事でこちら側も攻撃に移ることにしよう。
「シュラ、この氷の壁割れる?出来れば壁の欠片を怪我を負わせないように王様に投げてほしいんだけど」
シュラは元気よく頷いて、軽く腕を振り回して氷の壁を殴った。見た目は到底割れない氷の壁が、殴った個所から縦に裂けた。その半分をシュラは「よいしょっ」と軽く持ち上げ、王様に向けて勢いよく投げつける。
「あったれ~」
「おわっ!?」
たぶん王様に当たったら即死だろうという速さで、氷の壁が遠くの樹をなぎ倒し、すさまじい音と共に地面に落ちた。
さすがにこれには周りの方々もビックリ。正直言うと私もビックリした。
投げた本人は褒めてとばかりに私の周りをぐるぐると走り回ってるけど、さすがにこれは予想してなかった。
とりあえず、もう一発追加と行きましょうか。
「シュラ、今度は細かく砕いて王様に投げて」
「あい!ほいっと、とりゃ~」
「ちょっ、と待って、よ!とっ!?」
気の抜ける掛け声と共にどんどん投げ込まれていく氷の塊を、王様は器用に避けたり炎で溶かしたりしている。
避けるたびにこちらを睨んできているんだけど…。すいません、攻撃を与える隙は極力失くしたいので。
こちらはあまり消耗せず、相手の体力が削れるのを待つ。そして魔法を使った接近戦を行ってみようと思っているのだ。
それなら勝ち目はある。たぶん。横目でフェレットが起き上がってこないか見ていると、案の定起き上がってきた。
怒っているようだ。こちらは私で対処する事にしよう。
フェレットの方へ向き直ると私が敵だと認識したのだろう、巨大な炎の球を連続で飛ばしてきた。
巨大だからこそ避けやすい。小さく速度増加の魔法を唱えれば簡単に避けられた。
相手が次の攻撃に移る前に動きを止めておこう。私は自分に言い聞かせるような小さな声で影の中の存在を呼ぶ。
「クロナ、合図したらあの精霊の動きをちょっと止めて。その後にクロフ、拘束して」
『やり方はどうでもいいわよね。了解したわ~』
『ボクも自由にやらせてもらうよー』
その返事を聞いて、相手がこちらに向けて炎を噴こうと頭を上に向けた瞬間、指を鳴らした。
音を合図に影から飛び出したクロナ。その後にクロフが続く形で精霊に向かって飛んでいく。
いきなり現れた存在に驚いたフェレットは一瞬体が止まるが、すぐさま迎撃しようと炎を噴く。
だけど、それを軽く避けクロナが体全体で尻尾を掴んで地面に落とす。それをすぐさまクロフが地面に縫い付けるように拘束した。
逃れようと暴れているようだが、口も縛り上げられ四本の足に胴体も地面に縫い付けられた状態では何もできない。
これでフェレットからの攻撃を無力化したも同然。それに指を鳴らしてクロナとクロフが出てきたんだから、多くの人は魔法と勘違いするだろう。
ちらっとエリク様やリュナミスの方を見ると、エリク様は苦笑いを浮かべリュナミスは顔を手で隠しながらため息をついていた。……ちょっと卑怯だったかな?
「あしゅりーど~こおりなくなったぁ」
シュラの方へ顔を向けると、疲れ果てて肩で息をしている王様と玩具が無くなってさびしそうな顔で私を見るシュラの姿があった。
これは好機。あれを試す時が来た!ちょっとできるかどうか試したかったんだよね。シュラに契約の指輪を通じてゴーレムの姿になれるかと聞いてみる。
すると、満面の笑みで縦に頷いた。どうやら好きなタイミングでなれるらしい。
「よしっ。時間はどれくらい必要?」
「50びょうぐらいあればいけるよ」
「分かった。そんじゃま…時間稼ぎと行きましょうかっ!」
その声と共に王様に向けて連続で風の刃を投げつける。そしてその刃と同じ速度で走り寄り、拳に雷を纏わせ殴りかかる。
拳は避けられたが、風の刃のうち一つが王様の右腕に当たる。風の刃は服を切り裂き、右腕に傷跡を残した。血が傷口から溢れている。少し深く切れたのかもしれない。
王妃様の悲鳴が聞こえたけど、私はそこから追撃に入る。
氷・炎・雷・風の順番で球を作り、一斉に王様に向けて投げつける。それを避けられることは想定内だ。
氷は王様の炎に溶かされ、王様の近くの足元で水溜まりになった。これを狙っていたのだ。
「凍れ」
そう呟けば、王様の足元にあった水溜まりが一気に凍り、王様が一歩動いた瞬間見事にツルッと滑った。
「えっ」
後は予想通り。見事に後ろに転倒した王様。そしてちょうどゴーレムの姿になったシュラの腕が王様を掴む。
王様の顔がもう蒼白を通り越して白くなってる。潰されるとか思っているのだろうか。
大丈夫です。これは危険ではないですから。安全のため、一応王様に防御の魔法でも掛けておこう。
寒さと風を防ぐぐらいで大丈夫だろう。後なんかぶつかったら反射するようにしよう。
軽く王様に触れると、王様を包むように薄い透明な膜が張られ体にぴったりと密着するのを確認した。
これで準備はOKだ。
「シュラ実行!」
『あいあいさ~』
気の抜けた返事と共にシュラは王様を掴んだまま勢いをつけて投げた。すさまじい速さで消えていく王様の姿。
王様からちょっと女らしい悲鳴が聞こえてきたけど、姿が徐々に小さくになるにつれてその声も小さくなった。
おぉ~結構高くまで上げたな。試合を見守っていた観客の人たちも王様が消えた方向を見る。
いや、正確には見上げているというのが正しい。
シュラは王様を真上に投げたのだから、王様は今空をちょっと浮遊して落ちてきている所だろう。
王様の悲鳴が徐々に大きくなる。そして姿を確認してシュラに目配せをする。それだけで察してくれたんだろう、シュラは落ちてきた王様を流れる動作で受け止めるとそのまま上に同じように投げた。
「もうやめてくれえええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
「まだ駄目ですよー。あと4回ほど我慢してくださいねー……あっクロフ~!」
『何ー?ボクこいつ縛ってて忙しいんだけどー?』
「ちょうどいいからその子も王様と同じ体験をしてもらおう」
そう言うと明らかに怯えるように体を震わせ始めたフェレット。うるうる目とふるふる震えてるのが可愛い。
だが許さん。ローブを燃やした罪は重いぞ。クロフからフェレットを受け取ってクロナ達を捕まえたように丸いガラスの球体で包む。
さすがに精霊でも逃げられないようだ。体当たりをしたり炎を噴いてくるけど、球体はびくともしない。
それをシュラに渡して王様と同じように投げてもらう。その間にクロナとクロフは私の影に戻った。
私は空に消えていく王様とフェレットを見ながら笑った。うむ、いい気分である。
『マスター、あの火の精霊はうつけか唯の馬鹿なのか』
『へ?』
『いや自分で自分を苦しめておるぞ?球の中の空気が残り少ないのに炎を出しておれば……あっ意識失った』
「ちょっと待ってぇええええええ!!!!死ぬのだけは本当に勘弁してくださいよ!?」
その後途中でフェレットは脱落。ちゃんと空気を吸わせてあげて傷の手当てもした。クオが指輪を通して伝えてくれなかったら気づかず続行されていただろう。
ただ4回ほど投げてシュラがまだ遊び足りなかったのか、さらに追加で10回ほど投げられて王様の顔が蒼白くなっている。地面に足がついた瞬間膝から崩れて今カミィラに治療してもらっている。
エリク様が控えさせていた治癒の使える魔術師とは彼女の事だったようだ。
治療されて体調も元に戻った王様は一言私に言って、王妃共にどこかに消えて行った。
私は王様の一言を聞いてガッツポーズ。
「よっしゃぁあ合格した!」
色々とトラブルなどがあったけど、無事に第一第二試合も合格できた。
次はいよいよ最後の試合。持久戦だ。頑張ろう。
ただ周りの人からものすごい勢いでドン引きされたような気がしたんだけど、気にしない事にした。