表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dolls  作者: 夕凪秋香
2章 リュクシア王国
37/51

王都エ・レーラ1-1


更新が遅れて申し訳ありません。何度もネット回線が切れる中、必死で修正していたら、時間が予想以上に掛かってしまいました。





休憩の間に書いていた日記を閉じエリミアに異空間へ保存してもらうと、歩き始めた騎士団達の後ろへと付いて行く。

今は山道を抜け、王都へと続く街道を歩いている。その証拠に、王都に近づいていくにつれ、すれ違う人達が増えていく。

すれ違う人達を横目に見ながら、アシュリードは腕の中にいるエリミアの頭を撫でる。



「休憩したとはいえ……何時になったら着くのかな」



小さく呟くとエリミアが顔を上げ、首を傾げる。



「疲れたのですか?アシュリード」


「いや、疲れては無いよ。暇なだけ。歩いてるだけってどうしても暇に感じるんだよ」


「そうですか。それよりも、その隣にいる狐は大丈夫なのでしょうか?」



彼女が指差した方へと顔を向けると、何故かフードの中から涙目で見つめてくるクオがいた。

その額には汗が光っている。いつもと違う様子にアシュリードは慌てた。



「クオ、どうしたの?!」


「…マスター」



クオはふらふらとアシュリードに近づくと、肩に寄りかかるように頭を乗せてきた。

自分より重い体重を支えながら、アシュリードはクオの顔を覗き込んだ。

片手で彼の額に触れると、熱を持ったように熱い。目も微かに虚ろになっている。



「体がだるい…」


「風邪でも引いたのかな…しょうがない。街に着いたらすぐに部屋に案内してもらおう」


「風邪…?…精霊は病気などしない…」


「え、それじゃあ何が原因?」



彼は首をゆっくり横に振りながら、苦しそうに呟いた。その目は不安そうに揺らいでいる。



「……わからない…こんな事は初めてだ…」


「今は喋らない方がいいよ。体辛くなるだけだから、ね?」


「わかった……すまない、マスター…」



そういうと、クオは目を閉じた。その途端さらに体重が重く感じる。どうやら気を失ったらしい。

エリミアに先頭を歩く殿下とリュナミスに早急の伝言を頼むと、シュラと列から離れたエリミアに力を貸してもらい、一旦街道から外れた場所にクオの体を横にする。

自分のローブを脱いでクオの頭の下に置くと、隣に居たカミィラがそっと彼の頭に触れた。



「熱が少しあるみたい…治癒の魔術で治すね」


「治せるの!?」


「ワタシ、攻撃系の魔術は苦手だけどこういうのは得意なの。お医者さんにも負けないよ」



そう言ってカミィラは、クオの胸に両手を添えて小さく何かを呟いた。

彼女の手からほのかにピンクの光が溢れ、クオの体へと消えていく。

1分ほど光が注がれていたが、クオの体調は戻らなかった。むしろ悪化していた。

今の姿を保つ事ができずに、髪が長く白く輝き始め、瞳の色は黒から赤へと変わっていた。

表情は今だ苦悶に染まっている。

3分4分と徐々に時間が掛かっていく度、同時にカミィラの顔から生気が無くなっていった。カミィラの顔が青白くなっているのに気付くと、彼女の手を無理やりクオから離し、中断させる。

彼女は、離した勢いのまま自分に倒れこんできた。その顔からは血の気がほとんど無い。



「カミィラっ、大丈夫?!」


「大丈夫だよ…でも、ワタシの魔術が全然効かない…魔力そのものを抜き取られた感じ」


「魔力そのものを?」



力なく頷くカミィラを見たアシュリードは、ふと自分の左手の中指にはめている契約の指輪を見た。

そして、クオからの説明でこの指輪から魔力を自然に吸収する、と聞いた覚えがあるのを思い出す。



「物は試しだよね」



カミィラに膝枕をしながら、右手に気を集めるように意識すると右手から緑色の浮遊する球が現れた。

それを指輪と触れさせると球は空気に溶けるように指輪に吸い込まれた。

じっと指輪を数秒見た後、クオの方を見るとすでに起き上がっていた。

その顔は、何故か晴々としていて爽やかだった。(早い回復だな、おい)と心の中でツッコミながら顔には笑みを浮かべる。

自然と唇が引きつったのは、気のせいだ。



「た、体調は大丈夫?」


「大丈夫だ。心配をかけてしまい、申し訳ない」


「クオが大丈夫だったならいいよ。さてと…」



カミィラの体勢を少し変えていると、何をされているのか分からないカミィラは首を傾げてこちらをじっと見つめてきた。

アシュリードは笑みを返しながら腕に力を入れて、カミィラの体を腕で持ち上げる。

お姫様抱っこである。もちろん男性の声に変えておく事は忘れない。



「な、ななななななななななぁ!?」


「お兄さんの所まで運ぶよ、カミィラちゃん」


「いいいいいいいい、いいです!ワタシ、自分で歩けるから!」



そう言うので一旦彼女を下ろすが、数歩歩いただけで倒れそうになった。

思わずため息をつくと、彼女は申し訳なさそうに俯いた。

少し遊びすぎた気がして、声色を元に戻し彼女の手を握る。



「ほら、素直に任せなさい。女でも力はある方だから、安心して?」


「…うぅ…じゃあ、お願いします…」



最後は聞こえないようなか細い声で言われたが、腕を伸ばすと素直に体を任せてきた。

出来る限り揺らさないようにそっと持ち上げると、カミィラが服を握り締めてきた。

俯いていて顔は見えないが、心臓の音が良く聞こえているため思わず顔が綻んだ。



「マスター、ローブを忘れてる」


「ありがとう、クオ。そのまま持っててくれると助かるんだけど」


「だが、姿がばれる。着ておかないと不味いのでわ?」


「もうめんどくさい。暑いし、仮面はつけるからいい事にして」



そう言うとさっさと騎士団の方へと歩き出した。

ポケットから事前に殿下から渡されていた顔の上部分だけを隠す白い仮面をつけると、改めて変な人物になってしまったな、とアシュリードはため息をつく。

王城に着くまでは誰にも顔を見られるな、という命令だから従わざるおえないのだが、傍から見れば変な人。

少し複雑な気分のアシュリードであった。





魔力切れで倒れそうなカミィラをリュナミスに預け、無理やりローブを着せられてまた歩き始めたのだが、いまだに王都は見えてこない。

30分1時間と徐々に時間が過ぎていくが、一向にたどり着かない。

休憩も無く、アシュリードは最初の勢いが無くなり一人だけ疲れ果てていた。



「エリミア。王都まで後どのくらい?」


「40分程度だと思います。肉眼でそろそろ確認できる距離です」



シュラの肩に乗っているエリミアがそう答えた。

その手には小さな望遠鏡のような物があった。騎士団の名前も知らない兵士に貸してもらったらしい。

まだ40分も歩かなければならないのかと思うと、自然と口からため息が漏れた。



「はぁ…まだまだ「これはこれは、エリク殿下ではありませんか。お帰りなさいませぇ」…何この気持ち悪い声」



眉間に皺を寄せながら声の持ち主を捜すと、騎士団の進む道を遮るように同じような服装の男性達が立っているのが見えた。

その男達の少し前に立って、殿下と話をし始めた赤髪の男が声の主のようだった。


後ろでは兵士達の体が邪魔で顔まではよく見えないため、一旦前に出てみる事にした。

前に進み出て後悔したのは、後の祭りである。



「おやぁ、それが今度新しく入る事になった魔術師ですか。……ッチ」



アシュリードの姿を見つけた男は最初は笑みを浮かべていたが、最後に小さく舌打するのが聞こえた。

どういうことだ、これは。と思いながら隣にいたリュナミスに視線を向けると、苦虫を潰した様な顔で目の前の男を見つめていた。そして、ゆっくりと口を開く。



「で、何か用があって俺達を止めたのだろう?シュドネイル・コーランド・メフィストレ」



彼はそう言うと、アシュリードを背で隠すようにして男と向き合った。

少し驚くと後ろに控えていたはずのクオやシュラ達までもが、アシュリードの前に立っていた。

その光景に男は呆れたのか盛大なため息の音が聞こえた。



「そうまで警戒しないでも良いでわないですか。取って食おうとは全く思っておりませんよ?」


「俺達の隊から魔術師を無理やり3人も奪っていった奴が、何を言う」


「奪っていったなどと…口の悪い方ですねぇ。彼女達は自分の意思でこちらに入隊したのですよ?」


「戯言を…っ。彼女達を良い様に使って魔物の巣に放置した奴が…っ!」


「ワタクシにはそんな事をした事実は、全くありませんよ?彼女達が勝手に巣で死んだだけではないですか」



いきなり始まった口喧嘩にアシュリードは、少し躊躇ったが勇気を出し、二人の間に体を滑り込ませ彼らの顔面を掴む。

その時に、付けていた仮面が地面に落ちたが、拾おうとは思わなかった。



「アシュリード、何を「黙っててください」…分かった」


「…誰の顔に触れているんだ「貴方も黙っててください」お前ごときに指図される筋合いは無い!」



いきなり荒々しく変わった口調に、頭の中で駄々をこねる子供を思い浮かべたが、大人がしているとなると思わずため息をついてしまった。

顔から手を離すとわざと呆れた顔で目の前の男に言った。



「えぇっと、シュドネイル・コーランド・メフィストレさんでしたっけ?」


「そうだ。何かワタクシに言いたい事でもあるのか」


「御偉い方なのかも知れませんが、通行人の邪魔になっている様なのでさっさと用件を言って下さい」



後ろを指差してやると、振り返る彼らの後ろには馬車が列を成していた。

それを見た彼らは慌てて馬車が通れるように道を開けたが、その顔は少し赤い。

こちらも馬車の通れる道を開け、赤面の彼らを心の中で笑いながら地面に落ちていた仮面を拾い、顔に付ける。

フードがずれなかった為、目立つ黒髪は見られてない事に気付き、内心ホッとしていると向こうから今さっきとは違う男が走ってきた。


茶色まじりの赤毛で灰色のローブを身に付けている所、彼らの部隊の魔術師の一人なのだろう。

そして、彼は私達に頭を下げ謝ってきた。申し訳なさそうに体を窄めているあたり、本心からの謝罪なのだろう。

彼のローブを見てみると、リュナミスと同じ模様のバッチがつけてある。彼は副隊長なのだろうか。







騎士団にはそれぞれの隊でルールがあるらしいのだが、一つだけ共通するものがある。

それは上司や部下を表すものだ。


隊長は白い隊服の胸元にどこの隊の隊長か分かるように、模様の入った懐中時計を入れている。

第二隊の模様は、蓮の花に剣が3本突き刺さったような模様だ。


副隊長は、隊の模様を模ったバッチを襟元に付けている。ただし色は銀限定。隊長より目立つ色を使っては駄目なのだそうだ。


一応、副隊長の副官にもある。アシュリードはまだ受け取ってはいないが、前衛系の副官だとブレスレット、後衛・支援系の副官は指輪だ。どちらも隊の模様が入ったシンプルな物だ。








彼らの隊は第四隊である事を副隊長のセーシェルから聞くと、彼は殿下の前で膝を曲げ頭を下げた。



「この度のご無礼、申し訳ありませんでした。上司の失態は、部下の失態。どんな罰でもお受けいたします。ですが、それよりも優先すべきことがございます」


「優先すべき事とは、一体何ですか。セーシェル」



殿下が問いかけると彼は一度顔を逸らしたが、もう一度殿下を見上げると決心したような顔で彼にこう伝えた。






「妹君であるアリア様が、魔物に精神を侵され……お体が衰弱しております。後数日保てるかどうか……兄君の殿下の名を何度も呟いておりました。ミケル殿はすでに治療にあたっております。どうか、お急ぎのご帰還を!!」







それを早く言えーーーーーっ!!と思ったのは私だけじゃないと思う。












登場してきたシュドネイルとセーシェルの紹介はまだ書きません。

その理由は後々……


次の更新は多分2週間未満で更新できると思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ