人ならざる者はかすかに笑う
本編の前に別視点です。
後々新キャラが登場しそうな話です。するかは分かりません。
今回も短いです。
その場所は、ある人間は天国と例える。
その場所は、ある人間は地獄と例える。
その場所は、全てを飲み込む闇と例える人間も居る。
だが、それら全ては空想に過ぎない。
もしその場所を訪れた人物が居るならば、物が居るならばそれはありえないことだ。
ここに存在できるのは、人ならざるモノだけだからだ。
何も聞こえない、何も見えない真の闇の中。地面があるかも分からない場所に、その男達は立っていた。
彼らは別人のように見えて同じ人の様に見えた。正反対の容姿、色を持っているのに雰囲気は全くの同じ。
闇の中でさえ見えるその髪や瞳の色は、この場所では異様なものに感じた。
彼らの赤と青の瞳が同時に細くなり、口から微かに笑い声が聞こえる。
「ようやく帰ってきたね」
嬉しそうに笑いながら黒の衣装を纏う男がそう言った。
それに答えるように白の衣装を纏う男が口を開く。
「そうだね。長くて待ちくたびれた」
「早く会いに行きたいよ」
「でもまだ駄目。まだ会いにいけない」
「そうだね。あともう少し待たなくちゃ」
背中に黒い羽を持つ男がそう言うと、背中に白い羽を持つ男は自分の羽を握り締めながら歌い始める。
「aderufeine jenriyerte 」(神は 何を祈る)
それに答えるかのように銀髪の男が歌う。
「aderufeine cuseryufeia 」(神は 愛し子の幸せを祈る)
彼らは微かに口元に笑みを浮かべながら、闇の中で交互に歌い続ける。
その光景は異様なように見えて、神聖な物のように感じた。
「aderufeine nuantyeia racteinus 」(神は 何を愛する)
「aderufeine naantyeia pelyawyevt 」(神は 全てを愛する)
「aderufeine xeakarto manierrya 」(神は 何を憎む)
「aderyfeine xeakarto aderitye 」(神は 全てを憎む)
「ade cuseryufeia meya? 」(じゃあ 愛し子とは 何?)
「ade fedeltye cerutyenya 」(それは 誰にも分からない)
「……ほんと、人間って馬鹿だよね。こんな歌なんて作ってさ」
不満そうに銀髪の男が口を尖らせると、金髪の男が苦笑をしながら羽を大きく広げる。
「人間は賢いよ。自分の立場がどんなものなのか、誰から与えられているのかを理解している」
「でも、愚かだ。自分達が世界の指導者だと思っている。馬鹿馬鹿しい」
「だからこそ、可愛いんだけどね」
「うん。可愛いからこそ壊しがいがある」
「可愛らしいほど直しがいがあるね」
二人は顔を見合わせながら微笑み合うと、大きく羽を広げ、闇の中を飛んだ。
音も無く飛んでいくその姿を、『闇』は眺めていた。
最初から『闇』は彼らの傍にいた。世界の声を聞きながら『闇』は二人が望むままに世界を変えてきた。
一人例外がいるが、その一人は今この場には居ない。
飛んでいく彼らの後ろを付いて行きながら、『闇』は考えを廻らしていく。
「早く会いたいよ……母様」
「早く戻ってきてよ…母様」
闇の中を飛び出していった二人の最後の言葉に、『闇』はさらに考えを廻らせる。
二人の望む世界を、『闇』はそれだけを考える。
そして、自分の体を切り裂いて世界へと散らばった。
『闇』は二人の望みを叶え、自分の存在を認めてもらい、褒められたい。
それだけのために、行動する。
例え、自分の身を犠牲にしても他人が犠牲になったとしても、気持ちが変わることは無い。
あるとすれば、二人の言う「母様」が帰ってきた時だけだ。
『闇』は一人、闇の中で震えながら自分はここに居るよと伝えるように、世界へと意識を向けた。
セリフの英語は完全に造語です。
本編の方ですが、後1週間ほどで完成します。
一週間程度経ったら、更新する予定です。