祭りの午後 ユーリリアside
今日一日で一気に書き上げたので、誤字脱字があるかもしれません。
&読みズライです。すいませんorz
それでもよろしければ、どぞ
わたくし、ユーリリア・キリアメス・トリメンティアは、没落貴族の家庭の次女として、この世界に生を受けた。
没落貴族と言っても、金に困っていただけだ。それ以外は全て貴族らしい暮らしだったと思う。
両親は素晴しい方で、孤児や職を失った人を助けるためには手を惜しまなかった。
上の兄や姉は、両親を支えるために王宮へと勤めた。素晴しい働き振りで、いつも輝いていらっしゃった。
だが、それらは全て彼らの容姿が良かったから叶っていただけだった。
本人達は気付いていない。気付くはずも無いだろう。
家族の中で平凡な容姿のわたくしは、王宮に勤める事もできず、貴族の家へ奉公に出るしかなかった。
もちろん反対はされた。でも、わたくしも家庭を支えたかった。
純粋な思いで奉公へ向かった最初の場所で、わたくしは早くも後悔した。
貴族の主には、慰め物になれと無理やり体を貪られた。
一緒に働いていた奉公人には、冷たい目で見られた。
働いていれば、ことごとく邪魔をされ、わたくしは一時、精神を病んでしまった。
病んだわたくしを、貴族は簡単に捨てた。その代わりに美しい娘を妻に迎えていた。
その娘を一目見たくて、わたくしは一度部屋を抜け出して、驚愕した。
そこにいたのは、わたくしの実の姉で、姉はわたくしを捨てた貴族の横で幸せそうに笑っていたのだ。
姉の左手の薬指には、淡く水色に光る指輪がはめられていた。
わたくしは、姉に何度も言った。「あの男は駄目だ。貴方が苦しむだけだ」と。
だけど姉は聞かず、その日から一週間後、結婚式を挙げて晴れて貴族の妻となった。
その時にはすでにわたくしの心も治っていて、わたくしは姉の存在を忘れようと、幸せを祈ろうと、次の奉公先へと向かった。
そこで出会ったのが、レナード様だった。
レナード様はわたくしを見ると、無言で頭を撫でてくださった。まるで、全て知っているというように。
その赤にも紫にも見える瞳で、わたくしを慰めてくださった。
わたくしはそれだけで、この方に一生仕えようと決意した。
だけど、わたくしはレナード様の侍女には選ばれず、まずは奥様の侍女として働いた。
奥様は見た目に反してわがままで、気に入らなければ捨ててしまえば良いと思っている方だった。
奥様は、わたくしが最初に仕えたあの貴族の主と同じように感じた。
奥様の機嫌取りは簡単にできた。わりと、単純な頭の方なんだと思う。
だけど、金の事になると奥様は凄く頭をきかせた。
わたくしは、奥様に言われたとおり人を殺す技を身に付け、邪魔するものは排除していった。
ある時は自分の体を囮にして、人殺しをしたこともある。
奥様はそんなわたくしを褒めて可愛がってくださった。
だけど、わたくしはそれが嫌だった。だから奥様に願い出て、レナード様に仕えることを許していただいた。
レナード様は奥様と違い、欲がなく、命令をする事は無い。
何か必要な事があれば、わたくしにではなく、シェイド様やミュー様へと伝えた。
わたくしは、ただ周りの世話をするだけだった。だけど、それだけで心は安らいだ。
わたくしはレナード様に心から仕えながら、奥様にも仕える様になっていた。
そんなわたくしのところに、兄が押しかけてきたのは、レナード様に仕えて2年が経っていた頃だった。
兄が押しかけてきた理由は、姉の自殺だった。
その事を伝えるために、わざわざ王都から田舎の村まで急いで馬を走らせてきてくれた。
姉は夫である貴族に暴行され、浮気され、あげくの果てに捨てられて、夫の前で首を切って自殺したらしい。
こんな事にはなるだろうと思っていたはずなのに、わたくしは耐え切れず、その場で泣き出してしまった。
その貴族の男は称号を剥奪され、牢屋に入れられている。
そう聞いた瞬間、わたくしは部屋を飛び出し、人を何人も殺してきたその手で男を殺してやろうと思った。
だけど、レナード様に止められた。何もしなくても、あいつは死ぬと。
もうその手を汚すなと、レナード様はおっしゃった。
殺すことを諦め、兄と過ごす内に姉の夫だった男が逃げ出して、魔物に体を食いちぎられて死体になって見つかったと聞いた。
これで姉は浮かばれるだろうと、わたくしは天国の姉に手を合わせた。
そんなレナード様が、初めてわたくしに命令をしてくださった時は驚いた。
突然「村のある女を守れ。ついでに踊りの指導もしてこい。それが終わるまで帰ってこなくて良い」なんて言い出すんですもの。
わたくしは言われるまま、村へと赴き、その女性の住む家を訪ねた。
レイカ様を見た時は、レナード様と出会った時以上に驚いた。
初めて見る漆黒のとても綺麗な髪に、それと同じくらい輝く黒い瞳。
雪のように白い肌に、小さく熟れたリンゴの様な赤い唇。
思わず見惚れてしまった。
彼女の反応も行動も、全てが輝いているように見えた。
レナード様が興味を示すのも、無理が無いと思った。
彼女と過ごした数日は、本当に楽しかった。
食事を作ればとても美味しそうに食べ、彼女に名前を呼ばれるだけで、思わず笑みが深まる。
踊りを教えても呑み込みが早く、すぐ覚えてしまっていた。まぁ、体力が無くて時々倒れていたのはしょうがないわよね?
そんな彼女を見に来ていた兵士に、彼女は疲れた顔を見せず、ずっと笑みを浮かべていた。
祭りでの彼女は凄いとしか言えなかった。
まるで女神の生まれ変わりのように踊る彼女の姿に、見惚れていたのはわたくし以外にも沢山居た。
だけど、寂しくも思った。
この祭りが終われば、わたくしは明日か明後日の内に帰らなければならない。
それが、寂しくて悲しかった。そんなわたくしを崖から突き落とすかのように、奥様からある手紙を受け取った。
その手紙の内容は、どうしても許せないものだった。
「あの娘を殺せ。そして殺した後、剥製にしなさい」など、今のわたくしができるわけない。
できるわけじゃない。したくないのだと気付いたのは、階段を下りてくる彼女を見た時だ。
一瞬、レイカ様だとは思えないほど綺麗な方が現れたと思った。
まるでどこかの物語の貴族の男性の様なその仕草に、わたくしは一瞬で虜になった。
失礼ではありますが、女性なはずなのに、どこか男らしいレイカ様に……一瞬で恋をしてしまったようです。
ですが、恋とは違う感情にも感じられました。
わたくしは胸が苦しくなって、彼女から顔を隠して食堂へ向かいました。
昼食の準備が出来たと呼びに言ったときは、初めて死ぬかと思いました。
ゆっくり振り返ってわたくしを見つめてくる瞳に、自然と頬が赤くなるのが自分でもわかりました。
初めて「ぷりん」という物を食べた時には、その美味しさに感激してしまいました。
そして、こんな素晴しい物を作り出す事が出来る彼女を、死なせたくない。そう思いました。
わたくしは、彼女に逃げるようにと話しました。話していく内に、どんどん胸が苦しくなって、わたくしは叫びにも近い声で、彼女に懇願していました。
「わたくしはっ!レイカ様を死なせたくないんですっ、殺したくないんです!たとえ主人を裏切る事になろうとも、わたくしは……」
涙が零れ、体が震えながらも、わたくしは今気付いた自分の感情を、彼女に伝えました。
「わたくしは…初めて仲良くなれた…友達だと、思える人を…失いたくないっ」
わたくしは、今まで友達が居なかった。
仲良くなってくる人なんて、兄や姉に媚を売りたい人ばかりで、本当にわたくしを友達だと思ってくれる人はいなかった。
もちろん、わたくしも思ったことはありませんでした。
でも、彼女の接するうちに、彼女の傍にいたい。彼女と普通の日常を過ごしたい。彼女ともっと話がしたい。と思ったのです。
これは、友達になりたい、という事でしょう?
わたくしは全てを言い終えると、自分の感情がコントロールできず、涙が溢れてきました。
せめてと、声を押し殺しながら泣くわたくしを、彼女は抱きしめて頭を撫でてくださいました。
驚くわたくしの耳元で、彼女は優しくそして嬉しそうに言いました。
「私を友達だと言ってくれて、嬉しい」
「泣かないで」
「だって私達、友達でしょ?」
その言葉が、どれほどわたくしの心を満たしてくれた事か。
わたくしはもう耐えられず、嬉しさから彼女の胸にしがみ付いて、泣いてしまいました。
彼女の優しさが、温かさが、わたくしにはとても嬉しかった。
だから、わたくしはもう大丈夫。
例え命令に背こうとも、彼女のためなら、この体がどうなろうと関係ない。
だって――――わたくしは、レイカの友達だから。
わたくしは彼女の友達で居られるなら、この身も惜しくは無いとそう思った。
彼女は、明日の朝、騎士団と共に王都へと行く事になった。
エリク様が、彼女を騎士団の魔術師として迎えると言った時には、食堂に居た全員が驚いた。
彼女は戸惑いながらも、共に行くと言った。周りの人たちは反対したが、彼女は王都に行きたいらしく、反対を押し切って承諾していた。
これで、安心した。
わたくしは、心の中でホッと息を付き、明日の出来事へ備えるため、借りている部屋へと戻った。
絶対に、彼女は無事に出発させる。
わたくしの頭の中には、もうそれだけしか残っていなかった。
さぁて、ここからが正念場……
頑張って執筆しますね(`・ω・)b
感想、アドバイスお待ちしてます。