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Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
32/51

祭りの午後 ユーリリアside


今日一日で一気に書き上げたので、誤字脱字があるかもしれません。

&読みズライです。すいませんorz


それでもよろしければ、どぞ



わたくし、ユーリリア・キリアメス・トリメンティアは、没落貴族の家庭の次女として、この世界に生を受けた。

没落貴族と言っても、金に困っていただけだ。それ以外は全て貴族らしい暮らしだったと思う。



両親は素晴しい方で、孤児や職を失った人を助けるためには手を惜しまなかった。

上の兄や姉は、両親を支えるために王宮へと勤めた。素晴しい働き振りで、いつも輝いていらっしゃった。



だが、それらは全て彼らの容姿が良かったから叶っていただけだった。

本人達は気付いていない。気付くはずも無いだろう。

家族の中で平凡な容姿のわたくしは、王宮に勤める事もできず、貴族の家へ奉公に出るしかなかった。

もちろん反対はされた。でも、わたくしも家庭を支えたかった。




純粋な思いで奉公へ向かった最初の場所で、わたくしは早くも後悔した。

貴族の主には、慰め物になれと無理やり体を貪られた。

一緒に働いていた奉公人には、冷たい目で見られた。

働いていれば、ことごとく邪魔をされ、わたくしは一時、精神を病んでしまった。


病んだわたくしを、貴族は簡単に捨てた。その代わりに美しい娘を妻に迎えていた。

その娘を一目見たくて、わたくしは一度部屋を抜け出して、驚愕した。

そこにいたのは、わたくしの実の姉で、姉はわたくしを捨てた貴族の横で幸せそうに笑っていたのだ。

姉の左手の薬指には、淡く水色に光る指輪がはめられていた。


わたくしは、姉に何度も言った。「あの男は駄目だ。貴方が苦しむだけだ」と。

だけど姉は聞かず、その日から一週間後、結婚式を挙げて晴れて貴族の妻となった。





その時にはすでにわたくしの心も治っていて、わたくしは姉の存在を忘れようと、幸せを祈ろうと、次の奉公先へと向かった。




そこで出会ったのが、レナード様だった。

レナード様はわたくしを見ると、無言で頭を撫でてくださった。まるで、全て知っているというように。

その赤にも紫にも見える瞳で、わたくしを慰めてくださった。

わたくしはそれだけで、この方に一生仕えようと決意した。


だけど、わたくしはレナード様の侍女には選ばれず、まずは奥様の侍女として働いた。

奥様は見た目に反してわがままで、気に入らなければ捨ててしまえば良いと思っている方だった。

奥様は、わたくしが最初に仕えたあの貴族の主と同じように感じた。




奥様の機嫌取りは簡単にできた。わりと、単純な頭の方なんだと思う。

だけど、金の事になると奥様は凄く頭をきかせた。


わたくしは、奥様に言われたとおり人を殺す技を身に付け、邪魔するものは排除していった。

ある時は自分の体を囮にして、人殺しをしたこともある。


奥様はそんなわたくしを褒めて可愛がってくださった。

だけど、わたくしはそれが嫌だった。だから奥様に願い出て、レナード様に仕えることを許していただいた。


レナード様は奥様と違い、欲がなく、命令をする事は無い。

何か必要な事があれば、わたくしにではなく、シェイド様やミュー様へと伝えた。

わたくしは、ただ周りの世話をするだけだった。だけど、それだけで心は安らいだ。

わたくしはレナード様に心から仕えながら、奥様にも仕える様になっていた。



そんなわたくしのところに、兄が押しかけてきたのは、レナード様に仕えて2年が経っていた頃だった。


兄が押しかけてきた理由は、姉の自殺だった。


その事を伝えるために、わざわざ王都から田舎の村まで急いで馬を走らせてきてくれた。

姉は夫である貴族に暴行され、浮気され、あげくの果てに捨てられて、夫の前で首を切って自殺したらしい。

こんな事にはなるだろうと思っていたはずなのに、わたくしは耐え切れず、その場で泣き出してしまった。


その貴族の男は称号を剥奪され、牢屋に入れられている。

そう聞いた瞬間、わたくしは部屋を飛び出し、人を何人も殺してきたその手で男を殺してやろうと思った。

だけど、レナード様に止められた。何もしなくても、あいつは死ぬと。

もうその手を汚すなと、レナード様はおっしゃった。


殺すことを諦め、兄と過ごす内に姉の夫だった男が逃げ出して、魔物に体を食いちぎられて死体になって見つかったと聞いた。

これで姉は浮かばれるだろうと、わたくしは天国の姉に手を合わせた。












そんなレナード様が、初めてわたくしに命令をしてくださった時は驚いた。

突然「村のある女を守れ。ついでに踊りの指導もしてこい。それが終わるまで帰ってこなくて良い」なんて言い出すんですもの。

わたくしは言われるまま、村へと赴き、その女性の住む家を訪ねた。


レイカ様を見た時は、レナード様と出会った時以上に驚いた。

初めて見る漆黒のとても綺麗な髪に、それと同じくらい輝く黒い瞳。

雪のように白い肌に、小さく熟れたリンゴの様な赤い唇。


思わず見惚れてしまった。

彼女の反応も行動も、全てが輝いているように見えた。


レナード様が興味を示すのも、無理が無いと思った。





彼女と過ごした数日は、本当に楽しかった。

食事を作ればとても美味しそうに食べ、彼女に名前を呼ばれるだけで、思わず笑みが深まる。

踊りを教えても呑み込みが早く、すぐ覚えてしまっていた。まぁ、体力が無くて時々倒れていたのはしょうがないわよね?


そんな彼女を見に来ていた兵士に、彼女は疲れた顔を見せず、ずっと笑みを浮かべていた。




祭りでの彼女は凄いとしか言えなかった。

まるで女神の生まれ変わりのように踊る彼女の姿に、見惚れていたのはわたくし以外にも沢山居た。

だけど、寂しくも思った。


この祭りが終われば、わたくしは明日か明後日の内に帰らなければならない。

それが、寂しくて悲しかった。そんなわたくしを崖から突き落とすかのように、奥様からある手紙を受け取った。


その手紙の内容は、どうしても許せないものだった。

「あの娘を殺せ。そして殺した後、剥製にしなさい」など、今のわたくしができるわけない。

できるわけじゃない。したくないのだと気付いたのは、階段を下りてくる彼女を見た時だ。



一瞬、レイカ様だとは思えないほど綺麗な方が現れたと思った。

まるでどこかの物語の貴族の男性の様なその仕草に、わたくしは一瞬で虜になった。

失礼ではありますが、女性なはずなのに、どこか男らしいレイカ様に……一瞬で恋をしてしまったようです。

ですが、恋とは違う感情にも感じられました。


わたくしは胸が苦しくなって、彼女から顔を隠して食堂へ向かいました。




昼食の準備が出来たと呼びに言ったときは、初めて死ぬかと思いました。

ゆっくり振り返ってわたくしを見つめてくる瞳に、自然と頬が赤くなるのが自分でもわかりました。


初めて「ぷりん」という物を食べた時には、その美味しさに感激してしまいました。

そして、こんな素晴しい物を作り出す事が出来る彼女を、死なせたくない。そう思いました。


わたくしは、彼女に逃げるようにと話しました。話していく内に、どんどん胸が苦しくなって、わたくしは叫びにも近い声で、彼女に懇願していました。



「わたくしはっ!レイカ様を死なせたくないんですっ、殺したくないんです!たとえ主人を裏切る事になろうとも、わたくしは……」



涙が零れ、体が震えながらも、わたくしは今気付いた自分の感情を、彼女に伝えました。



「わたくしは…初めて仲良くなれた…友達だと、思える人を…失いたくないっ」



わたくしは、今まで友達が居なかった。

仲良くなってくる人なんて、兄や姉に媚を売りたい人ばかりで、本当にわたくしを友達だと思ってくれる人はいなかった。

もちろん、わたくしも思ったことはありませんでした。


でも、彼女の接するうちに、彼女の傍にいたい。彼女と普通の日常を過ごしたい。彼女ともっと話がしたい。と思ったのです。

これは、友達になりたい、という事でしょう?


わたくしは全てを言い終えると、自分の感情がコントロールできず、涙が溢れてきました。

せめてと、声を押し殺しながら泣くわたくしを、彼女は抱きしめて頭を撫でてくださいました。

驚くわたくしの耳元で、彼女は優しくそして嬉しそうに言いました。



「私を友達だと言ってくれて、嬉しい」

「泣かないで」

「だって私達、友達でしょ?」



その言葉が、どれほどわたくしの心を満たしてくれた事か。

わたくしはもう耐えられず、嬉しさから彼女の胸にしがみ付いて、泣いてしまいました。

彼女の優しさが、温かさが、わたくしにはとても嬉しかった。



だから、わたくしはもう大丈夫。

例え命令に背こうとも、彼女のためなら、この体がどうなろうと関係ない。

だって――――わたくしは、レイカの友達だから。


わたくしは彼女の友達で居られるなら、この身も惜しくは無いとそう思った。






彼女は、明日の朝、騎士団と共に王都へと行く事になった。

エリク様が、彼女を騎士団の魔術師として迎えると言った時には、食堂に居た全員が驚いた。

彼女は戸惑いながらも、共に行くと言った。周りの人たちは反対したが、彼女は王都に行きたいらしく、反対を押し切って承諾していた。



これで、安心した。

わたくしは、心の中でホッと息を付き、明日の出来事へ備えるため、借りている部屋へと戻った。





絶対に、彼女は無事に出発させる。

わたくしの頭の中には、もうそれだけしか残っていなかった。











さぁて、ここからが正念場……


頑張って執筆しますね(`・ω・)b


感想、アドバイスお待ちしてます。


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