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Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
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クロッカス村4-4


今回は長いです。

長いわりに、なんか文章が最後のあたり変です。



それでもよい方は、どぞ



零香は頭の中では結論を出していたが、それを心の中で、認めたくない、と拒否をしていた。

言ってもいいと頭の中で思っても、心では言うなと拒絶している。

下唇をギュッと噛みながら、零香はクオを見上げていた。すると、服が下に引っ張られその方へ顔を向けると、エリミアが零香と同じようにクオを見上げていた。右手は、零香の服を握ったまま。



「それは、私と同じという事でしょうか。クオさん」


「……エリミア」



突然登場したエリミアに驚きながらも、心の中でホッとした。

エリミアをそっと抱き上げながら、クオと目線が合う様に肩にのせる。エリミアは零香に寄りかかるような体勢で、話を続ける。



「私は、零香によって作られた人形です。少しシュラとは違いますが、構造的にはシュラと同じはずです。違いますか?」



クオは、エリミアとシュラを交互に見ながら「なるほど」と頷いた。



「確かに似ている。同じと言っても過言ではないな」


「私は、零香の魔力を少し貰いながら動いています。ですが、自分でも魔力は補給できています」



エリミアのその言葉に、クオは目を見開いた。

そして、まじまじとエリミアを見ながら零香の肩から持ち上げた。

シュラにエリミアを持たせ、クオは手を顎に付けながら悩んでいるようだった。



「……確かに魔力を吸収している……何故だ?どうして吸収する事が出来る」


「さぁ。ただ、魔力を補給するときは人間と同じ方法のほうが、楽で沢山吸収できる事がわかります」


「ふむ。我ら精霊は眠る事はあるが、食べる必要は無いからな……」


「えと~、話に置いてけぼりなんですが?」



そこでようやく零香の存在を忘れていた事に気づいたのか、エリミアとクオは同時に「ごめんなさい」「申し訳ない」と言って頭を下げた。

そこに、今まで黙って話を聞いていたエリクが混ざる。



「簡単に言うと、契約とは精霊にとってなんなんですか」


「人間で例えると、食事ということになるな。我らは、契約をすると自然からの魔力の供給がほんのごくわずかになる。それだけだと、自分の身が保てない。だから、契約者から魔力を貰い、自分の姿を保つのだ。その代わりに、契約者に忠誠を誓い、契約が解けるまで仕え、自分の力を分け与えるのだ」


「なるほどね。だから、シュラと契約をした方がいいって言ったのか」



零香の言葉にクオは頷く。

そして、エリミアを見ながら首を傾げる。



「ただ、なんでこやつが契約もせず動けているのかがわからぬがな」


「それは、私にもわかりません。まぁ、どうでもいいですけど」



エリミアはそういいながらため息をついて、軽い身のこなしで零香の腕の中へ飛び込んだ。

零香は驚いたが、満面の笑みでエリミアを受け止めた。

その笑みに、周りにいた男女を含む全ての人たちが硬直した。

だが、それを気にせずエリミアは零香の腕の中で、同じように微笑んで言った。





「私は、零香の傍にいるだけでいいんですから。そんな事知らなくても、別にかまいません」





その言葉に零香は、心から喜んだ。そして、エリミアを強く抱きしめながら「ありがとう」と言って微笑んだ。

エリミアは頷きながら、その小さな手で零香の頬に触れ、優しく撫でた。



「………ははっ、それは確かだな。我も傍にいたいから、契約したような物だ」



その様子を見ていたクオは苦笑しながら、腕の中にいるシュラを地面に下ろす。

すると、シュラはゆっくりと零香の傍に来て、零香の左手を握った。



「何?」



零香はシュラの頭を撫でながら、視線を合わせるため身を屈めた。

シュラは少し目を横にやりながらも、そっと零香の手を握っている手を持ち上げ、クオと同じように指輪に口付けた。

すると、小さな鈴の音がリィンと鳴る音が聞こえたかと思うと、指輪の形が変わっていた。

正確には、指輪の模様と石が変わっていた。

ついさっきまでは、エメラルドの石しかはめられていなかったが、その石を取り囲むようにしてオレンジ色の小粒の石が何個も付いているのだ。

模様もシンプルだったものが、複雑な物に変わっていた。

突然の変化に唖然としていたが、今度は別の事で驚愕する事になった。



「これで、ぼくはれいかのものだよ。ずっと、まもるからねっ!」


「……シュラ……?」



シュラが、初めて言葉を話した。

舌足らずな感じがするが、ちゃんと言葉を話していた。驚いて、何度もシュラを軽く手で叩いてしまい、泣かれて慌てて謝る羽目になった。

シュラは、泣きながらそれでも嬉しそうに頬を染めて零香に抱きついていた。



「ふん。で、主よ。やりたい事があるのではなかったのか?」


「あっ、そうだった。剣は本当の(?)持ち主に返したから……」



そういいながら、零香は目線を斜め上にしてそこに立っていたエリクに向ける。

エリクは、あくびを噛み締めながら、零香の意味ありげな視線を受け取って、首を傾げた。



「エリク様。晩御飯まで少し、時間を頂いてもよろしいでしょうか」


「えぇ、別にかまいませんよ。何をするのですか?」


「それは、お楽しみということで。……エリミア、カミィラを呼んできて。シュラは、リュナミスさんを。クオは、人が住んでいなくて広い場所を探して」


「わかりました」「引き受けた」「あ~い!」



3人は、それぞれの役目を済ませるため、3方向に分かれて走っていった。

その背中を見送り、零香はエリクと向かい合った。



「エリク様。少し、魔法の使える方と強い兵士の方を数名、貸していただけませんか?」



零香の言葉に、エリクは苦笑を浮かべて後ろを指差した。

エリクの背中に隠れていて見えなかったため、横から覗くように見ると



「おっしゃぁあああああ!何やるかわからないけど、準備するぞ!!」


「了解!武器など部屋から取って来ます!」


「少し、準備運動しておこう」



兵士達がすでに準備をし始めていた。

武装しているあたり、零香の考えを察したのだろうか。まぁ、どうせ後で装備してもらおうと思っていたから好都合だった。

ただ、元気がありすぎるため、空回りしないだろうか。と心配はしたけど。

その様子を見ながら、零香とエリクは視線を交わしながら、微笑んだ。



「さて、僕も準備をしてきます。剣が必要でしょうからね」


「えぇ、御願いします」



零香は笑ったまま、部屋に戻っていくエリクに頭を下げた。

エリクが部屋の中に消えていったのと同時に、クオが空中から姿を現した。

風を利用した、瞬間移動をしてきたらしい。

そのまま、零香はクオが調べてきた場所に向かった。


そこは森の開けた場所で、ある程度大きい物音がしてもクオが風で音を遮断できると聞いて、もっと広げるため樹を魔法でなぎ倒していった。

もちろん、後で合流したシュラに、樹はどこかに積み上げてもらった。

十分の広さになった広場に、少し満足しながら頷いて、零香は皆が来るのを待った。

心の中で、わくわくする気持ちが溢れすぎて待っても待ちきれなかった。

















いきなり零香の契約精霊に呼び出された彼らは、エリミアの魔法ですぐに目的地に着いた。

周り半径10kmほど芝生も無い地面が広がり、その周りを壁のようにして樹が生えていた。

呼び出した本人を探すと、すぐに見つかった。



「あっ、ようやく来ましたね!待ってましたよ」



黒曜石のような黒く長いをなびかせ、彼女は広場の中心に立っていた。

その目は、夜でもわかるほど子供のようにキラキラと光っていた。



「で、ここで何をするつもりなんだ?」


「ん~、最初は私の魔力を試してみたいですね。魔力の強い人で、防御魔法が使える方少し集まってください」



彼女はそう言って、今自分が立っている場所から手を振った。

そこに兵士が数名と、殿下が歩いていった。俺も一応防御魔法は会得しているから、彼女の傍に近寄る。

彼女は目の前まで来たメンバーを一通り見て、何度も頷きながら考え込んでいるようだった。



「よしっ、それじゃあ皆さん、ここに立ってください」


「ここ、でいいんですか?」



彼女と入れ替わりで殿下が立つと、彼女は微笑んで数mほど離れた。

その間に、殿下を囲むようにして立つ。何が起こるかわからないため、一応用心したほうがいいだろうという事で、殿下の執事からアドバイスを貰ってきている。



「で、俺達はどうすればいいんだ」


「これから、私が魔法を使うんで、皆さんの使える最高の防御魔法で受け止めてください!」


「了解した」



彼女の声を聞いて、精神を落ち着かせ、魔力を高めていく。

周りの兵士達も同じようにして魔力を高めていくのがわかる。ただ、殿下は平然とした様子で立っている。まぁ、彼は上級魔法が使える。いざとなれば、遠くで見守っているカミィラと殿下の執事が助けに入るだろう。

魔力を極限まで高め終えると、彼女に向けて上に手を上げる。

彼女はそれを見て頷くと、手を大きく広げ、魔法を詠唱し始めた。



「―――氷よ、全てのモノを凍らせる力となり―――」



彼女の凛とした声が辺りに響き渡る。

それと同時に彼女から凄まじい魔力があふれ出てくるのが、体でわかった。

急ぎ、魔法耐性の強い防御魔法を殿下を除く、全員で唱え始める。



「「「魔力よ、我の願いし形になりて」」」


「―――強固なる壁を打ち砕く、力となりて――――」


「「「我らを守る、強固なる盾となれ」」」





そして、同時に詠唱を終える。





「―――極限まで砕け!アイススピア・レイン!!―――」


「「「プロテクション!!」」」




この場にいる全員を守るかのように広がる青白い光に、数秒の差で氷の槍が降り注いだ。

三重にして重ねられた、魔法特化の防御魔法にすぐさまひびが入る。

魔法を保つために貯めていた魔力が徐々に消費されていく。だが、その量が多すぎる。

気を緩めると、すぐに魔法が効力を無くすことになる。彼女の魔法が終わるまで、耐えなくてわ……。



「なっ!どんだけ強い魔力持ってるのよ!?」


「集中しろ!気を緩めると、すぐに壊されるぞ!」


「りょっ、了解しました!!」



気を引き締めなおしたと同時に、予想外の事が起きる。



「―――炎よ、全てのモノを溶かす力となり―――」


「何で次の詠唱を始めてるんだ!!」



思わず彼女に向かって叫ぶように言うと、「今度は力を貯めてから打ちますから~」と楽しそうな声で返事をされた。

今の状況で次の魔法を打たれたら、防御魔法が壊される可能性が極めて高い。



「副隊長っ!一枚目、壊れました!」


「お前は次の魔法に備えて、魔力を貯めなおせ。二枚目、耐えられるか?」


「まだ大丈夫です。次の魔法まで、持つでしょう」


「必ず持たせろ。……殿下?」



兵士達に指示を送っていると、殿下が片手を上に上げ、瞳を閉じている。



「僕も、参加させてもらいましょう。―――聖なる光、我らを守るため、具現せよ―――」



その言葉と同時に、殿下の唱えた防御魔法が現れる。

巨大な金色の盾が二つ目の前に現れ、氷の槍を防ぐ。だが、これで終わりではない。



「更に、魔力を吸収し、己の力となせ。ホーリー・プロテクション」



盾は氷の槍が当たるたび、徐々に大きくなり、全ての攻撃から守るように俺達の唱えた防御魔法を天井を覆った。

その時、彼女が笑ったのが見えた。



「―――光よ、天より降り注ぎ、悪しきモノを滅す、雨となれ―――」


「詠唱中なのに、魔法を変えた!?」



兵士が驚いて、気を抜いた瞬間、彼女はその隙を付いて詠唱を終える。




「―――セイクリッド・レイン―――」




彼女の手から金色の光が現れ、光から無数の光の雨が降り注ぐ。

それを受け止めながら、殿下は唇を噛んでいた。



「殿下!!」


「受けきれるか、わからないですね。結構、辛いです」



殿下の言葉に、兵士達の顔が青ざめていくのがわかる。

殿下は、この国で2番目に魔力が強く、彼が受けきれないという事は我々には到底無理だという事。

防ぎきれない。

彼女にすぐに止める様合図しようとした時、彼女の腕が別の方向へ向いた。

途端に、光の槍が消え、安心して防御魔法を消す。



「ふぅ…疲れた……」



腰を地面に下ろして、ため息を付く。そして、彼女のほうをもう一度見る。

彼女は真剣な表情で地面を見下ろし、すばやい動きでこちらを見ると、叫んだ。



「そこから離れて!!」


「「っ!!」」



その声に従うように、呆けている兵士を抱え、跳躍する。

殿下が同じようにもう一人の兵士を抱え、同時に観客の場所まで着地する。






その瞬間、つい先ほどまでいた場所から何かが飛び出した。続くように8つほど黒い物体が飛び出してきた。

それと共に辺りに広がる、あの嗅ぎ慣れたにおい。


皆がそれぞれの武器を取る中、殿下とその執事だけはいつもと変わらぬ様子で立っていた。

彼の視線は、彼女に向いたまま。




「こんな所で魔物のお出ましですか」


「殿下」




「丁度いい、彼女達がどんな力を見せてくれるのか、観客に徹する事にしましょう」




入団試験です。――彼はそう言って、魔物たちの真正面に立つ彼女達を見て、笑った。

上司に当たる殿下の言葉に違和感を覚えながら、その言葉に従う。



「……了解、致しました」




その視線は彼女を見つめながら、助けに入る事のできない自分を憎んだ。

上に逆らう事の出来ない、騎士としての自分を憎んだ。

ただ、無事でいてくれと心の中で祈る。




そして、魔物が彼女達に襲い掛かった。











今回初の戦闘シーンです。

書いてて、ものすごく難しかったです。

次回の話は全部戦闘シーンになるので、多分、結構時間が掛かると思います(・ω・;)


上手く小説が書けるようになりたいな・・・



感想・ご意見、お待ちしております!!^^



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