表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
23/51

クロッカス村4-2


途中シリアスです。

零香の過去の話が主です。暗いです。


何故私は暗い話に持っていこうとするんだろう(-ωー;)



それでは、どぞ




一行は雑談をしながら、目的の店の前まで来た。もうすでに看板は掛かっていて、店の扉は少し開いたままだった。

零香は中を窺うように扉を開いた。



「アミュエルさん、おはようございます」



そう言いながら扉を開いた瞬間、何か金属の物が連続で落ちる音が聞こえた。

驚きながら、慌てて店の奥へ走ると



「いたたたっ………あっ、いらっしゃい」



カウンターの向こう側に、本やビンやいろいろな物の下敷きになったアミュエルがいた。

笑みを浮かべながらアミュエルは立ち上がると、「ごめんなさいね」と謝ってカウンターの下から椅子を取り出し、座った。



「さてと……で、皆さんお揃いでどうしたのかしら?」


「切り替え早いですね……」


「商売人だから、当然よ」


「いや……」


頭にイヤリングやネックレスを乗せた状態で言われても、説得力は無いような…。

さらに、乗っている事に本人は気づいていない。

零香は、少しカウンターに乗り上げながらアミュエルの頭の上に乗っている物に手を伸ばした。

伸ばした瞬間、アミュエルの瞳がキラーンッと光ったような気がした。



「隙有り!」


「えッ!?」



いきなり手首を掴まれ、驚く間もなく、いつの間にかアミュエルに横抱きされていた。

何度も瞬きしながら横を向くと、後ろにいた他の皆が揃って零香に向けて親指を立てていた。

まるで、「行って来い」と言っているかのように。



「よしっ。まずは採寸してデザインを決めて、それから…うふふふふふふふ」


「怖い、この人怖い。別人になってませんか!?」


「……そうねぇ。丁度いいから、他の人たちも採寸させてもらおうかしら?」


「無視ですか」



アミュエルは零香の声を無視して横抱きにしたまま、後ろを振り返り大きな声で叫んだ。



「アラト!!リック!!ちょっと手伝って頂戴~!」



すると、上からどたどたと足音がして階段から、リックとリックが大人に成長したような姿の男性が降りてきた。



「は~い」


「あいあい」



二人は返事をすると、すばやく動いてリュナミスとエリクの腕を掴んだ。

そして、そのままずるずると上に連行されていく二人。シュラとエリミアは自分でついて行った。

呆然としている零香は、そのままアミュエルに同じように上に連行された。

上に上がるといくつか部屋があり、その内の一つにアミュエルは入って零香を椅子の上に座らせた。



「さてさて、どんな踊り子の服装が似合うかしらねぇ」


「あの…私、頼んだ覚え無いですけど……」


「頼まれたのは、パルさんからだから」



零香は握り拳を作りながら、頭の中でパルサーシャの笑みが思い浮かんで、少し怒りがこみ上げてきた。

そんな零香を無視して、アミュエルは机の上からメジャーのような物を取り出して、零香の体を採寸し始めた。



「ん~、細くてうらやましいな~。肌も白くて綺麗だし、何よりこの髪の艶!いいわ~」


「あのッ、アミュエルさん?」


「よし、貴女このカタログの中から好きなデザインを選んで頂戴」



そう言って渡されたのは、ファッション雑誌のような物だった。

ペラペラとめくって見ると、胸が強調されているものやほとんど体を隠せていないような物まであった。

零香は、ページをめくる度徐々に見る気が失せてきたが、ふとある物を見つけて興味が湧いてきた。

それは、蝶の模様をあしらったマーメイドドレスだった。

前々からテレビなどで何度も見かけて、一度でいいから着てみたいな、と思っていたものだ。



「アミュエルさん、このデザインがいいです」



マーメイドドレスのページを指差しながらアミュエルに伝えると、「少しデザインが違うかも知れないけど、それでもいい?」と言われ、少し悩んだが頷いた。

その後、どの色にするかとか、模様は他に欲しいか、など色々な事を質問された。

全ての質問に答え終わると、アミュエルは本とメジャーを持って部屋を出て行った。


今度は男性陣の服の採寸をするのだとか。


彼らならどんな服を着ても、華麗に着こなすだろう。シュラの服は、零香が選んだデザインの物を作ると言った。後から遅れて入ってきたエリミアの服は、彼女の好きなゴスロリにするらしい。

零香は、窓から外を見ながらどんな服が出来るのか楽しみだった。服は、すぐにでも完成できるとアミュエルが言っていたのだ。

どんなに綺麗で素敵なドレスになるんだろう……。想像するだけで、楽しかった。

ドレスの事ばかり考えていると、扉の開く音が聞こえた。

振り返ってみると、エリミアが小さな袋を抱え部屋の中に入ってきた。



「どうしたの?その袋」


「アミュエルさんから貰いました。お昼を過ぎてしまったので、少しお腹の足しにしてくれと」


「もうそんなに時間たってたのか……」


「男性陣の採寸がなかなか上手く出来なかったらしいですよ。特に、シュラ」



そう言いながら、エリミアは器用に椅子を使って机の上に座り、袋を広げた。

中には、綺麗に焼けているクッキーが入っていた。



「部屋中を走り回ったり、アラトさんのお腹を殴ったり。私が「零香に叱られてもいいの」て言って、ようやく採寸できたんですよ」


「シュラ……後でアラトさんに謝らないと」



エリミアはため息を付いた零香にクッキーを一つ、手渡した。

零香はそれを受け取り、別の椅子を引き寄せてエリミアの傍に座った。クッキーを一口かじると、ほのかな甘さが口の中に広がる。



「美味しい」


「そうですね。でも、零香の作るお菓子の方が美味しいです」



そう言ったエリミアだったが、零香が一つ食べ終わるのと同時に袋の中身を空にした。

エリミアの口に合う味だったのだろう。満足そうに零香の膝の上に座って、笑みを浮かべていた。

零香は苦笑を浮かべながら、エリミアを腕に抱きしめ、窓の外を見た。

外にはあの花畑が広がっている。



「ここの世界は、とても綺麗。人も活気づいているし、優しい」


「そうですね」


「だけど、なんでだろう。疑ってしまう。本当に、そう思っているのだろうかって」


「零香……」


「……あの洞窟に行ってから、ずっと……怖い」



自分の手のひらを見つめながら、零香は小さく呟いた。

洞窟のあの空気は、零香にとって嫌な思い出を思い出させた。


母の弟に、父や母、妹が殺された事。殺された原因は、零香だけが知っていた。

母の弟――零香の伯父は、母が大好きだった。

よく家に来ては、いつも母と一緒に遊んでくれていた。その時までは、優しいお兄さんだと思っていた。

だけど、あの日を境に伯父は人が変わったようになってしまった。




あの日、家には零香と伯父しかいなかった。

父と母は、体調を崩した妹を連れて病院に行っていた。妹は、零香と同じくらい体が弱かった。

さすがに、娘一人だけで留守番させるのは危ないと言って、母は伯父を家に呼んだ。母達とは入れ替わりで、伯父は家に来た。


零香は、いつもの様に伯父に遊んでもらおうと挨拶代わりに抱きつくと、いつもとは違う感じで抱き返された。

そして、気づいたときにはベットの上で服を脱がされていた。

泣き叫びながら抵抗したが、大人の男性の力に幼い少女が敵うはずも無い。そして、運悪くその日は大雨だった。大声を出しても、雨音で全ての音が消された。


伯父は途中、泣きながら何度も謝っていた。

ごめんね、ごめんね、と。そして、同じくらいに母親の名前を呼んだ。

零香は、母と瓜二つだった。妹は、父と瓜二つ。


零香は、幼いながらも伯父を受け入れた。可哀相だったから。それだけで。

その日以降、伯父は零香しかいない日は零香を母の代わりにした。

零香は、優しい伯父の悲しみがこれで減るならと我慢した。



だけど、そんな行為が3ヶ月ぐらい続いたとき、遂に両親にばれてしまった。

両親は、伯父に激怒した。そして、伯父が自分の気持ちを伝える前に母は言ってしまった。

「お前なんて、どこかに消え去ってしまえ!もう、私たちの目の前に出てくるな」と。

伯父は、母の事を愛していた。長年愛する人から「消えろ」と言われ、伯父はあんな行動を起こしてしまった。


台所にある包丁で、母を刺し殺したのだ。


包丁は母の心臓に深く刺さり、大量の血が体から出た。

父は母の名前を叫び、倒れそうになった母の体を抱きしめようとした瞬間、伯父に背中から刺されて、母に覆いかぶさるように倒れた。

妹は泣き叫びながら、母と父の死体にしがみついた。


零香は、それを呆然と見ていた。

優しかった伯父が、豹変したように人殺しになってしまった。

そして、大好きだった父と母を殺してしまった。


そのまま伯父は零香のほうへゆっくりと近寄ってきた。

その前に妹が手を大きく広げ、零香を守ろうとしたが両親と同じように刺されてその場に倒れた。

零香は伯父の獲物を狙うような目から、目が離せなくなっていた。


伯父は血に塗れた手で零香に触れると、その小さな手に家族を刺した包丁を握らせた。

そして「ありがとう」と呟いて、零香の手に包丁を握らせたまま自分の首を刺した。



今、思い出すだけども恐ろしい、自分の犯した過ち。







零香は、そっと窓の縁に触れながら小さく言った。



「人を信じようとするたびに、怖い」


「零香」


「信用しても、裏切られる。優しくしてくれても、利用してるだけ。そう考えてしまう」


「……私は、零香の味方です」


「うん、わかってるよ」



零香はエリミアを軽く抱きしめると、丁度いいタイミングで扉をノックする音が聞こえた。



「今いいかしら。完成したから、一度試着してみてくれない?」



アミュエルの声だった。その声に気持ちを切り替えて、明るく返事を返した。



「あっ、はーい」


「エリミアちゃんもそこにいる?」


「はい。います」


「それじゃあ、隣の部屋に来て頂戴。この部屋を出て、左の部屋よ」


「わかりました」



アミュエルはそのまま歩いて別の場所に行くのが分かった。

零香とエリミアは、そのまま部屋を出て、隣の部屋の扉を開いた。


中の様子を見て、勢い良く扉を閉めた。


すると、中からシュラが出てきて部屋に引きずりこまれた。部屋の床に座らされて、そこにいた男性陣から目を背けながら、叫ぶように言った。



「なんで皆さん、上半身裸なんですか!」



そう、この部屋にいる男性陣―――つまり、リュナミスとエリクは何故か上半身裸で立っていたのだ。

慌てる零香に対して、男性陣は慌てる様子も無く、普段どおりだった。



「いや、アミーに「採寸するから、全部脱げ!!」って言われて、これから着る所だったんだが……」


「私、服脱がずに採寸されましたよ?」


「…僕たち、脱ぐ意味無かったんじゃないんですか?」






「い・い・か・ら、早く服を着てください!」





零香は外に聞こえるような大声で、叫んだ。


その声で零香を探していたユーリリアに気づかれ、彼女が部屋に来た時は、その場にいた全員が驚いた。

その後零香とエリミアは、夜になるまでユーリリアとパルサーシャの二人に似合う服作りを手伝うはめになってしまったのであった。


先に全てが終わっていたリュナミスとエリクとシュラが迎えに来たときには、二人共死んだように床に倒れていた。

アミュエルとユーリリアも、同じように床に倒れて疲れ果てていた。



三人が呆れたのは、言うまでもない事だった。








gdgdすぎて、申し訳ありませんorz


内容的には、もうそろそろ第1章も終盤に差し掛かってきてますね。


……最後の章まで気力が持つか心配ですが、頑張って執筆していきます。



感想、ご意見お待ちしております^^



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ