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Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
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クロッカス村4-1


かぐや姫の置き土産の更新が遅れていたため、こちらの更新も遅れてしまいました。

申し訳ないです><;


眠いなか書いたため、誤字脱字があるかもしれません。








「ん……くぁっ」



まだ眠たい目を擦りながら、零香は目を覚ました。

起き上がりながら背伸びをして、軽く腕を振る。柔らかい生地のソファだったが、やはりベットで寝たほうが良かったかもしれない。

少し痛い肩を揉み解しながらベットのほうを見ると、そこはすでにもぬけの殻だった。



「少し、寝すぎたかな…?」



そう呟きながら、毛布をたたんでソファの上に置き、黒いパンプスを履く。

鏡を見ながらいつものように、髪をポニーテールにする。服は、動きやすいように無地のシャツと黒いパーカー。それとデニムのホットパンツを着た。

もう一度鏡で自分の姿を確認して、部屋の扉を開いた。


部屋を出た途端、沢山の色々な音が下から聞こえてきた。

慌しく走る足音や、楽しそうな笑い声。何か真剣に話している声や手を叩くような音。

人が増えると賑やかだなぁ、と少し笑いながら、階段を下りていった。


階段を下りると、目の前をカミィラが通っていった。



「あっ、カミィラ!おはよう」



後ろからそう声をかけると、何故か周りから音がしなくなった。

カミィラはこちらを振り向いて、その場に立ち尽くしていた。周りを見てみると、皆の視線が零香に向いている。

視線が怖い。睨まれてるような気がして、怖い。



「えっと……?」



周りを何度も見ながら、おろおろしていると、パルサーシャの部屋の扉が開いた。



「その情報は本当なのかい?嘘じゃないだろうねぇ」


「事実です」



部屋の中から出てきたのは、パルサーシャとエリク。その後ろから同じようにリュナミスとシュラが出てきた。

4人とも、零香の存在に気づかず何か話をしていた。



「おはようございます。パルサーシャさん」


「おぉ、おはよっ……」


「………」


「??」



周りの人と同じような反応をされた。

パルサーシャの顔は驚いて口が半開きだし、エリクとリュナミスは二人共表情が固まっている。

シュラはというと、何故か嬉しそうに頬を染めながら零香を見つめていた。


何故見られているのか分からず、首を傾げる。

すると、リュナミスが近づいてきて耳に顔を近づけてきた。



「何でそんな服を着てきた。パルサーシャが渡した服があるだろう」


「ちょっと試したい事があったので、動きやすい服を選んだんですけど……」



そういうと、リュナミスが小さくため息を付いて、階段を指差した。



「すぐに着替えて来い。せめて、そのズボンだけでも替えてこい」


「でも、暑いです」


「我慢しろ」



少し理不尽な気がしたが、仕方なく部屋に戻ってデニム生地のジーンズに替えた。

階段を下りると、皆何かホッとしたような顔で零香を見て、それぞれのやりたい事をし始めた。

何が原因だったのか訳がわからず、シュラとその肩に乗っているエリミアに連れられて食堂に行き、遅い朝食を取った。

食パンとスクランブルエッグに紫色のスープと色とりどりの野菜の入ったサラダを食べながら、頭の中で今日の計画を立てる。


今日は、一昨日買いに行く事が出来なかったアクゥのネックレスを買いに行って、花畑で少し花を貰って、それが終わってから魔法の練習でもしよう。


紫色のスープを一気に飲み干して、手を合わせて「ごちそうさまでした」と言ってシュラの手を握った。

シュラは零香の手を嬉しそうに握り返すと、自分の服を引っ張ってみせた。


今シュラが着ているのは、リュナミスのお古をカミィラが縫い直したものだ。白のワイシャツの袖に、黒い紐で網目模様を作ってあり、下のズボンは同じような模様が横にある。



「気に入ったの?」



シュラは何度も頷きながら服を握り締めた。

彼の表情はゴーレムとは思えないほど、人間らしい表情だった。

零香はシュラの頭を撫で、肩に乗っていたエリミアを渡してもらう。

シュラはどうやらエリミアの事が気に入ったらしく、昨日からずっと傍に居た。エリミアも悪い気はしないらしく、シュラの事を弟のように可愛がっていた。



「エリミア、今日は色々忙しくなるよ。まずは、ネックレスを買いに行こうか」


「わかりました。……あの、ちょっといいですか?」



少し言いづらそうな表情を見せたエリミアの頭を撫でながら、「なに?」と微笑みながら言う。

エリミアは懐から零香がプレゼントした赤いリボンを二つ取り出して、そっと零香の目の前に差し出した。



「髪、結んで欲しいです」


「…くすっ、いいよ。今日はどんな髪型にする?」


「零香と一緒がいいです」


「了解」



零香はエリミアからリボンを受け取ると、床にエリミアを下ろし、手櫛でエリミアの綺麗なブロンドの髪を梳く。

サラサラした髪を上に持ち上げて、赤いリボンで結んで軽く横に引く。

少し髪の毛が出てしまっているが、妥協範囲だろう。



「よしっ、できたよ~」


「ありがとうございます」



エリミアは自分の髪に触れながら、微笑んだ。

どことなく、エリミアとシュラは似た物同士なんだな、と思った。笑い方がとても似ている。

その笑顔に、時々死んだ妹の笑みが重なって少し泣きたくなる。



「零香?」


「あっ、ごめんね。少し考え事してた。……行こうか」


「はい!」


「……!」



二人同時に笑顔で返事をする姿に、自然と笑みが零れた。

エリミアはシュラの肩に乗せ、シュラと零香は手を繋いで外に出ようとした。



「あっ、ちょいとお待ち!」


「?」



後ろからパルサーシャの声が聞こえ、後ろを振り向く。

パルサーシャは横を指差しながら、笑っていた。彼女が指差した方向を見ると、そこにはリュナミスとエリクが立っていた。

リュナミスは、白いシャツに黒いベストとネクタイを身につけ、腰には長剣をつけて壁に寄りかかっていた。

エリクは、ブイネックのシャツと青いズボンを身につけ、腰にはリュナミスと同じように剣を着けていた。



「リュナ坊も王子様も、アンタに用事があるらしいよ」


「私に……?」



少し首を傾げながら彼らを見ていると、エリクが視線に気づき笑顔で手を振ってきた。

右目は黒い眼帯で隠してあった。

彼がどうやら克服したらしい。とても、喜ばしい事だ。


シュラの手を握りながら、彼らに近づく。



「私に何か御用ですか?」


「えぇ、少し僕たちに付き合って欲しいのです」


「何に付き合えばいいですか?こちらも用事があるので、早く済ませたいのですが」


「実はパルサーシャさんに頼まれまして、カミィラさんの服を注文して来いという事で、女性としての意見を、というわけです」


「あっ、それなら一緒に行きましょう。私たちもそこに用事が合ったので、丁度いいです」



そう言って横目でシュラたちを見ると、二人共頬を膨らませて少し怒ったような表情で零香を見上げていた。

苦笑いしながら、「また今度、3人だけで行こ?」と言って右手の小指を出すと、納得しないような顔でシュラも小指を出した。

エリミアはしぶしぶといった感じで、シュラと零香の指の上に手を置いた。



「ゆびきりげんまん、嘘ついたらはりせんぼん、の~ます。ゆびきった!」



そう言って笑顔で指を離し、二人の頭を軽く撫でる。



「さて、どうやら終わったようですし、行きましょうか」


「はい」



頷きながら、大きな声で「いってきます!」というと、それぞれの場所から沢山の「行ってらっしゃい」の声が聞こえた。

さすがに同時に言われて、驚いた。その様子を見ていたのか、リュナミスとエリクが同時に噴出した。



「……笑わなくてもいいじゃないですか」



笑う二人を睨みながら、零香は扉を開いた。

開いた扉の前に、誰かが居た。



「これは……すれ違いにならなくて良かったですわ」



水色の髪に紺色の瞳を持った、綺麗な女性が目の前に居た。

彼女は淑女の礼をすると、驚き硬直している零香の前で膝を付いた。そして、頭を下げる。



「わたくしは、ユーリリア・キリアメス・トリメンティアと申します。レナード様の御命令で、今日より貴女様に御仕えさせていただきます。どうぞ、宜しく御願い致します」



聞き覚えのある名前を聞いて、ハッとなった。慌てて、地面に座るユーリリアの手を握って立たせる。

零香より2歳ぐらい違う彼女の服に付いた土を落とし、家の中に入れる。

ユーリリアは首を傾げながら、零香を見つめていた。



「あの、今さっきレナードさんの名前を言いましたよね」


「はい。わたくしは、レナード様に御仕えしておりました」


「何で来たんですか?」


「貴女様に御仕えするためでございます。レイカ様」



零香は何度も横に首を振って「要りませんから」と断った。

ユーリリアは困ったような表情になり、頬に手を当てた。



「困りましたわ。わたくしはレナード様の御命令で、貴女様を素敵な踊り子に仕立てるまで帰ってくるな、と言われてしまいましたの」


「え?」


「そして、お守りするようにとも言われておりますわ」



ユーリリアは、零香の横に立っていたリュナミスやエリクを一目見ると、最初にしたように淑女の礼をした。



「お初にお目にかかります。リュナミス様とエリク様、で合っていますでしょうか」



名前を呼ばれ、二人は顔を見合わせてから、頷いた。

ユーリリアは、軽く微笑むと、彼らの前に膝を付いて頭を下げた。



「レナード・アルバドス・エルクーレ様より、伝言でございます。『領主の妻と、息子達に気をつけろ』だそうですわ」



その言葉に、二人の表情が硬くなった。

ユーリリアは立ち上がり、「それでは、他の方にもご挨拶をして参ります」と言って、奥へと消えていった。

彼女の後ろ姿を見ながら、零香はレナードの顔を思い出していた。

紫色の長髪と赤い瞳で、気だるそうな顔の彼を思い出して、小さく笑う。



「零香、早く行きましょう。お昼になってしまいます」


「…!…!」



そう言って手を握ってくる二人を見ながら、頷く。



「リュナミスさん、エリク様。行きましょう」


「そうですね」


「…あぁ」



笑顔のエリクと無愛想に頷くリュナミスを見て、零香は少しその表情に違和感を覚えながらも、目的地へと向かった。

零香たちの姿を見た村の人々は、恍惚とした表情で彼女達を見送った。

男性は零香やエリミアを。女性は、エリクとリュナミスとシュラを見て。


その視線に零香は気づかず、シュラと手を繋いで鼻歌を歌っていた。

エリクとリュナミスは、楽しそうな零香の後ろ姿を見ながら、優しく微笑んでいた。












新たな人物登場です。

実は、この人が番外編そのいちで出てきたあのメイドさんです。


ユーリリアさんの今後の扱いをどうしようか悩み中です^^;



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