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Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
20/51

クロッカス村3-1


もう、夏も近くなってきましたね。

熱中症などなどに気をつける時期です。水分はしっかりと。


今回、人物紹介のところに書いていなかったキャラが登場します。

ふと話を書いている内に思い浮かんだキャラなので、改めて後日人物紹介を書きます。



それでは、どぞ。






「彼ですよ。貴女のことを報告してくれたのは」



そう言って、隣の銀髪の王子はリュナミスさんを指差した。

私は手で窓を触りながら、訓練をしている兵士達の中にいる彼の姿を見た。

見回りをしながら、剣の素振りをしているように見えた。

視線に気づいたのか、こちらに顔を向け、彼は軽く手を上げた。その姿が異様にカッコ良く見えたのと、夢の出来事を思い出してすぐに顔を背けてしまった。


隣で王子が笑ったのが聞こえた。見ると、窓の外を見ながら笑っている。

不思議に思いながら、じっと見ていると、いきなり腕を引っ張られた。



「わぷっ」



何故か抱きしめられた。顔が真っ赤になるのを自覚しながら、腕から抜け出そうと必死に腕を動かすけど、ビクともしない。

王子は私の反応が面白いのか、声を出しながら笑っていた。



「離して下さいっ」


「もう少しだけ我慢してください。面白い物が見れますから」


「面白いもの?」



いまだに王子が窓の外を向いているので、そっちに視線を向けると



「………」



無表情で私たちを見るリュナミスさんが見えた。

無表情なはずなのに、何故だろう。雰囲気が怖い。

剣を地面に突き刺して、彼はどんどんこちらに歩いてくる。後ろに黒いオーラが見えたような気がして、腕から逃れようと王子の胸を押した。

一瞬、離れたように感じたけどすぐにまた腕の中に閉じ込められた。


その途端、窓の横にあったドアが勢い良く開いた。




「……殿下、いい加減休憩は止めていただきたいのですが」


「もう少しだけ休ませて下さい。あまり喉の調子が良くないんですよ」


「そう言って、もうすでに2時間休んでおられますよね?」


「そうでしたっけ。もうそんなに経っていたんですね」



あどけない表情で答える王子に対して、リュナミスさんは無表情に私を見つめていた。

その視線に、体から体温が無くなっていく感じがした。すぐに王子の腕の中から離れる。

今度は簡単に抜けられた。彼らから離れるように、私は身近にあったものを掴んで家を飛び出した。

後ろで「キアラさん、どこに行くんですか」という声が聞こえたが、無視する。













そのまま、村の広場を通り過ぎ、以前来た花畑の場所まで走った。

満開に咲き誇る花たちを踏まないように、できるだけ早歩きで芝生のある場所まで歩いて、座り込んだ。

落ち着かない自分の心臓を片手で押さえながら、私は汚れるのも気にしないで、その場に寝転がる。

空がオレンジ色から紺色になっていくのを見ながら、心を落ち着かせる。



「何で…っ」



あの人はあんな事をしたんだろう。何が「面白い物が見れますよ」だ。

完全に私で遊ばれた感じがした。

空から視線をずらし、体を横にして目の前にある白い花に触れる。

自然と気持ちが落ち着いてくる。昔から綺麗なものを見ると、いつも心が落ち着いた。


そっと花を手折ると、顔に近づけた。甘い花の香りが、鼻の中を通り過ぎる。

今日はずっとここに居ようかな。

そうと決まれば、少し試してみたい事をしよう。


私は白い花の茎を千切り、花の部分を持って少し力を込める。

頭の中で氷のイメージを考え始めると、徐々に花が凍っていく。数秒後には、完全に白い氷の花が出来上がった。



「出来たっ」



出来た喜びに、私は氷の花を頭上に掲げた。

触っても冷たくないのは、やっぱり魔法のおかげだろう。うまく出来てよかった。

出来上がった氷の花を芝生の上に置き、今度は別の形の花を氷の花に変えた。



「♪」



面白くなって、今度は別の魔法を使う事にした。

立ち上がり、ワンピースに付いた芝を払いのけると、私は花畑の横にある森の中に入っていった。

そして、手ごろの太さの樹を見つけると頭の中で風をイメージする。

周りに風が吹き、樹に目標を決めると、風が刃の様に樹の表面に傷をつけた。



「おぉ~!すごい、すごい」



だけど、何か物足りなかった。何が物足りないのか考えていると、ゲームの画面を思い出した。

それで、思いついた。

そうだ、名前が無いんだ。そうと決まれば、行動は早かった。

頭の中でもう一度氷のイメージをしながら、樹に向かって叫んだ。



「アイスボルトっ!!」



イメージ通り、空中から氷の矢が数本現れ、樹を貫いた。樹は何本も氷が刺さったまま、重い音をたてて地面に倒れた。

やってみてわかった。これは、楽しい。

倒れた樹を見ながら、手を樹に向けながら今度は風をイメージした。



「ウィンドカッターっ!」



手から鋭い風の刃が飛び出し、樹を切り刻んだ。後に残ったのは、木の薪が数十本だけだった。予想以上の魔法の出来に、自分で自分に拍手をした。

ゲームの中の魔法使いの気持ちが、ほんの少しだけ分かった気がする。


良いストレス発散だ。


どんどん魔法を使って、あたり一面の樹を薪に加工していった。

薪の山が2つほど出来た頃には、頭の中でイメージしなくても技の名前を叫ぶだけで魔法が使える様になっていた。



「便利だけど、使い道間違えると死人を出しそうな威力……」



自分の手と薪の山を交互に見ながら、これからどう処理しようと悩み、ふと昨日の昼間に使った魔法を試してみる事にした。

使うにも、まだコツが掴めていないから上手くいくかわからないが、物は試しだ。



「召喚!」



その言葉と共に地面が軽く揺れ、土が音をたてて小さく盛り上がった。

ボコッという音と共に土の中から顔を出したのは、髪が黒い小さな男の子だった。

男の子は少し茶色がかった黒い瞳で、私を見ていた。首から下は地面に埋まったまま。



「……え?」



私が首を傾げると、男の子も同じように首を傾げた。

さすがにそのままの状態にしておけないから、男の子の手を握って土の中から引っ張り出す。

簡単に土の中から抜けた男の子を見ると



「……」


「………?」



全裸だった。

数分ぐらい沈黙。何回か男の子に頬を叩かれて、ようやく思考が元に戻り始めた。

慌てて男の子を抱きかかえ、花畑のほうに戻る。確かあそこにはカミィラ達の家から掴んできた毛布があったはず・・・。

すぐにそれは見つかった。すぐに、花の上に投げ出されていた毛布で男の子を包む。


男の子は抵抗もせず、毛布を広げたり伸ばしたりして遊び始めた。

時折、私のほうを見て何かを待っているような表情を見せたが、周りが気になるようで花を覗き込んだり、私が作った氷の花に興味津々の様子だった。


どうしよう…この子。


私の頭はその事だけでいっぱいだった。

もし連れ帰ったら、絶対に何か言われる。でも、連れ帰らないとこの子はどうなる?

そもそも、私はゴーレムを呼び出そうとしたはずなのに、何で男の子が全裸で土の中から出てきた。



「はぁっ…どうしよう」


「……」


「ん?」



男の子が私の服を引っ張り、村のほうを指差す。

何があるんだろう、とそっちのほうへ顔を向けると、向こうに気づかれて凄い形相で睨まれた。

思わず、傍にいた男の子を抱きしめた。


私、何か悪いことした?


彼はすぐに私の目の前にやってきた。上から見下ろされて、怖さが2倍。

綺麗な顔がさらに怖さを引き立たせていた。



「何していたんだ、こんな時間まで」


「……ストレス発散してました」


「ストレス発散で何時間、家から出ていた」


「1時間ぐらいですかね」


「3時間だ」



彼は呆れたようにため息を付いた。私は大体1時間ぐらいしかたってないだろうな~と思っていたんだけど、結構長くやってたんだな…。


ストレスが溜まってたんだな、いつの間にか。



「自己完結させるな」



軽くコツンと頭を叩かれた。

すると、腕の中に居た男の子がいきなり飛び出して、視線を遮る様に腕を広げた。

突然の男の子の登場に、彼は驚いていた。



「どこの子供だ?お前と同じような髪の色だが」


「あ~…その子は……」



実はゴーレム召喚しようとして、男の子召喚しちゃいました。って言えるわけない。

どう説明しようか悩み始めたとき、いきなり男の子が拳を上に上げた。



「っ!」



危険を察知して、リュナミスさんが後ろに下がる。

下がると同時に男の子の拳から放たれた紫色の光が、空の雲を突き破った。

呆然とその光景を見ていると、男の子がすばやくリュナミスさんの懐に入る。そこから男の子と彼との攻防戦の始まりだった。

攻めているのは男の子ばかりで、子供とは思えないスピードで魔法のようなものを使っていた。

リュナミスさんはソレを避けるか、剣でそらすぐらいで手一杯のように見えた。

見てるほうは楽しいけど、やってる本人達は真剣そうに見えた。

それが15分ぐらい続き、その時にはすでに、本格的な戦闘を始めそうな雰囲気になっていた。



「もうそろそろ、止めた方がいいかな」



まぁ、見るのに飽きてきたのもある。

なによりも、今さっきから村の子供達が育てていた花たちを踏みまくっている事に怒りが芽生えた。

このぐらいにしておかないと、明日子供達に会ったら申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

原因は、私が家から出たのが原因だから。さらにその原因を作ったのは、あの王子だけど。



(なるべく周りに被害の及ばないように、確実に動きを止めないと)



そして、思いついたのは



「タライ落とし」



二人の頭上に突然現れた金のタライが、勢い良く重力で下に落ちる。

二人は気づかず、睨み合ったままだった。だが、相手の頭上に何かあるのを見て同時に上を向いた瞬間


ゴンッ×2


見事に顔面にクリーンヒット。

すぐに樹の後ろに隠れ、少し時間を置いてからそっと覗いてみると、二人とも何があったのか分かっていないようで、鼻先を押さえながらタライを見て首を傾げていた。



「ふっふふ」



その様子に少し声を出して笑ってしまった。ハッとなって気づいたときにはもう遅く、目の前まで二人が歩み寄っていた。

片方は目に涙を溜めて、もう片方は無愛想な顔の中に少しの怒りを含ませて。



「えっと、その、ごめんなさい」



とりあえず、少し頭を下げながら謝った。

恐る恐る顔を上げると、突然男の子が抱きついてきた。首を横に何度も振りながら、小さな体でぎゅっと抱きしめられる。

少し驚きながらも母性本能をくすぐられ、少し土で汚れた黒髪を撫でた。

柔らかくサラサラな髪を触りながら、涙で濡れた顔を服の裾で拭いてあげた。

男の子は泣くのを止め、年相応の明るい笑顔をみせた。かわいいな、と思いながらもう一度頭を撫でる。



「はぁ……で、この子は誰なんだ」



男の子の存在に怒りも収まったのか、いつも私に見せる顔のまま、彼はまたため息をついた。



「それが、私にも分からないんです」


「懐いているようだが……初対面なのか?」


「はい。名前も知りません」



抱きついたままだった男の子を体から剥がしながら、頷いた。

リュナミスさんは、少し眉間にしわをよせて男の子の様子をじっと見ている。

すると、男の子は何か思いついたかのように地面に座り込んで何かをし始めた。

不思議に思い屈んで見ていると、男の子は石を片手に何か絵を描き始めていた。


最初は髪の長い女の人。その隣に、小さい男の子と大きな人のような物。

男の子と大きな人の間には、イコールのマークが書かれ、女の人に向かって矢印が書かれていた。



「何の絵?」


「……」



男の子は口で言わず、女の人を指差した後、私を指差した。

「私?」と言うと、男の子は頷き、小さい男の子と自分は同じであると動作で伝えた。



「この人は?」



隣を指差しながら質問すると、男の子は少し悩んだ後、その下に何か文字を書き始めた。

見覚えのある文字で『ゴーレム』と書かれていた。

そこで、ようやく分かった。



この男の子は、あのゴーレムなんだ。と



「って、おかしいよ!何で人の形になってるの?」


「……?」



男の子は少し考え込むと、もう一度地面に文字を書き始めた。

『一つ目の理由。日常生活は、こちらのほうが便利だと思ったから。本当の姿は、これ。』

さらに付け加えて

『二つ目の理由。まだ力が不安定だから、主の傍にいるほうが制御しやすい事に気づいた。だからこの姿』

男の子はそこまで書いて、一旦止まった。そして、今度はこの世界の文字だと思うもので続きを書き始めた。

さすがに、まだ読めないので断念してリュナミスさんと交代した。



「・・・なるほど、そういうわけか」


「……」



リュナミスさんはその文字を見た瞬間、目を細めた。

真剣な表情で男の子と同じように、地面に文字を書いて伝え合っていた。

仲間はずれにされたような気分になったが、仕方ないと諦めて、花を見ながらお客さんの泊まる部屋に飾る花を摘み始めた。

ついでに氷の花を追加して、大き目の花束を2つほど作った。





その後、帰りが遅いのを心配して迎えに来てくれたエリミアとカミィラに氷の花をプレゼントして、私達は家に帰った。

家に帰ると、男の子は家で私と同じように居候という立場になった。

世話は最初、私とエリミアに任されたけど、カミィラが是非やらせてくれと言ったので、譲った。

譲った時のカミィラの嬉しそうな顔、まるで恋した女子の顔と良く似ていた気がする。


これからが楽しみだ。と、カミィラと兵士の人達が作った晩御飯を食べながら、エリミアと二人で笑った。






その横で、リュナミスと王子が真剣な表情でこの国の存亡に掛かる話をしているとは気づかず、零香は食事を楽しんだ。









今回はギャグを多めにしようとして、中途半端なことになってしまいました。

やっぱり、眠気と格闘しながら書くものじゃないですね(・ω・;)




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