洞窟にて3
前回から結構日数が経ってしまいました…(・ω・;)
そして、勢いで書いてしまったので急展開で話が進んでます。
本当はギャグを目指したかったけど、前回があれだったのでシリアスです。
前置き長くてすみません。それでは、どぞ
少し時間をさかのぼり、二人を捜索中の騎士団+α。
あれから熊を無理やり起こし、兵士の一人に熊の言葉を通訳してもらいながら、森の奥へと進んでいた。
熊の説明だと、もうそろそろ着いてもいい頃合いだった。
途中、カミィラが歩きつかれ「背中貸して~」と言っていきなり飛び掛ってきたので、仕方なく彼女を背に背負い、彼は歩いていた。
「まだ着かないのか」
「……もう少し先、だそうです。入り口に分かりやすく看板があるはずだ、とも言っています」
答えたのは、熊と共に先頭を歩く、あの女装好きの兵士だった。
実はこの兵士、動物を使った諜報任務を得意とし、こうして動物達と意思を通じて会話をする事ができる。
まぁ仕事は完璧なのだが、性格が……。趣味も重なり、今までいろいろな隊をたらい回しにされて、4年前この隊に所属することになった。
基本、この隊は王子の護衛を中心に様々な仕事をこなす。その中で彼の能力は、重宝している。
今回も、役立っている。の、だが………。
「計画が狂うな~。せっかく僕の作った色々な服を着せようと思ってたのに~!」
「わかったから、さっさと歩け」
「むっ、了解でーす。はぁ………」
肩をガクリと落とした状態のまま、隣を歩く熊を叩く兵士を見ながら、ため息をつく。
そして、いまだ手に持っている包みを見つめた。
彼女に渡そうと思っていた物だ。カミィラに買って帰ったモルルと一緒に買った。
もう一度ため息をつき、その包みをコートのポケットに入れる。
すると、上から微かに笑い声が聞こえた。
「……カミィラ、何がおかしい」
「ふふふっ、なんでもないよ~♪」
それでも笑う事を止めないカミィラを地面に落とす。そのまま先に進む。
ある程度進み、後ろを振り返ると「痛いよ」と言いながら地面に座り込んでいるカミィラに、パルサーシャが手を伸ばす。
パルサーシャの手を握りながら、カミィラは立ち上がって服についた土を払い落とした。
側にはエリミアがいた。
頬を膨らませて、怒りをあらわにしているカミィラを見て、苦笑する。
「自業自得だ」
そう呟くと、目の前を歩く兵士が「看板ありましたよ~、副隊長」という呼び声が聞こえ、遠く微かに見える熊と兵士の下へと、走る。
「この子が言うには、この奥にいるそうですよ。こんなことを計画した主が」
そういいながら、兵士は看板の横にある洞窟の入り口を指差した。
看板には『守護の洞窟』と書かれていた。
守護の洞窟、それはこの国に点々とある精霊を祀った洞窟の名称だ。それぞれの洞窟の奥に精霊の宿っているという法具がある。
クロッカス村の守り神の精霊の剣は、ここに奉られている物だった。
何故、こんな所に二人を連れて来いと言ったのだろうか。
普段、ここには誰も訪れない。訪れたとしても、祭りの時ぐらいでリュナミスも数回程度しか来た事がない。
奥に行った事があるのは、パルサーシャぐらいだろう。彼女はここの管理者だ。
彼女なら、何か知っているかもしれない。
「パルサーシャ、道案内できるか」
彼女は、軽くため息をつきながら頷いた。
「面倒なんだけどねぇ。道案内なんて、あたいのしょうに合わないよ」
彼女はそういいながら、リュナミスの横を通り過ぎ、洞窟の奥へと入っていった。
リュナミスは、隊の兵士達に命令をし、先頭を照明係の魔術師を一人歩かせ、パルサーシャの後を追った。
洞窟の中に入ると、生暖かい風が体に纏わりつくように吹いていた。
そんなことは気にも留めず、パルサーシャは明かりを持たずに先に進む。その後ろを魔術師、リュナミス、カミィラとエリミア、王子の執事がついて行く。そのさらに後ろを兵士達が歩く。
最初、狭く一人ぐらいしか通れなかった道は、進むにつれて幅が広くなり5分程度歩くと、三人が横に並んで通れるぐらいの幅になっていた。
周りを見渡しながら、リュナミスは精神を研ぎ澄ませていた。
周りの兵士達も同じようにしているのがわかった。ただ一人、パルサーシャだけが鼻歌交じりに先に歩いていた。彼女は、このにおいに気づいていないのだろうか。
魔物特有の魔力のにおいを。
魔物はあらゆる魔力を餌とし、肉体を保とうとする。いや、本体の精神を保とうとする。
魔物とは肉体のない精神体だ。魔力が無くなれば、消える。
そうならないように、あいつらは魔力を持つモノに憑依する。そして、魔力を持つ物を餌に自分の力を貯めていく。
神を殺すために。
そして、餌の対象にされるのは、ほぼ人間だ。しとめ易く、のり移りやすい弱い動物。
魔物に狙われ、食われたモノは同族か魔物の僕になる。
だが、魔力を貯めれば貯めるほど特有のにおいを発する。それは、血のようなにおいに近い。
騎士団と魔物退治や傭兵の育成を活動の生業としている『ギルド』の人間は、訓練で魔物のにおいを体で感じる事ができる。
そしてこのにおいがあるということは、この洞窟のどこかに魔物が潜んでいるということだ。
もしかすると、熊の主とは魔物の事なのかもしれない。だが、あの熊からはそんなにおいはしなかった。
考え事をするために、精神を緩めるとその途端、どこかでなにかが壁にぶつかる音が聞こえた。
そして、微かに女のような声が聞こえた。
『コレハヨソウガイ、ダッタカナ。モウ、ヨウシャシナイ』
その声には、怒りと楽しそうな声が混じっていた。声のほうへ耳を澄ませる。誰かと会話をしているようだった。
もっと耳を澄ませると、微かに別の声が聞こえた。
「殺すなら、さっさと殺して」
彼女の声だった。
目の前を歩いていたパルサーシャを追い越し、魔力を足に込めながら高速で走る。
後ろでカミィラ達が名前を呼ぶ。だが、今は振り向くわけにはいかなかった。
彼女が危ない。
「間に合え……っ!!」
走り始めて、すぐ目の前に光が見えた。そして、魔物のにおいも強くなった。
光の中に彼女の姿が見えた。彼女は、魔物となった女性の目の前にいた。抵抗せず、魔物に髪を引っ張られた状態で向き合っていた。
「零香っ!!!」
いつの間にかエリミアが追いついてきていた。同時に部屋の中に突入すると共に、魔物がこちらを見ながら笑った。
彼女は、そのままの状態で瞳を閉じて、笑みを浮かべていた。次の瞬間
『バイバイ♪』
彼女の体に沢山の蔓が突き刺さった。そして、彼女はゆっくりと血を流しながら、地面に倒れた。
「いやぁあああああああああああああああぁああああああああああっ!!!!!!」
エリミアの悲鳴が聞こえる。
後ろから同じようなカミィラの声が聞こえる。
だが、視線だけは倒れている彼女しか見えなかった。何も考えられなかった。
近くで、魔物の笑い声が聞こえる。
『アハハハハハハハッ!!イッポオソカッタネ?ザンネ~ンデシタ♪』
血だらけの彼女を、カミィラが泣きながら必死に彼女に治癒の魔法を掛けている。だが、傷は塞がらず、彼女の周りに血だまりができていた。
エリミアが彼女の名前を呼ぶ。だが、彼女はその瞳を開こうとしない。
『ソンナコトシテモ、ムダダヨッ。ダッテ、』
それ以上、口を開くな。
『シンゾウヲツラヌイテアゲタカラ、アハハハハハハハハッ♪イキカエルワケ、ナイジャナイ』
『シンジャッテルンダカラッ♪』
頭の中で何かがプツリと切れた。
腰につけていた剣を抜き、すばやく魔物の懐に入り込む。
『!?』
「殺す」
反応に遅れた魔物に容赦なく、切りつける。だが、後一歩のところを蔓に邪魔をされた。
一旦後ろに戻り、すばやく呪文を唱える。
許さない。コイツだけは、絶対に。
「地獄の業火よ、焼き尽くせ!!」
怒りを魔力に込め、解き放つ。魔力は火の塊となり、複数にわかれ、目標を焼き尽くそうと追尾する。だが、魔物は蔓をうまく使いそれを避ける。
蔓に座り、魔物は笑みを浮かべながら見てくる。
『レイセイニナラナイト、ワタシハタオセナイヨ?キシサマ♪』
「黙れ」
『クスッ、アノオンナノコトガソンナニダイジダッタノカナ?』
「黙れと言った」
『……ア~ァ、ソンナコトイッテイイノカシラ。ジョウキョウセイリシテミテヨ』
「黙れっ!」
『アナタノタイセツナヒト、モットコロスコトモデキルノヨ?ホラ、ウシロ』
魔物が指差す方向を振り向く。
そして、驚愕した。
「お兄ちゃんっ…!!」
カミィラや兵士達の数人が蔓に首を絞められ、空中に浮いていた。パルサーシャも王子の執事も皆抜け出そうと、魔法を使ったり剣で切っていたが、すぐに新たな蔓に捕らえられていた。
地面には、すでに息絶えたであろう自分の部下達が倒れていた。
その体はやせ細り、ミイラの状態になっていた。
「貴様っ…!!」
剣で魔物が乗っている蔓の根元を切るが、魔物は軽々と隣の蔓に乗り移った。
『アララ、コワイカオ。デモ、イイワネソノヒョウジョウ。ゾクットスルワ♪』
「外道ッ」
『ヒドイワネ、マァベツニカマワナイケド。ドウセ、ワタシノショクリョウニナルンダカラ』
魔物が指を鳴らす。ハッとして後ろに下がろうとしたが、遅かった。
地面から突如生えた蔓が体に巻きつき、体を拘束された。もがけばもがくほど、蔓はきつく締め付けてくる。
魔物が満面の笑みで蔓から降りてくる。その姿を睨みつける。
『ヤッパリイイワネ、アナタ。ツギノカラダニシマショウカ』
魔物は、笑みのまま手を顔に近づけてきた。その手を避けるように、顔を背ける。
すると、魔物の表情が変わった。
『ナマイキナコゾウダ。モウアソブノモアキテキタトコロダ、オワラセヨウ』
口調も乱暴になり、怒りの表情のまま魔物は首に触れてきた。
そして、首に顔を近づけてきた。荒い息が首にかかって気色が悪い。
だが突然、体の拘束が無くなる。そして、目の前に居たはずの魔物がいなくなった。
代わりに黒髪が風に揺れているのが見えた。
そして、その場に凛とした声が響く。
「――――もうこれ以上、何もさせません」
はい、わかりやすいですね、最後w
長く日数を使ったわりに、こんな話になってしまいました。すみません。変な表記が多いと思いますが、どうかスルーでお願いします。
そして、存在忘れかけてる王子w
実は書いてる途中に王子がいない事に気がつきました。本当は、途中で登場する予定だったのに…orz
次のお話は、今回よりも更新が早いと思います。お楽しみに^^