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Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
14/51

クロッカス村2-5

ようやく、続きをUPする事ができました…

長く待たせて、申し訳ないです。


色々と修正していたら、時間が掛かりました。


それでは、どぞ。



隊の兵士達が浮き足立つのを何度も落ち着かせながら、リュナミスとパルサーシャは王子を警護しながら村に戻ってきた。

村に着くまで王子は顔が見えないようにベールを被り、執事の引く馬の上に乗って揺られていた。

リュナミスは自分の馬の手綱を引きながら、疲労と緊張から少しため息をついた。

それに気がついたのか、隣を歩いていたパルサーシャが顔を覗き込んできた。



「ん~、どうした?ため息なんかついて。それ、渡すのに緊張してるのかい?」



自分が手に持っている物を指差しながら、何故かニヤニヤしながら言ってきた。

その表情に、少しイラッときたが表情には出さない。



「別に緊張しているわけではないんだが……」



そういいながら、後ろを振り向く。

王子と執事のさらに後ろを歩いている兵士達の表情を見ると、何故か勝手にため息をついてしまう。

顔を前に向け、今までの経験を思い出しながら話した。



「あいつらが暴走しないかの方が重要だ」


「無理だろうね。必ず何か起こすだろうさ」



……即答か。

これは何か対策をとっておいた方が身のためだな。後でカミィラに説教を食らう前に。



「まぁ、今年はあの子もいるんだし、大丈夫なんじゃないのかねぇ」


「もっと酷くなると思うんだが?」


「ふふふ、まぁ帰ってからのお楽しみってことになるね。ほら、見えたよ」



彼女が手を振る先を見ると、同じようにこちらを見ながら手を振っているカミィラの姿が見えた。その隣には、彼女と彼女に抱きかかえられたエリミアが同じように手を振っていた。


リュナミスはこの村出身の兵士の内の一人に馬を任せ、彼女達の元にゆっくりと歩いていく。

パルサーシャも馬をその兵士に任せ、殿下や兵士達に少しだけ注意事項を説明し始めた。

リュナミスはそれを背中で聞きながら、カミィラ達と話を少しだけすることにした。



「おかえり!お土産ある?」



期待する目で見てくる自分の妹に、持っていた包みのうちの一つを渡す。



「街道を歩いてたら行商人が、お前の好きなモルルを格安で売ってくれた。それで良かったか?」



カミィラは話を聞かず、すでに包みを開け、モルルを一つ取り出して食べ始めていた。

そんなカミィラの頭を呆れながら、軽く撫でる。



「あまり食べると、太るぞ?」


「だいひょ~ふ、ほむくらいへぃひ、へぃひ」


「食べるか喋るかどっちかにしろ」


「ん~………」



食べるほうに集中しだしたカミィラの頭をもう一度撫で、ふと隣に顔を向ける。



「………………」


じーっとカミィラの口の中に入っているものを見続けている。

一人は驚いている顔で、もう一人は物欲しそうな顔だ。

カミィラもその視線に気づいたようで、食べるのをいったん中止して食べかけをくわえたまま、包みの中からモルルを二つ取り出した。



「食べる?」



彼女はようやく目の前のモルルに気づき、慌てたように顔を横に振った。

彼女の反応に「いいからいいから」と言って、カミィラは彼女の手にモルルを二つ乗せた。



「でも、これカミィラが……」



全て言い終える前に、彼女の手からモルルが姿を消した。

視線を少し下に向けると、口を動かしている人形が一人。

視線に気づいたのか、彼女も同じように視線を自分の手元に向け、ため息をついて人形の頭を撫でた。

カミィラはモルルを一つ取り出して、エリミアが届かない高さで左右に振って遊び始めた。

それを必死に取ろうと、背伸びをしながら手を伸ばしているエリミア。


その光景に自然と笑みが零れた。


が、すぐに異変が起きた。



「ん?」


彼女がふと、空を見上げ頭を傾げ「あれは………」と呟いた。

彼女が見ているところを見ても、ただ月が空で光っているだけで何も不自然なところはない。



「どうしたの?」



そうカミィラが言った瞬間、横を強い風が通り抜けた。その強さに腕で顔を隠し、目を閉じてしまった。次に目を開けたとき、彼女がいたはずの場所にはあの人形が倒れているだけだった。

カミィラもそれに気づき、エリミアを抱きかかえ彼女の名を叫んだ。



「レイカ!!」


「王子!!」


重なるように、兵士と執事の声が響いた。そちらのほうへ視線を向けると、慌てふためく兵士と執事が見えた。その中に、王子はいない。

パルサーシャはいつも通りで、その場に立ったままある場所を指差した。



「一瞬しか見えなかったけど、何か茶色い物がすごい速さで通り抜けて行ったよ」


「二人は!」


「見えないのかい?そこの樹の後ろのやつが」


結論を早く言わないパルサーシャにいらいらしながら、指差す場所を見て。



「……………あっ?」


呆気にとられた。


その場にいる全ての者たちが見ていたのは、森を少し奥に行った樹の後ろに隠れながらじっとこちらを見ている



熊。それも巨大な。



熊は片手に王子を抱え、もう片方の手で彼女を抱えた状態で上半身だけ樹から出していた。

パルサーシャを除いて、その場にいる者全員が呆気にとられ、熊が視線に気づいて、凄まじい速さで森に消えていくのをその場で見送り、1分後。



「……あの熊、二足歩行で走ってなかったか?」



カミィラの言葉で、ハッと気づき、急いで森の奥へと走る。

リュナミスの後を追う様に、執事、兵士、パルサーシャとカミィラ、エリミアが追いかける。



それから、先頭を走るリュナミスが熊を見つけたのは、森の中を走り続けて20分後だった。



時はすでに遅く、熊の腕の中にはすでに彼女と王子の姿はなかった。




リュナミスは愕然としながら、憂さ晴らしに、こちらに気づいて自分に襲い掛かってきた、体重400kgはある熊を軽く背負い投げをして、近くにあった池の中に落とした。


池の中から出てきた熊の腕を掴み、ジャイアントスイング。また池の中に落とす。


この動作を繰り返し行うリュナミスの顔は、普段仕事以外では見せない満面の笑みで、兵士達は何回も投げ飛ばされて、だが屈しようとしない熊に同情した。

熊が目を回し、倒れたとき、交代で執事が同じ事をしようとして必死で兵士達は止めた。


この光景を見ていたカミィラとパルサーシャとエリミアは、呆れて同時にため息をついた。


















一方その頃、熊に連れ去られ姿がわからなくなった零香は



「どうしてこうなった」


「クェーッ」


「……」



自分より少し身長の高い銀髪の美青年に抱かれ、巨大な孔雀のような鳥に乗って大空を飛んでいた。

通り過ぎる風は冷たかったが、男性に抱かれているという事実で接触している肌が、とても熱く感じられた。

零香は、とりあえず深呼吸をして、自分を抱いている男性を見上げた。


髪を後ろで結い、前髪で右目が隠れている。瞳は青く、物語にでてくる、白い騎士の服の様な物を身に着けていた。


リュナミスに劣らない美貌で、女性でも男性でも魅了しそうな顔に、零香は、まるで物語の王子のようだ、と思った。


本物の王子だと知らず。


零香が自分を見ていることに気づいたのか、男性は零香を見つめながら、ニコリと微笑んだ。

その笑みを見た瞬間、零香は頭がクラリとした。


(何っ、あの天使の微笑み!!ものすごく、カッコイイのに、思わず撫でたくなるような可愛さ……っ!)


心の中でそう思いながら、顔を真っ赤にして悶えた。

両手で顔を隠しながら、もう一度男性を見ると、まだこちらを見たまま微笑んでいた。

恥ずかしくて顔を隠し、もう一度見る。そして、気づいた。

男性の首に、普通はありえない物が巻かれている事に。



「……蛇……」



男性の首に、半透明の白い蛇が巻き付いていたのである。体長1mはあるだろう。

恐る恐る、その蛇に触れると生温かく、鱗は硬かった。掴んでみると、蛇はもぞもぞと動き、顔を零香に近づけてきた。

まさか蛇が生きているとは思っておらず、いきなり赤い目に見つめられ、驚いて零香は男性から離れるように、後ずさった。

男性の顔を見ると、まるで、これが見えるのか、といったような顔で零香を見ていた。

零香はゆっくりと蛇に近寄り、その頭に手を当てた。蛇は、何もせず反対に零香の手に頭をこすり付けてきた。


「可愛い」


カワイイトハ、ハジメテイワレタゾ


「えっ」


突如、聞こえてきた声に零香は周りを見回す。だが、上は夜空。下は、森。

この場にいる二人以外に、人はいない。

零香は首を傾げながら、男性を見る。男性も同じように首を傾げていた。



「気のせい…?」


キノセイデハナイ



また同じ声が聞こえ、零香は孔雀のほうを見るが、孔雀はただ「クェーーッ」と鳴くだけ。

ますます、首を傾げた。



「誰の声なんだろう……」


メノマエニイルダロウ


「目の前……。って違うし……ということは、君!?」



驚きながら蛇を指差すと、蛇は首を縦に振った。

蛇は男性の首に巻きついたまま、眠たそうにあくびをした。



ヨウヤク、ハナシガデキルニンゲンニデアエタ。イイカゲン、マチクタビレタゾ


「待ちくたびれたって……いつからこの人に巻きついてるの?」


コイツガ6ツメノタンジョウビヲムカエタヒカラ、10ネンホドダロウカ


「10年?なんでそんなに長く巻きついてるの」


ワレモ、スキデコイツニマキツイテイルワケデハ、ナイ。メイレイダッタカラ、ソレヲジッコウシテイルダケダ。


「命令、実行しているということは、今でもそれは続いている…」


ソノトオリダ。ダガ、イイカゲンツカレテキタシ、ハラモスイタ。ダカラ、ワレトハナシガデキ、コノジュツヲトクコトガデキルニンゲンヲ、サガシテイタノダ。


「じゃあ、こんな状況になっているのわ……」


ワレガヤッタコトダ



その言葉に、零香は蛇の首を掴み、握り締めながら



「原因はお前か」



微笑みながら、徐々に手に力を込めていく。蛇の首がキュッと絞まる。口から下を出しながら、少し泡をふいている蛇に、男性が慌てて零香の手を蛇から剥がした。

蛇が荒い息を吐き出しながら、零香に威嚇する。



イキナリナニヲスル


「わざわざ、熊に私達を拉致させて、こんな孔雀みたいな鳥にのせた罰」


コウシナケレバ、ユックリハナシガデキナイシ、ジュツヲトクコトガデキナイノダ


「何か特殊な魔法でもかけられてるの?こんな事してまでやるんだから、強力?」


イヤ、アルバショデナラ、カンタンニトケルノダガ………


「簡単なら、私以外でもいいじゃない。その場所でやれば」


オマエジャナイト、ムリ


「その理由は?」


オマエガ、ショジョダカラ



蛇の言葉に、思考が止まった。顔を蛇から男性のほうへ向くと、顔を横に向け手で顔を隠していたが、顔が赤いのがバレバレだった。零香は、怒りを収めながら冷静に蛇に問いかけた。



「もう一度、言って」


ダカラ、オマエガ『ショジョ』ダカラ。サイキンノワカイニンゲンハ、ハヤスギル。ダカラアルジハ、コンナジュツヲカケタノカモシレナイガ。


「…えっと、ちなみにどんな魔法なのでしょうか」



蛇は男性をちらりと見て、少し言いづらそうに言い始めた。



ショジョノオトメノ『チ』デ、マホウジンヲエガキ、ワレニ『チ』ヲアタエル。チハ、テデモクビデモ、アシデモカマワナイ。


「…だれでも大丈夫だと思うんだけど……」


ダガ、ネンレイセイゲンガツイテイル。コレガヤッカイダッタノダ


「魔法の解除方法に年齢制限……聞いた事もない」


ソレハトウゼンダ。アルジガアミダシタモノダカラナ。デ、ソノネンレイセイゲンガ10サイカラ、15サイニカギラレテイルノダ

ナゼコンナジュツヲホドコシタノカ、ワカラナイ


「ちなみに、女性?男性?」


ダンセイ


「よし、会ったら一度でいいから殴ろう。うん、そうしよう。それか、魔法で拷問してやろう」


ヤメテクレ、カリニモワレノアルジナノダ。トキドキ、アヤシゲナジッケンヲオコナッテイルガ、フツウノヒトダ。ソナタノマリョクダト、シンデシマウ


「普通の人は、怪しげな実験なんてしません」


タシカニ、ソウダガ……



言葉を濁した蛇をじっと睨みつけていると、いきなり体が浮遊感に襲われる。慌てて鳥の毛を掴もうとして、何故か手が届かない。


体が、鳥から離れている。


必死に腕を伸ばして、鳥に摑まろうとして腕にいきなり鎖が巻きつき、勢いよく引っ張られた。

状況に反応できず、零香はいつの間にか男性の腕の中に包まれていた。男性の片手には、零香の腕に巻きついている鎖が握られていた。鎖はどうやら男性の手のひらから出ているようで、赤く光っていた。

零香の顔を覗き込むように、蛇が顔を近づけてきた。



ダイジョウブカ?


「大丈夫じゃないよ……。何でいきなり下に降り始めたの?」


モクテキチニツイタンダ


「それ、落ちる前に言って欲しかった」


零香は、少し頬を膨らませながら蛇の頭をチョップで軽く叩いた。

そのまま、視線を上に向くと男性がまた天使のような笑みを浮かべていた。

ようやく自分がいまだに男性に抱かれているのに気づいて、顔が真っ赤になるのを感じながら腕の中から離れた。

男性が名残惜しそうに手を動かしていたのは、気のせいだ。


孔雀がゆっくりと森の開けた場所に下りていくのを見ながら、零香は精神的にも肉体的にも疲れていた。



「今日は色々と出来事が重なりすぎだよ……」



そう呟く彼女の姿を、男性はじっと見つめていた。













これを執筆している間に、


「いつの間にか、6000アクセスを突破しそう…(・Д・;)」


という事実に気づき、慌てましたw


6000アクセスを超えたら、番外編をUPします。


前回の番外編の続編的な物を、考え中です。


「番外編書くなら、本編書け」と兄に言われましたけど…

(=ω=)




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