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Dolls  作者: 夕凪秋香
第1章 クロッカス村
13/51

番外編 そのに 異世界からの来客者①


今までの投稿作品でのコラボです。

この前連載し始めた「かぐや姫の置き土産」のキャラが登場です。


本編が見たい方は、スルーでお願いします。

それでは、どぞ。




拝啓、零香様。


最近新しい魔物が大量に発生しておりますが、そちらは大丈夫ですか?

こちらは、全然大丈夫です。暇すぎて、家を吹き飛ばしたぐらいです。


ところで、実は一週間後、ある場所に来て欲しいのです。

そこで、イベントを開催しようと思います。ぜひ参加してもらいたいと思い、この手紙を出しました。


どうか、貴女と人形のお嬢さん、そして後4人ほど人数を集めて、こちらの指定する場所に来てください。

イベントの内容は、当日集合場所で発表いたします。


集合場所は、この手紙の裏に書かれていますので、どうかよろしくお願いします。


歓迎する準備をして、お待ちしております。


貴女のご友人と共にお待ちしております。












そんな手紙が届いたのは、まだ日も昇っていない朝4時だった。

眠い目を擦りながら、宛名を見てため息をつき、指定場所を別の紙にメモしておく。

そして、まだ起きるのには早いが、同じベットで寝ていた少女を起こす。



「エリミア、起きて」


「んっ……ふわぁ、どうしたんですか…?」



ゆっくりと起き上がりながら、目を擦る少女の頭を軽く撫でる。

少女は、彼女の作った人形だ。本物の人間に似せて作った。近くで見なければ、人形とは思えないほどに。



「ごめんね、急にこんな時間に起こしちゃって」


「別にかまいません。少しまだ眠いですけど……」



そう言いながら、少女は軽く髪を手で梳き、その場に正座する。

少女にさきほど届いた手紙を渡す。少女は受け取ると、手紙の裏を見て苦虫をつぶしたような顔になる。

そして、勢いよく手紙を縦に裂いた。さらにそれを粉々に裂く。裂き終わると、それをすぐにゴミ箱に入れた。



「こんな誘い、受けない方がいいでしょう」


「でも、あの人の誘いを断るのは…」



ちょっと、怖い気がする。

それでもエリミアが考えを変える様子は無く、当日の朝に無理やり連れて行った。










当日、待ち合わせ場所に行くと手紙の送り主が立って待っていた。

ベージュ色のブレザーの制服を着て、いつも腰に薔薇の装飾が施されているレイピアをつけて、王子様とは違う笑顔をいつも浮かべている人。

確か、名前は白夜紗那さん、だったはず。

白夜さんは私達に気づくと、軽く会釈をしてきた。



「今日は来て下さり、ありがとうございます」


「いえ、こちらこそお誘いありがとうございます。それで、イベントとは何ですか?」


「ここでは難なので、場所を移動しましょう。すぐ近くに他の方も集まっています」



そう言って白夜さんはスタスタと歩き始めた。

私達もその後ろをついていく。私の腕の中のエリミアは、ずっと頬を膨らましたままだ。

やっぱり有無を言わさず、無理やり連れて来たのが悪かったようだ。

今晩のデザートは、彼女の好きなプリンにして機嫌を直してもらおう。



「今日は初めてお会いする人ばかりですね」


「それは……あの時は私とエリミアと貴方以外、誰もいなかったじゃないですか」


「あぁ、そうでしたね。忘れていました」




わざとらしいなぁ、この人。

実は彼と知り合うきっかけになったのは、彼が家の近くで魔物を大量に倒しているのを見てからだった。私はその時、カミィラに頼まれてエリミアと一緒に洗濯物を取り込んだ所だった。

日本に住んでいる人と聞いて、最初は喜んだのだが……。性格が受け付けなくなって、彼の兄という人が迎えに来るまで、エリミアと彼は喧嘩をしていた。

まぁ、見る限り彼はエリミアで遊んでいる様子だったけど。

だから、エリミアはこの誘いを受けるのを最後まで断っていたのだ。



「さぁ、着きましたよ」


「………ここですか?」



私達は何故かコロシアムのような場所に連れてこられていた。反対の入り口の方を見ると、彼と同じような制服を着た人たちが立っていた。その中に、見知った顔があった。



「もしかして…!高宮さん?!」


「……お久しぶりです、樹新さん」



肩まで切りそろえた髪と身長と同じぐらいの薙刀を持った彼女は、無表情のまま頭を下げた。

無表情のように見えたが、彼女もこの出会いに喜びを感じているようだった。

彼女とは昔、まだ小さい頃に同じ小学校だった。よくクラスで一人ぼっちだった私と、いつも一緒に遊んでくれた、優しいお姉さん。

私が祖父に引き取られてから、彼女の家も遠くに引っ越してしまって所在がわからなくなっていたので、再会できて嬉しかった。



「うわ~、本当にお久しぶりです!元気でしたか?」


「えぇ、それなりに。樹新さんも元気そうで良かった」


「高宮さん、身長伸びましたね。あの頃は私と同じぐらいだったのに」


「小学校の頃の話ですよ?身長は伸びて当然です。まぁ、伸びすぎたような気もしますが」



そう言って彼女が軽く笑った。

初めて、彼女の笑みを見た。小学校の頃は全く笑わなかったのに、やっぱり人は成長するんだな、と改めて実感する。



「はいはい、ストーーーップ!!」


「きゃあっ!」



彼女との間にいきなり小さな女の子が割って入ってきた。少し茶色がかった髪を小さくサイドテールにして、前髪に可愛い白兎のピンをしている。

女の子も高宮さんと同じ制服を着ていた。

いきなり大声で入ってくるものだから、驚いて奇声を出してしまった。少し恥ずかしくなる。



「先輩!あまり話をしないでください!時間が無くなっちゃいます」


「ごめんね、かな。久しぶりに会ったものだから、つい」


「もう、私達がこっちに居られるのは5時間だけなんですから!気をつけてください」



高宮さんに、かな、と呼ばれた少女は頬をプクーと膨らせて怒っていた。

まるで、ハムスターのようだ。かわいい。

かなちゃんと呼ぶことにしよう。かなちゃんは、くるりと私のほうを向くといきなり顔を近づけてきた。



「……何?」


「…ふぅ~ん。あなたが会長の言っていた方ですか」


「…たぶん」


「……勝った」



はっ?

小さくそう呟いた少女は、鼻歌を歌いながら白夜さんの隣に近寄る。

私の頭の中では、ハテナマークが飛び交っていた。何が、勝ったのだろうか。

腕の中に居るエリミアに聞こうとしたが、彼女の顔が鬼の様だったので、横に立っていたリュナミスさんに聞くことにした。彼もたぶん少女が言った言葉を聞いていただろう。



「リュナミスさん、何が勝ったんですかね?」


「……」



反応、無し。

彼も表情には出してはいないが、ずっとあのかなちゃんの事を見ていた。

いや、睨んでいたと言ったほうがいいかな?

後ろで、王子のエリク様と執事のミケルさんがため息をついたのが聞こえた。



「ん~、もう一組がまだ来てませんね~。まぁ、時間がかかるのも無理ないか…」


「会長♪待ってる間、皆さんでお茶でもしましょう!」


「それはいいね。いつもかなには助かるよ」


「えへへ~、会長のためなら何でもします!」



彼と話している彼女は、まるで子犬のように笑っていた。

その姿に、自然と笑みが浮かぶ。かわいいなぁ~……。



「お茶なら、あたいも手伝うよ」


「ワタシも手伝いますよ~」


「助かります。私達はテーブルなどをご用意しますので、彼女と一緒にお茶をお願いします」



白夜さんはそういうと、かなちゃんに耳打ちして何かを伝え、かなちゃんが一緒についてきたパルサーシャさんとカミィラを連れて、コロシアムのどこかに消えていった。



「さてと、それじゃあ私達はテーブルと椅子を用意しましょうか」


「それなら心配後無用です」



突然、エリミアが地面に降り、いきなり空間の中から木のテーブルとイスを取り出した。

白夜さんはいきなり何も無いところから出てきたそれらを見て、驚いていた。

エリミアは、彼の様子を見て勝ち誇った笑みを浮かべて、もう二組ほど取り出した。



「驚いた……。まさかこんな力を持っていたとは……」


「私の能力の内の一つです。パラソルも出しておきましょう」



エリミアはさらに空間の中から巨大なビーチパラソルを取り出し、地面に突き刺す。

高宮さんが、テーブルに白いシーツをかける。



「凄いですね、エリミアさん。こんなに小さいのに」


「小さいは余計です」


「でも、事実でしょう?小さい人を小さいと言って何が悪いのですか?」


「失礼な事を言うんですね、最近の人は。零香が向こうに戻ったときが心配です」


「祖母と同じような事を言うんですね、エリミアさん」


「なっ!女性に対してそれは失礼です。すぐにその言葉を撤回してください」


「嫌ですよ。私は自分の気持ちを偽るのが嫌なんですから、嘘は言いたくありません」


「――――っ、この男は……!!!」


「落ち着いて、エリミアっ!」



今すぐにでも殴りかかりそうなエリミアを抱き上げ、動けないようにする。

それでも暴れ、今すぐにでも腕から抜け出して、目の前で不敵な笑みを浮かべている彼に殴りかかりそうだ。

この前もこんな感じだった。あの時は家の中をエリミアが半壊して、後片付けが大変だったのだ。

勘弁して欲しい。



「エリミア、落ち着け」


「これが落ち着いていられますか!!」



リュナミスさんが怒りを抑えようと宥めたが、効果が全く無い。

ミケルさんもエリク様もお茶の準備の手伝いに行ってしまったから、誰も彼女を止められない。



「あははははははは、面白いですね~。彼女の反応は、本当に面白い」


「会長、そろそろ笑うのを止めたほうが……」


「いや、私も止めようと思ってはいるんですが…くふふふふ、止められないんですよ」



止める気が無いだけでしょうが。

白夜さんのその言葉に、エリミアは今まで理性で押さえ込んでいた怒りが切れたのか、



「痛い目に合わせないといけないようですね!!」


いきなり腕を振り上げた。

その腕が、私の顔面に直撃する。口の中から血の味がして、思わず体から力が抜ける。





「「!!」」


「樹新さん!!」



地面に倒れる前にリュナミスさんが咄嗟に受け止めてくれたのか、体全身に痛みはこなかった。

でも、顔がものすごく痛い。手で触ってみると、血が出ていた。

高宮さんが、慌ててハンカチを私の顔に当てた。



「いたっ」


「血が出ているので我慢してください」


「…はい」



おとなしくして、視線だけ動かすと、すぐ近くでリュナミスさんが心配そうに顔を覗かせていた。



「大丈夫か」


「はい、少し痛いですけど大丈夫です」



それでも、血の臭いで軽く頭がふらふらする。少し体から力を抜くと、血が沢山溢れてハンカチを汚していた。

自分で思う。出すぎ。



「医務室に連れて行きましょう」


「わかった」



急に体を持ち上げられ、普段なら悲鳴でも上げるところだけど、思考が全く回らないからされるがままだった。

そのままどこかに連れて行かれる寸前、誰かが私の服の裾を引っ張った。

目を向けると、裾を引っ張っていたのはエリミアだった。泣きそうな顔。彼女は震えながら、私を見ると、顔を背けながら言った。



「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」


「………エリミア」



私はエリミアの頭に手を載せて、勢い良く頭を撫でた。

彼女が驚いた顔で私を見てきたので、私は笑みを返してあげる。



「気にしないの」


「でもっ、…!」


「悪いのは会長ですから、貴女が悪いというわけではないですよ。むしろ、こちらが申し訳ない気持ちでいっぱいです」



そう言って高宮さんも、エリミアの頭を撫でた。

エリミアは困惑したような顔で、私を見た。私は笑いながら、頷いた。



「後で会長には、きつく言っておきますので、それで許してあげてください。彼は、自分の感情がコントロールできないんです。それに、この後で思う存分殴れますから、その時にでもストレス発散してください」



その言葉に、エリミアが表情を輝かせた。どのくらい彼女にはストレスが溜まっていたんだろう、と少し不安になる。

でも、そんな機会あるんだろうか。って、もしかして………。


イベントってそういうこと?



「さぁ、早く連れて行きましょう」





私はその後、もう一組の招待客が来るまで、周りに大量の意味不明な動物の標本の中で、一時的に眠った。






後から読んでみると、なんだこの文章は(・Д・;)

でも、続きますw




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