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婚約破棄? ゴネて撤回させてみせますわ!

作者: ぺいた
掲載日:2026/09/08

「エレノア・ローズ・ヴィンセント! 貴様との婚約は破棄する!」


それは、この国の王太子である、セオドール・フォン・アシュバートンから発せられた言葉であった。

彼の左側には、男爵令嬢であるリリアナ・メルヴィルがひっついている。


王宮での舞踏会。彼の声を耳にした貴族たちは、しんとしてこちらに注目している。

こんな公の場で婚約破棄を宣言された私は、みっともなく取り乱すべきであろう。

そう思ったのでそうした。


「嫌です! 絶対嫌です! 王命だし! 破棄とか認めません! 嫌だったら嫌! 断固拒否します! 婚約破棄しません! 絶対に! イヤーーーーー!」


「え……」


なんでか、殿下もリリアナも周りの人間も、驚いたような顔をしている。

どっかの小説の読みすぎじゃないの? 


「なんで私が破棄されなきゃいけないの! 殿下の婚約者に選ばれてから10年! どれだけ苦労したと思ってるの! 王太子妃教育がどれだけ大変だと思ってるの! 子供らしい遊びも一切できず、常に国民の見本であるように言われて! 姿勢を崩すことも口を開けて笑うことも禁止されて! その努力を無にしろってか! キーーーーーーーーーーー!」

髪を振り乱し、地団太を踏んだ。


「いやあの、ちょっと落ち着いて…」


「なんで落ち着かなきゃいけないの! 婚約破棄されたのよ!? こんな公の場所で! 10年も王太子妃になるために頑張ってきたのに! ほんとは大声で騒ぎたい性格なのに! 大口開けて、おなかいっぱいまで食べたい性分なのに! ずっと我慢して淑女ぶってきたのに!」


「えっ……」


殿下だけじゃなく、みんなが驚いてる。そうか、私の猫かぶりも堂に入ってたってことね。


「でも、そこの男爵令嬢みたいに、自然な表情が好きとか言うんでしょどうせ! 無駄じゃん! 私がやってきたこと無駄じゃん!」


「……我慢してたのか」


「今気づいたような顔するな! 子供の時の天真爛漫な私を覚えてないの!? あんたの婚約者に選ばれてから、どんどん暗くなっていった私に気づかなかったの!?」


「い、言われてみれば……」


「それでもさ、いずれ王妃となる人材として選ばれたからには、やるしかないって、子供ながらに覚悟を決めてがんばったのよ! 私は自分で自分を褒めてあげたいわよ!」


「そ、そうだな、あのでも、今は私の話を……」


「なんであんたの話が先なのよ! 私は王太子妃としてあれもやれこれもやれって、いろんな仕事を押し付けられてたのに、あんたは王族で誰も厳しく言わないからってつけあがって、サボりまくってたくせに! そういうあんたの尻ぬぐいしてたのは私よ! ここでも自分を優先するつもりなの!」


「確かに……」と言ってうなずく側近たち。

「そうだったのか……」つぶやく陛下。

「いやあの、誤解、誤解だから!」あわてる殿下。

ひそひそざわざわする人々。


「だいたい、婚約破棄の理由だって、そこの女に騙されただけでしょ! 『エレノア様に嫌がらせされてるんです~』とかいう大嘘を真に受けて! 私はね、殿下の尻ぬぐいに忙しくて、まともに学園に通う時間もないの! 嫌がらせするような時間があったら、少しでも睡眠を取りたいわ!」


うんうんとうなずく側近と従者。

どんどん青くなる殿下と男爵令嬢。


「あのー、そんなに使えない殿下なら、いっそ婚約解消したほうがいいのでは?」

側仕えの侍女がおずおずと聞いてきた。


「そんなことしたら、この国はおしまいじゃないの!」

私は大声で宣言した。


「たしかに殿下はどうしようもないわ! でも、しょうがないじゃない! この国には跡取りがひとりしかいないんだもの! 王弟も、殿下に輪をかけて女好きのろくでなしで、認知されてない子供はいっぱいいるみたいだけど、はっきり王室の血をひいてるってわかってるのはコイツだけじゃない! 王家存続のためには、コイツを王にするしかないのよ! それなのに、こんなバカ息子に育てやがって!」


「ふ…不敬……」

と言いかけたが、青くなって言い返せもしない息子と、侍っている頭の悪そうな女を見て、陛下も王妃もしゅんとなって黙った。 


「だから、婚約は破棄しない! 頭の悪い殿下が、もっと頭の悪い男爵令嬢なんかと結婚したら、この国のお先真っ暗だから! 私と結婚したら、あんたのかわりに私が、この国を立派に治めてやるわ!」


唖然とする陛下と王妃を横目で見ながら、腰に両手を当てて、胸を張って

「この国の未来は、私が守る!」

と言い放った。


パチ…

パチパチ……


どこからともなく拍手がわきあがり、やがて歓声となった。


「万歳!」

「エレノア女王万歳!」


殿下が涙目になって

「いやあの、女王ってちょっと…みんな……」

と言っていたが、もう誰も聞いていなかった。


こうして私は、王太子妃でありながら、「エレノア女王」と呼ばれる存在になった。

なんかこれだと、人身御供みたいで可哀想な感じがあるので付け足し。


エレノアは「10年手伝ってきたから情がそれなりにある」状態で、殿下も「反省してまじめに勉強して令嬢とも別れてがんばってる」ことにしてください。

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― 新着の感想 ―
お飾りの王、血筋だけの王になるんやで
両陛下も王太子もいる前で「女王、万歳!」とかw 大笑いさせていただきましたww もうこの王家、要らんくないですか?(笑) エレノア王朝(あえて名の方で)、樹立してしまえばいいと思う。 きっと皆んなつ…
エレノア女王陛下万歳 王子は後宮で不妊処置された男爵令嬢と幽閉されていればいい。胤以外いらんよね?
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