なんだかなんだか
なんだかなんだかガッツリ暑い!
エアコンの庇護の無い教室の日当たりの良い窓際。
私は椅子に座らされながらじっくりとローストされている気分だ。
んんにゃ! それだけではない。
5月はカーストが確立される時期。
ゴールデンウイークが終わり登校したら、すっかりそう言う“空気”で固まっていた。
席が隣どうしなのから始まって……私の方が好きになった田嶋くんは『一軍』、
そして私は高校でも『三軍』の定位置。
彼はこの“立ち位置”を気にも留めず私に話し掛けてくれるけど……私の方は周りからの圧でロクに返事も出来ない。 それが生意気と更に一軍女子達から締められる。
4月の初めには「この席になれて本当に良かった」と思っていたのだけれど、今ではこの席は針の筵でじわじわ焼ける鉄板の上の様だ。
当然、お昼もこの机の上でお弁当を広げる事なく逃げる様に教室を出て、草いきれのする中庭のベンチでお弁当の包みを解く。
今日はお母さんと冷食おかずの合作!
だし巻き卵とひと口ハンバーグ、それにモッツァレラチーズとトマトの包み揚げだ。
お母さんのだし巻き卵は絶品なので、箸を付けるのは後回し。
なぜって?
一番好きなものを食べる幸せの余韻の中で教室へ戻れば、午後に臨む勇気が保てるから……
さて、まずはひと口ハンバーグから……
「良かった! 今日も居たね!」
背中に聞き覚えのある声がして私はビクン! とする。
「田嶋くん……?」
振り返って見たカレは左腕に購買のパンの袋を掛け、右手には“購買オリジナル10食限定”の超人気の逸品! “神の手による”プリンを持っている。
「安藤さん、隣、いい? 」
「フゥエッ?!」
私、口に含んでいたご飯を吹き出しそうになるくらい焦ってしまったのだけど
田嶋くんから
「オレの事、教室で飽き飽きしてるんだろうから、やっぱダメかな?」
なんて言われて必死に頭を振った。
「いいえ! いいえ! 全然大丈夫です!!」
「良かった!」と言いながら田嶋くんは腰を下ろし、私に次の爆弾を放り投げて来る。
「実は、交換して欲しいおかずがあってさ!」
「フ、フェ! な、何でしょう??」
「うん、安藤さんのとっておきみたいだから、ホント、悪いんだけど……どうしても食べてみたくて……」
「ひょっとして……だし巻き卵ですか?」
「うん、このプリンと交換でどうかな?」
「ええええ!!!! 神プリンとですか?? 対価が合わな過ぎます!!」
「そうかな……でも、この位はしなきゃ! って思ったんだよね」
「でも、だし巻き卵なんて、ひと口かふた口ですよ!」
「ーん、でもプリンを何口か掬ってもらうのもなあ……スプーンは1コしかないし、間接……」
言い掛けて黙るカレとヒュン! と息を呑む私、
ふたりしばし赤くなる。
「あ、あの……じゃあ、明日から毎日、だし巻き卵、差し上げます! お母さんに頼んで多めに作ってもらいますから!」
「それじゃ、お母様に申し訳ないよ~」
「大丈夫です! 『一軍の男の子に頼まれた』っていいますから」
「ちょっと待って! それじゃオレ、悪人じゃん!」
「す、すみません」
「それに安藤さん、敬語とかおかしいよ。オレ達、クラスメイトでしょ?」
私が「そうですけど……」と口ごもるとカレは「そうなんです!」と冗談っぽく返してニカッ! と眩しく笑った。
「じゃあさ! こういうのはどう? ウチの母親、クッキー焼くのが得意で、オレも時々手伝わされるんだけど、今度焼いたらお母様用に持って来るよ。もちろん安藤さんにも食べてもらいたいし」
こんな事を言われて……私はもう、天にも昇る心持ちだったのだけど……
お互い、取り替えっこしたものは、しっかりと舌鼓を打ちました。
お・し・ま・い♡
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