お客様様の願い「世界一の頭脳」について考えてみた件
初回の顔合わせから数日後。
私は占いの館のレンタルスペースで、
またあの青年を待っていた。
書類や契約書を整えながら、心の中でつぶやく。
「今日も落ち着いて、ちゃんと説明するぞ」
時間になると、カーテンがゆっくり開き、青年が顔を出す。
「こんにちは……今日は実現できそうなお願いを聞いてもらいたくて」
「もちろんです。どんな願いですか?」
青年は少し緊張しつつ、真剣な目で言った。
「今度は……世界一の頭脳が欲しいんです。見聞きしたものを一瞬で覚えられる能力」
私はにこやかに息をつき、嬉しそうに答える。
「これなら可能です」
青年の目がぱっと明るくなる。
「本当に?」
「はい」
私は落ち着いて、でも丁寧に付け加える。
「ただ注意が必要です。一つは、知識は自分でインプットする必要があります。ひたすら本や動画で学ぶことが基本です。
そして脳のキャパを超えると、古い記憶から順に上書きされてしまいます」
青年は少し考え込み、眉をひそめる。
「……なるほど。努力と時間を考えると、リスクも高いですね」
「そうですね。能力を持っても、使い方次第で混乱することがあります」
結局、青年はため息をつき、肩を落とした。
「やっぱり、今回はやめておきます」
ナナミの私も、どんな願いが望ましいのか少し考え込む。
「……本当に、何を願えばいいのか、迷ってしまいますね」
青年も同じようにうなずき、二人で少し間を置く。
私はやわらかく微笑んで提案した。
「では、ご自身のためではなく、世のため、人のためになる願望はどうでしょう?」
青年は少し考え、そして不思議そうに微笑む。
「なるほど……」
そう言うと、なぜか納得したように背を向け、
ゆっくりと帰っていく。
ナナミの営業レディとしての日常は、
今日も静かに一歩前に進んだ。
こんにちは、ナナミです。
願い事の実現って意外と難しいですね。
契約書にサインもらえる様に頑張ります!
さ〜て、次回の転職死神おねえさんは
ep10 お客様の願い「野生動物との共存」について考えてみた件
ep11 お客様の願い「子ども達の未来を守りたい」について考えてみた件
ep12 お客様の願い「慢性的渋滞を解消したい」について考えてみた件
ep13 お客様の願い「通勤電車の混雑を解消したい」について考えてみた件 7 お客様の願い「1億円欲しい」について考えてみた件
の豪華4本立てでお送りします。
次回 2026年3月11日 公開をお待ちください。




