お客様の願い「ハーレム欲しい」について考えてみた件
初回の顔合わせから数日後。
私は占いの館のレンタルスペースで、二回目の打ち合わせの準備をしていた。
書類や契約書を整えながら、心の中で自分に言い聞かせる。
「今日も落ち着いて、しっかり説明するぞ」
時間になり、カーテンがゆっくり開く。
先日と同じ青年が、少し緊張した様子で顔を出した。
「こんにちは。今日は……ちょっと変わったお願いを聞いてもらいたくて」
「もちろんです。どんな願いですか?」
青年は小さく息をつき、少し恥ずかしそうに言った。
「ハーレムが欲しい」
私は軽く息をつき、にこやかに答える。
「なるほど、ハーレムですね。倫理上はともかく、法律上は重婚できませんので、1名が正妻、それ以外は内縁の妻という扱いになります」
青年は眉をひそめる。
「内縁って……女性間でケンカにならない?」
「正妻と内縁妻で差が出ると、女性間でのマウンティングの原因になります。場合によっては刃物を伴うこともあり、矛先が直接お客様に向く可能性もあります」
青年は少し顔を強張らせ、口を小さく開いた。
「こわい……」
「リスク回避のためには、全員に等しく愛と富を与える必要があります。衣食住はお客様が手配していただくことになります」
私は具体的に想定シナリオを考えながら説明する。
青年がうなずき、眉間に皺を寄せる姿を見て、案外現実的に理解しているんだな、と少し安心する。
「じゃあ、女性に働いてもらうのは?」と青年。
「法律上は問題ありません。ただし全員平等に働く方が良いです。
その場合、お客様にヒモ的なイメージがつくリスクがあります。世間体を気にする場合は、自分で取り繕う必要があります」
青年は肩を落とし、少し苦笑い。
「……ハーレムも無理っぽいですね」
少し残念そうに、カーテンの向こうへ消えていく背中を見送り、私は心の中でつぶやく。
「現実的には色々制約があるけど、とりあえず安全策を提示できてよかった」
ナナミの営業レディとしての日常は、
今日も静かに進んでいく。




