お客様の願い「通勤電車の混雑を解消したい」について考えてみた件
前回の打ち合わせから数日後。
私は占いの館のレンタルスペースで、書類と契約書を整えながら心の中でつぶやく。
「今日も落ち着いて、ちゃんと説明するぞ」
時間になるとカーテンがゆっくり開き、青年が顔を出した。
「ナナミさん……ちょっと相談なんだけど」
私はにこやかに応じる。
「もちろんです。どんな願いでしょう?」
青年は少し困った顔で言った。
「同僚が通勤でめちゃくちゃ困ってるんだ。電車が遅れて遅刻しそうになったり、混雑で疲れてるって……何とかならないかな」
私は書類から顔を上げ、落ち着いた声で答える。
「なるほど……鉄道会社の関係者にチョチョイとすれば、ダイヤの調整や増発は可能です」
青年は目を丸くする。
「え、本当に? それで改善できるの?」
「できます。ただし、一部の時間帯を快適にすると、別の時間帯の混雑が少し悪化します。現実世界では、定期的に調査して微調整――いや、今はダイヤ改正で対応しているので、願いとして使うにはもったいないですね」
青年は少し肩を落とし、眉をひそめる。
「これも契約にはならないか……」
私は軽く肩をすくめ、微笑む。
「たった一つの願いですから、しっかり考えて頂いて大丈夫です」
青年は少し笑って、肩の力を抜いた。
「そうか……じゃあ、今回は見送ろう」
私は書類を整えながら、心の中でつぶやく。
「契約はしないけれど、少しは役に立ったかも……」
青年の見送りついでに雑居ビルから駅へと歩く。
そろそろ帰宅ラッシュの時間になるのか、駅に向かう人の流れが出来始めている。
すぐに変わるわけではないけれど、誰かが少しでも安心して職場に向かえる日が増えるなら――それで十分だ。
営業レディとしてやる事は変わらない。
一歩一歩、確実に進んでいこう。
その一歩で、誰かの一日がほんの少し軽くなる――
それだけで十分価値がある。
「チョチョイとすれば叶う願いでも、時には手を出さずに見守るのも大事」
今日も静かに一歩前に進んだ。
こんにちは、ナナミです。
願い事の実現って意外と難しいですね
契約書にサインもらえる様に頑張ります!
さ〜て、次回の転職死神おねえさんは
ep14 お客様の願い「願い事を見つけたい」について
考えてみた件
ep15 何も願わないで済む事が願い事だと
気付かされた件【完結】
次回 2026年3月15日 公開をお待ちください。




