死にたい理由が消えた日
――森の奥を、私は一人で進んでいく。
生きると決めた。
希望があったわけじゃない。
意味もなかった。
ただ、そうするしかなかった。
その瞬間だった。
空が割れた。
白い光が、世界を貫いた。
落雷。
逃げる暇はない。
避ける理由もない。
私は、運悪くそれに当たった。
音も、痛みも、理解する前に、
私の意識は途切れた。
私は死んだ。
――今度こそ、本当に。
死にたいという気持ちは、もうなかった。
だから、人形は動かなかった。
守る理由が、消えていたからだ。
焼けた地面に、私の身体が横たわる。
森は静かだった。
しばらくして、人形が近づく。
抱き上げることも、声をかけることもない。
人形は、私の姿を見つめ、
そして――形を変えた。
顔も、声も、記憶も、
すべてをなぞるように。
それは、もう私だった。
人形は立ち上がり、森の奥へ歩き出す。
私だったものの、生を引き継いで。
私が選ばなかった人生を、
私が生きなかった時間を。
森の中に、二度と私の足跡は残らない。
これは、
私が死んだ物語であり、
私として生き続ける人形の、始まりの物語だ。




