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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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魔族の才覚

 魔族がいる部屋を蹴破った瞬間、真正面から魔力を感じ取った。

 魔法が飛んでくると悟った俺は即座に剣に魔力を集め――相手の魔力がこちらへ向かってくるタイミングで、一閃した。


 次の瞬間には俺の剣と魔法が激突する。本来、魔族との光線では正面衝突は避けたい……のだが、俺は扉を蹴破った瞬間、相手を視界に捉えるより先にその能力を瞬間的に把握。さらに放たれる魔法の威力などを理解し、斬撃で対処できると考え、この選択をとった。

 無論、魔法に仕掛けがあれば勝負はどうなるかわからないが――賭けに勝ち、俺は魔法を吹き飛ばす!


「ぐっ……!」


 呻き声を発する魔族。相手が放った魔法による閃光でまだ視界は晴れないが、それでも俺は突撃した。

 相手の居場所や、俺と魔族の間に突撃に邪魔になるものなどないか……それらを魔力で知覚しつつ、俺は一気に魔族へと肉薄する。


 相手の気配から、驚愕しているのだと理解しつつ……俺は相手に向け斬撃を、決めた。


「が、あっ……!」


 声が発せられると共に相手は逃げようとしたみたいだが……こちらの一撃が致命傷となったか、退避というより倒れ込んだ。挨拶代わりの剣戟に、耐えられなかったらしい。

 そして魔族は消滅していく……その時点でようやく視界がクリアになる。気づけば砦に残っていた魔族は消え去っていた。


「……魔物はまだ残っているか」


 俺は後方を振り返る。そこにはフィリスと、廊下に魔物がいくらか散見された。

 砦を守る魔族がいなくなったことで、魔物は動きを止めている……指揮する存在がいなくなると、止まるような命令を受けているらしい。


「フィリス、これで残る魔族は一体……だな?」

「うん。でもさすがに、砦の状況を把握したらここには来ないかも」


 ……相手が勇者トキヤであることに加え、フィリスが裏切った。その事実を踏まえると、ここに何かしら重要な情報があるにしても、それをどうにかするより命が危ないと考えるか。


「もし逃げれば、他の場所に潜伏する魔族へ連絡するかもしれないな」


 できれば取り逃がしたくない。どうにかして仕留めたいところだがが……そう考えていると、


「……ふむ」


 と、フィリスが声を上げた。


「どうも、こっちに向かっているみたい」

「最後の一体が?」

「もしかすると、まだ砦の状況に気づいていないのかも」

「……気配探知すれば状況はすぐにわかるんじゃないか?」

「場所が場所だし、ロクに気配を探っていないのかも」


 まあ、確かに油断していてもおかしくはないか……なら、


「フィリス、砦の状況は近づけばわかるだろ? なんとか魔力的に偽装……何も起こっていない、みたいな形にできないか?」


 駄目元で俺は提案してみた。すると、


「多少違和感はもたれるかもしれないけど……やってみる」


 あっさりと受け入れた。


「ただ、魔法を使うから他に何もできなくなるけど」

「魔法を使用する間は守るよ。なら、頼んでいいか?」


 俺の言葉に彼女は頷き、魔法を使うため魔力を発した。

 その気配は……この場にいた魔族よりも遙かに濃いような気がした……いや、違うな。確実に、倒した二体よりも上回っている。


 彼女自身、最初に倒した魔族に対し迷っていたため、俺の援護が入らなければおそらく滅んでいただろう。けれど、もし本気を出せば……魔族はフィリスの才覚を認めていた。おそらく魔力量的な意味合いでも、彼女は相当な力を有しているのだろう。

 俺は魔法を使用するフィリスを眺める。気配を探っても、彼女が持つ力の全貌などをうまく理解できない……彼女が隠蔽しているのか、あるいはそうした特性を持っているのか。


 魔族の中には、近くにいるのにどれほどの力量なのか霧が掛かったように把握できない存在がいる。そういった者は大抵が高位の魔族であり、魔王もまた同様だった。

 俺が魔族と戦った経験をそのまま適用すると、彼女は魔族として高位に位置する力の持ち主なのでは……そんな風に推測する。もし彼女が命令を忠実に聞いてフリューレ王国に襲いかかっていたのなら――


 そこまで考えた時、魔法が終わった。


「うん、可能な限り偽装した」

「残る魔族の動向は?」

「砦に向かってきている」

「よし、なら迎え撃とう……と、その前に残った魔物はどうするか」

「もう指揮権は手に入れたよ」

「……俺が倒した魔族が保有していたものを、奪い取ったのか?」

「魔物に命令できるのは一人だけ、というルールだった。で、砦にいる魔物達の指揮権は喪失したから、私がそれを引き継いだ形」


 なんてことないように語っているが、やはり他の魔族と比べても相当な力を持っているようだ……そう確信しつつ、俺はフィリスへ告げた。


「なら、俺と一緒に一度外へ。あ、可能な限り魔物は動かさず、砦の中は平穏無事であることを偽装してくれ――」


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