砦の戦い
岩陰から感じ取れるくらい、砦にいる魔族は反応している……気配を隠すのが下手、という解釈も最初できるかと思ったが、
「砦内にいる魔物を動かしているっぽいな」
「そうみたい」
フィリスも同意。そこで彼女は岩陰から砦を確認する。
「……残る片方の魔族は砦にいないみたい」
「わかるのか?」
「気配が遠い……同胞の気配なら、距離があっても理解できるから」
「なら砦にいない方はどこにいる?」
「少なくとも周囲にはいない……外に出て何か準備しているのかも。」
ふむ、なるほど……砦に残る魔族がどう行動するかが問題だな。魔物を動かしてはいるが、片割れが砦に戻ってくるのを待つか、それとも打って出るか。
それに対し俺達はどう応じるのか……ここで俺はフィリスへ目を移す。
「砦にいる魔族と魔物……このまま向かって勝機はあると思うか?」
「わからない……けど、決して難しくないと思う。砦の中にいる魔物の数はそう多くないし」
「多くはない……もしかして準備のために山中に魔物を展開させている?」
問いにフィリスは頷く……ならば――
「砦の構造はわかっているか?」
「うん」
「わかった。なら突撃だ。俺の素性は知られているだろうが……フィリスと手を組んでいることで相手としては動揺するだろう。思考がフリーズしている間に砦を制圧する」
「わかった」
「問題は全速力で砦に向かう場合、君を置いていってしまうことになるかもしれないが……」
「そこはたぶん大丈夫だと思う」
フィリスは言う。
「二度、間合いを詰めた動きに反応するのは難しいけど、単純な移動速度強化とかならなんとか……あなただって、あの速度でずっと移動できるわけじゃないでしょ?」
「そうだな、あれは瞬間的な強化だから……よし、なら進むぞ。いいな?」
確認の問いにフィリスは頷き――俺は駆けた。直後、フィリスは追随し、俺の後ろをピタリとついてくる。
砦と距離はあったが、まだ魔物が外に出ているわけでもない。対応をこまねいている間に接近できるだけの時間はある……そう思う間に、俺はあっさりと砦に到達。門を開け放たれており、あっさりと侵入できる。
「フィリス――!! 何を考えている――!?」
そして魔族の声。彼女は無反応で、俺は問答無用で砦の中へとつながる扉へ到達し、蹴破った。
そして室内は……魔物がいた。廊下に多数群がるそれを見た瞬間、即臨戦態勢へ。
――オオオオ! と魔物の雄叫びが響く。この声を聞いて残る魔族が戻ってくるかもしれない。さっさと砦にいる魔族を倒さなければ。
「フィリス、魔族の居所を調べ、案内を頼む」
「援護はしなくていいの?」
「やれるならしてもらえると助かるが、自分の命を守ることを優先した方が――」
言い終えぬ内だった。彼女が突如手を振った。それと共に生じたのは光弾だが、それが近くの魔物に直撃すると、閃光と共に轟音が生じ、室内に盛大な土煙をもたらした。
おいおい、と最初思ったが気配を探ればわかる。光弾が直撃した魔物の後方にいた魔物達が、一気に数を減らしている。この一事だけで魔法の威力がどれほどのものか物語っている。
「……だいぶ無茶苦茶だな」
「この方が早いでしょ?」
「それはそうだけどな……」
そう語る間に土煙の中から魔物が押し寄せてくる。それに対し俺はすかさず剣を振った。
魔力を込めた斬撃は、剣風を伴い最も接近してきた魔物に入り――風が土煙を吹き飛ばしながら、さらに魔力を乗せたことで風が刃となり、接近してきた魔物をまとめて吹き飛ばした。
斬撃を受けた個体は吹き飛びながら消滅していく……それを見たフィリスは一言。
「さすが」
「このくらいはできるさ……それじゃあ、行くぞ!」
俺は叫ぶと共に、フィリスと共に砦の中を移動し始めた。
魔族の居所についてはフィリスが常に把握し、魔物を蹴散らしながら一気に居場所まで近づいていく。
最大の懸念としては砦から逃げて外にいる魔族と合流することだったが……どうやら、そうした方策はとらないらしく、むしろ魔物をけしかけて俺達の邪魔をする方針らしい。
つまりは、外にいる魔族が戻ってくるまでの時間稼ぎ……ここでフィリスが解説を入れる。
「砦には色々と仕込みがある。魔物を生成する魔法陣とか色々と……それに、作戦に関する情報とかもあるだろうし」
「もし逃げれば魔法陣は破壊され、情報が奪われるから留まって防戦する構えなのか」
「私があなたの味方についてしまった以上、野放しにしておいたら何をされるかわからない……ってことだと思う」
「こっちとしては好都合だな……さて、あとどのくらいで魔族の所にたどり着く?」
告げながら魔物を瞬殺。そこでフィリスは俺達がいる廊下……その一番奥にある扉を指さした。
「丁度見えたところ。あの場所にいる」
「ゴールは近いな。一気に突破する!」
声と共に俺は廊下にいる魔物を倒し、一気に魔族のいる部屋へと踏み込んだ。




