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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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山中の砦

 歩き出して少しした時、俺と女性魔族フィリスは魔族の砦を視界に捉え、ひとまず物陰に隠れた。山を登り、さらに奥へ進むと見える砦……山の外から見ると完全な死角となっており、まさかここに魔族がいるとは到底思えないような場所。

 岩壁を背にして鎮座するその様子を見て、もし多数の魔族が入れば、難攻不落の要塞と化す……そう確信させられる。


「……フィリス、質問いいか?」

「私に答えられる範囲なら」

「砦にを拠点として、魔族達はフリューレ王国へ攻撃しようとしていた……第一の標的は、近くにある町、レメイトだろう」

「そうだね」

「そこを襲うというのは俺もわかるんだが……そこから先はどうするんだ? 攻撃したからといって、レメイトを制圧できるとは思えないんだが……」

「作戦については、深く聞いていない。でも、彼らが口にしていた内容から、色々と想像できる」


 そう述べると、フィリスは俺を一瞥してから説明を開始する。


「この場所でレメイトの町へ攻撃を仕掛け……それと共に、他の場所に潜伏している魔族達も連動して動き出す、という形みたい」

「ちょっと待て、ということは、他にもあんな拠点が?」

「複数ある……みたいだけど、もしこの拠点が潰されたなら、動かなくなると思う」

「なぜだ?」

「戦いの方策については、さっきあなたが倒した魔族が担っていた。今回のフリューレ王国攻撃に対するリーダーではないみたいだけど、絵図を描いてたのは彼」

「それを倒してしまった以上、連携して動くのも難しくなった……と」

「拠点の砦から魔法で色々な場所と連絡をとっていたみたいだし、指揮する魔族がいなくなった以上、動きは止まるよ」


 ふむ、彼女の言う通りかもしれないが……砦の中に他の拠点にいる魔族の詳細とかわかるだろうか? もし判明するのであれば、フリューレ王国に話を通して動いてもらうのがベストか。


「なるほど、わかった……それじゃあ、さっき話したとおり動くとするか」


 俺は魔力を断ち、物陰に移動。それを確認したフィリスはゆっくりと歩き出し、俺は物陰を移動しつつついていく。

 周囲は岩場であり、隠れる分には遮蔽物も多く問題ない……と、ここで拠点側から反応があった。どうやら単独で戻ってくるフィリスの様子を見に来たらしい。


 彼女はすぐさま大きな岩の陰に隠れるように移動する。位置的には砦から見えなくなり……うん、これなら俺が奇襲を仕掛けても、肉眼で残る魔族達に見咎められることはない。

 俺はここで右手を剣の柄に触れる。そして握りしめ臨戦態勢へ……魔力を断っているため、この状態で攻撃しても、魔族に傷一つつけることはできない。だが剣を抜き放つと同時に魔力を収束させ、一太刀……みたいなやり方なら、砦にいる魔族に悟られず対処できるはず。


 ここは魔族の魔力察知能力次第ではあるが……考える間に魔族がやってくる。三度目の召喚以降、遭遇した魔族は美形揃いであったが、今回は二メートルを超える大男で、顔つきも美形というよりは野性味溢れるものだった。


「なぜ隠れる、フィリス」


 そして魔族が告げる。声音からは彼女に対し敵意を向けているようにも思える。そんな相手に対しフィリスは一歩後退しつつ、


「……私だけ戻ってきたら、命を狙ってくるんじゃないの?」

「ほう?」


 呟いた後、周囲を見回した。俺のことに気づいたとかではない……俺が滅ぼした魔族が周囲にいないかを探している。


「……いないな。なるほど、そうか。理解したぞ……奴め、まさかお前に手を掛けようとして返り討ちに遭うとは」

「…………」


 警戒のまなざしを向けるフィリス。すると相手の魔族は、


「ふむ、これはまずいことになったな……奴が作戦を立てていたからな。多少なりともプランを変更する必要がありそうだが……ま、細かいことは他の奴らに任せよう。それより問題は」


 魔族がフィリスを見据える。


「お前の処遇だな」

「……どうする気?」


 男性魔族は目を細める。それと共に生じたのは、殺気。


「奴は力に目をつけお前をここに来させたが……俺は最初から反対していた。そして俺の考えは間違っていなかった。お前はこの戦いに戸惑っているな――? そんな兵士は、戦場に必要ない」


 ――大男は、拳を振りかぶった。動作は一瞬であり、フィリスが避ける間もなく魔族の拳が彼女を貫くだろう。

 だから俺はこのタイミングで動き出した。完全に相手の視界がフィリスのみになるこの一瞬を――それは、先ほど交戦した魔族と同様、相手にとって完全に虚を突かれた形だった。


 俺の気配に気づき魔族がこちらを向いた時、俺の攻撃は既に終わっていた。電光石火の剣戟は、相手が首を向けた瞬間に一閃することに成功していた。

 俺自身は気配を断ち、魔族が保有する魔力量を読んで確実に倒せるだけの威力を刀身に乗せて……魔族は驚愕した様子を見せた後、声を発する間もなく首が落ち、その体躯が消滅した。


 魔族、二体目を撃破。残るは二体だが……、


「そう簡単にはいかないか」


 一つ呟く。俺達の位置は砦から死角となり気配も断っていたが……砦に残る魔族は、俺の存在に気づいたようだった。


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