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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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魔族への疑問

「……私、なら」


 赤い髪を持つ女性魔族は、俺へ告げる。


「魔族を誘い出すことはできる……うまくやれば、個々に誘い出せるかも……」

「……君が、誘導すると?」


 俺の問い掛けに女性魔族は頷く。そこで俺は、


「なぜそこまでする? 君は同胞に滅ぼされそうになった……その復讐、というわけでもないだろう」

「そうだね」

「では理由は何だ? 君はここに連れてこられたことについて、疑義を持っているようだが……それだけでは、剣を突きつけられているとはいえ、進んで勇者と手を組む理由にはならないだろ」


 こちらの質問に女性魔族は一時沈黙した後……語り出した。


「……現在、陛下は再び復活し、再び戦争を始めるべく同胞達が動いている」

「魔王復活については天王達も把握しているし、魔族が動くのも理解できる」

「でも、私は違和感を持っている……というより、これは本当に陛下の指示なのか疑っている同胞も多くて、誰かが止めるべきでは、と主張する同胞もいた」

「どういうことだ?」


 問い掛けると女性魔族は俺と視線を合わせた。


「……これはたぶん、あなた達人間にはない情報だと思うけれど、陛下が復活したと天王の国々が認知し始めるずっと前から、陛下は復活したと言われていた」


 ほう、なるほど……つまり、国々が認識したのは魔王復活からしばらくしてからなのか――


「でも、同胞の多くは違和感を持っていた……というのも、誰も陛下のお姿を確認していなかった」

「……まだ力を完全に取り戻していなくて、城に引きこもっていたとか、そういう話じゃないのか?」

「違う。私の近しい同胞は、陛下から指令を受けるため城を訪れたけれど……側近を介してしか、話ができなかったらしいの」


 ……なんだかきな臭い話になってきたな。


「やがて、力を取り戻し天王の国々にも復活は認知されたけれど……力が戻って以降も、陛下のお姿を見た者は、少なくとも私が知る範囲にはいなかった」

「……魔王の側近達が、復活したと偽装して何かしているということか?」


 俺の問い掛けに女性魔族は沈黙。返答はなかったが、暗にそうなのではないか、と疑問を抱いている様子。


「なるほど、疑問を抱く魔族が多い中で、戦争準備をしている一派がいると」


 さらなる俺の言及に女性魔族はコクリと頷いた。


「なるほど、な……現状、君のように疑問を抱く魔族はどの程度いるんだ?」

「あくまで私の体感としては……四割くらい。ただ以前はもっと多かった」

「魔王が復活したという報を受けて、従う者が多かったと」

「そうだね」


 魔族でも複雑な事情があるのは間違いなさそうだ……では、俺自身どうすればいいのか。


 改めて状況を整理する。このまま来た道を引き返し、魔族の拠点があるとメル達へ告げ、迎え撃つ準備をする……その間に魔族達は動き出すだろう。レメイトまで魔物が押し寄せてきた場合、犠牲なく対処できるかはわからない。マヌエラの主人である資産家を通して色々と動けば迅速に迎撃準備はできるかもしれないが……。


 俺はレメイトという町について考える。城壁は備えているため、城門を閉ざせば魔物に対抗はできる。ただしあの町は交易路であるため、町の外にいる人達は対処できない。街道にいる人々まで面倒見ようとする間に、魔族達は仕掛けてくるだろう。

 つまり、魔族が動くのを許せば被害が出る……それを防ぐには、今現在から動いて、残る魔族達を倒すのが良い。


「……魔物は拠点にどの程度いる?」


 俺が問うと、女性魔族は一考した後、俺に概算の数を告げ、


「私が昼時点で見た限りはこのくらいだった。でもそれはあくまで拠点である砦の中だけ。実際は山中に散らばってフリューレ王国に怪しまれないようにしている」

「……レメイトでは魔物が出現していて対策しようという動きがあった。間違いなく拠点にいる魔族達が動いているのが原因で、そうなっているんだろう」

「でも、私達のことは気づかれていない」

「ああ、その通りだ」


 ――もし、被害をゼロにするなら今ここで俺が独自に動くのがベストだ。最大の問題は俺だけで戦えるかどうか。

 目の前にいる女性魔族は、魔王復活に対する疑義を抱え、フリューレ王国に攻撃を仕掛けようとする魔族に反発した。その結果、命を狙われ……さらに、俺に手を貸そうとしている。そこには複雑な心境があるのだろう。


 少なくとも、俺をだまそうとする気配はない……が、まあ後ろから刺される危険性もゼロではない。さて、どうするのが最適なのか――


「私の協力に疑義があるのは理解できる」


 そこで女性魔族はさらに話す。


「だから、契約という形で行動をしない?」


 契約――その意味を理解している俺は目を細めた。


「同胞と戦う覚悟がある、ということか?」

「うん」

「……少なくとも、今魔族達が戦争を引き起こそうとしている、という点については明確に反発しているんだな」


 俺の言葉に彼女は頷く……魔族に襲われた時点で彼女に迷いはあった。けれど、今は踏ん切りがついている様子……心の奥底に戦ってでも止めなければならない、という強い決意がある。きっとそれには何か理由があるのだろう……同族と戦う他ないという選択をするほどの何かが。


 さすがに、その理由を尋ねるつもりはなかったが……そして俺は、覚悟を決める。


「わかった。なら手を貸してもらおう。まずは契約からだ――」


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