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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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彼女の正体

 ――ザナオンと再会し、彼の弟子と戦うことになった。

 拒否することもできたはずだが、ザナオンが「頼む」と何度も懇願するから、結局引き受けてしまった。


「すまんな、どうしても経験させたやりたくて」

「……作戦前に、経験値を増やしたいというわけか?」

「そんなところだ。まだまだ実戦経験が足らないからな」


 俺は真正面にいるザナオンの弟子を眺める。金髪に黒瞳と、白を基調とする旅装姿。腰に剣を差しており、彼女は黙ったまま剣を抜いて戦闘態勢に入る。


「まあ、俺としては承諾した以上戦うけど……その前に、自己紹介くらいはないのか?」

「ああ、そういやそうだな」


 ザナオンは女性に目を向け、


「というわけでまずは、自己紹介からだ」

「……ヘレナ=アロード」


 名前だけ端的に告げる。なんというか必要最低限のことしか喋らないみたいな雰囲気なのだが、


「ああ、緊張しているだけだ」


 その点について言及する前に、ザナオンが説明した。


「本来は今風の、師匠を師匠とは思わない口調で畳みかけてくるような性格だ。ま、交流が増えたら嫌というほどわかるさ……ああ、呼び方も名前呼びつけで構わないぜ」

「……ザナオン」


 と、師匠である彼相手に呼びつけでヘレナは口を開く。


「もうちょっと言い方とかないの?」

「ははは、そっちだって敬語とか苦手だろ。むしろそんな喋り方をしている姿を見たら、俺は卒倒して倒れてしまうかもしれんぞ」


 ザナオンをにらむヘレナ……ふむ、眼差しは余計なことを言うなというオーラを放っているが、師匠のことを嫌っているわけじゃないことは、発する気配からわかる。

 どういう経緯でザナオンを師事したのかは不明だが、少なくとも関係性は良さそうなのだが……、


「ザナオン、一つ確認だ」

「ああ」


 俺はヘレナがまとっている気配を見ながら尋ねる。


「彼女、神族だな?」

「ああ、正解だ。というかすぐにわかったのか。今まで顔を合わせてきた戦士や勇者は誰一人として気付かなかったが」

「……神族としての気配が薄い、というわけじゃなさそうだな。身の内にある神族としての魔力を、彼女の意思で抑え込んでいるか」

「そうだ……ヘレナが持つ特徴の一つだな。気配を消す能力は、神族でも随一といったところだ」


 ――神族、というのはこの大陸における四つの大国の内の一つが統治する種族かつ、魔族と比肩する力を持つ種族でもある。

 エルフのような長寿かつ、人間とはかけ離れた潜在能力を持っている……他に特徴と言えば、背に翼を持つ物もいる。つまり、天使などと言えばわかりやすいだろうか。


 とはいえ全員が翼を持っているわけじゃないし、目の前のヘレナもそう……加えて、神族という名称から神様に仕えている、みたいな感じだがこの種族は言わば王様を神と呼称しており、人が想像する全知全能の存在とは少し違う。

 だからまあ、元の世界で言う世界を創造した存在とか、そういうものとも違う……ともあれエルフと同様に脅威的な力を持つ、大陸において強大な勢力を誇る種族だ。


 もっとも、欠点としては子供が生まれにくいらしく、人口的に見れば人間と比べ非常に少ない。そうした欠点もあり天王が治める国の一つとしてあげられるが、その領土規模はもっとも小さいくらいだ。

 そして神族はもう一つ特徴がある。他国と交易などはもちろんするが、他の種族と比べて交流は少なく、あまり国から出る存在はいない。しかし目の前のヘレナは――


「どういう経緯でザナオンと一緒にいるんだ?」

「その辺りは、決闘が終わってからでいいか?」

「……まあ、別にいいけど」


 俺は同意しつつ剣を抜く。既に戦闘態勢のヘレナは、既に魔力をみなぎらせいつでも突撃する準備を完了していた。


「ザナオン、ルールとかはあるのか?」

「うーん、そうだな……延々やるわけにもいかないから、時間制限くらいはつけるか。俺が審判をやるから、勝負が決まらなければ俺が勝手に止めよう」

「わかった……しかし、ザナオン。俺と彼女の力の差は歴然としている。正直、勝負にならないんじゃないか?」

「トキヤの圧勝だと?」

「逆だよ、逆……俺は全盛期の実力からは程遠いし、あっさり負けて終わりの可能性もあるが」

「いや、さすがにそうはならないだろ」


 と、どこか確信を伴う声音でザナオンは反論した。


「トキヤは不安に思いながら魔物なんかと戦っているみたいだな」

「そりゃあ、年齢的にもピークは過ぎているからな……そっちは何かを期待して声を掛けたみたいだが、あっさり負けても文句は言わないでくれよ」


 俺は言ったがザナオンは笑う……互角くらいにはなるだろうから大丈夫、みたいな顔をしている。


「……あと、さすがに神族相手である以上は、俺も相当気合いを入れるぞ」

「ああ、全力でやってくれ」


 ザナオンは言う……決闘の意図とかも話してくれず。まあ、今から長話するのもあれだし、決闘が終わった後に全て聞くことにしよう。


「……なら、始めるか」


 剣を構える。直後、先手を取るように――ヘレナが俺に仕掛け、決闘が始まった。


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