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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹


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戦いの記憶

 城を出た後に俺は宿をとり、もらった資料を読み始めた。この世界の文字については、剣の力による影響で読むことができる。

 とりあえず日が暮れるくらいまでは読み込んで、適当なタイミングで酒場にでも向かって夕食を、と今後の予定を立てたところで次第に思い出してくる……俺がこの世界で戦った経緯を。


 最初と二度目で、戦いの内容が大きく違っていた。具体的に言うと一度目は勇者として仲間と共に冒険して、魔王のいる場所へ踏み込み勝利した。言わば冒険譚と呼ばれるタイプの戦いだった。

 魔王自身はまったく動かず、俺は魔王がいる場所へ向かう必要があった。魔王の配下である魔族達は各国に拠点を築き、国々とにらみ合いを続けていた。そうした中で俺は道中に訪れた国の魔族を倒しつつ、レベルアップを重ね魔王に挑み、倒した。


 二年ほどではあったが、様々な出会いと別れがあり、間違いなく俺の人生おいて大きな影響を与えた……俺の戦果は人々にとって最高の結果だっただろう。そして勇者としてこの世界に残るという選択肢もあったのだが、色々と理由があって元の世界へ帰った。


 その十年後、再び召喚されたわけだが魔王の動きが明らかに違っていた。今度は魔王とその軍勢が各国に押し寄せ、まさしく戦争の様相を呈していた。よって二度目の召喚の際は冒険ではなく戦記ものとなった。

 出会いと別れはあったけれど、一度目と比べて悲劇が圧倒的に多かった……押し寄せる魔族とその配下である魔物達。絶望的な状況下で人々を守るべく立ち向かおうとする騎士や兵士。そうした中で俺は二年という短い歳月の間に様々な戦場に立った。


 最前線で戦い続け、少しずつ戦況を盛り返していった……そんな中、決戦は魔王によってもたらされた。徐々に魔族側の情勢が悪くなり、業を煮やした魔王は自らが出陣し襲い掛かった。大陸でもっとも広い大平原で決戦が行われ、その中に俺もまた加わった。

 そして、魔王をこの手で倒すことになった……二度魔王を倒したことで俺の評価は天にも昇るほどとなったが……結局、元の世界へ帰ることにした。


 そして三回目である……色々と思い出しつつ資料を読み続け……やがて夜になって酒場に入り食事をとる。とりあえず俺に近づいて勇者トキヤか、などと語りかけてくる人はいなかった。名前は知っているにしても俺の顔を知っている人は戦場に立っていない限り少ないし、これは当然の話だ。


 明日以降は今の俺がちゃんと戦えるのか検証を始めるところから始めたいが……魔物討伐の仕事を引き受けて試そうかな?

 この世界には冒険者ギルドと呼ばれる組織がある――諸国を放浪し魔物を狩って生計を立てる人間を冒険者と呼び、彼らの仕事を斡旋する組織が冒険者ギルドとなる。


 そこに登録し、依頼を請ければ検証することはできる……のだが、俺の力を確認するのに町の近くにいるような魔物では、弱いしさすがに力不足だろう。

 となれば、より難易度の高い依頼を請けるしかないのだが……俺の名前が有名であるのなら、それを引き合いにすればそうした依頼ができるかもしれない。だが、この町の周辺で検証できるほどの仕事……いくら魔王が復活したとはいえ、あるのだろうか?


「配下の魔族の動向とか、調べた方がいいかな」


 もし活発に動いているのなら、魔族が生み出した魔物と戦ったりはできるけど……しかしさすがに魔族を刺激するのはよくないか? 色々と頭を悩ませつつも、俺は一つ結論を出す。


「俺が再召喚されたと噂が広まれば……この辺りは解決できるはずだ」


 頭の中で今後の算段を立てつつ、今日のところは休もうと思い、ベッドに入ることにしたのだった。






 翌日、宿を出て大通りを歩き出す。その目的は冒険者ギルドだ。

 その道中で考える。問題は、この王都にいつまでいるのか……国側が俺に関する情報を流してくれれば、誰かしら俺の所に来てくれるかもしれない。そうなったら一緒に旅……は、できないとしても、俺が再び魔王に挑むために色々と手伝ってくれるとは思う。


 なら、来るのを待つべきか……ただ、それまで食っちゃ寝しているのもどうかなと思う。幸いながら、国から渡された支度金はそれなりの額で、数ヶ月くらいなら贅沢してもまあ平気くらいのレベルではある。よって、滞在はできるのだが――


「情報集めくらいはした方がいいよな」


 というわけで冒険者ギルドへ。最初の召喚時、俺は剣を使いこなせるまでこの王都のギルドでお世話になっていた。その時から外観などは変わっていない、木造の建物。

 中に入ると、懐かしいと形容する感情が湧き上がっていた。朝日が差し込む窓、早朝ながら活動を開始する冒険者の姿。


 このジェノン王国は魔王の本拠から遠く離れているが、魔物は自然発生するし仕事はそれなりにある……この冒険者ギルドに人が多いことこそ、魔物との戦いは続いているのだと認識できた。



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